2006年8月13日(日)「しんぶん赤旗」

イスラエルのレバノン侵攻1カ月(下)


紛争の背景

長年にわたるアラブ占領

 イスラエルは長年にわたり、レバノンやパレスチナの領土を不法に占拠してきました。

 イスラエルは一九四八年に建国されました。ユダヤ人とアラブ(パレスチナ)人との間で係争地だった当時のパレスチナを分割して双方に独立国家を認め、三大宗教の聖地エルサレムは国連管理とするとの国連総会決議に基づくものでした。

 しかし、エジプト、レバノン、シリアなどのアラブ諸国はこの建国を認めず、直ちにイスラエルに攻め込み、第一次中東戦争が起きました。

 このとき七十万人以上のパレスチナ人が家を失い、レバノンなどで難民生活を余儀なくされました。

 イスラエルは六七年には第三次中東戦争を引き起こし、エルサレムを含むパレスチナのヨルダン川西岸とガザ地区、シリアのゴラン高原、エジプトのシナイ半島を占領しました(シナイ半島はその後返還。ガザからは昨年撤退)。

 パレスチナ人はパレスチナ解放機構(PLO)の下で抵抗闘争に立ち上がりました。しかし、PLOは拠点のヨルダンから七〇年に追放され、レバノンに移動しました。

 そのため、イスラエルは七〇年代からレバノンに介入。八二年のベイルート侵攻でPLOを追放した後もレバノン南部を占領し続けました。

 二〇〇〇年五月のレバノン南部からの撤退後も、イスラエルはゴラン高原に連なるシェバ農場(四十五平方キロ)を占領し続けました。シェバ農場は水源地で風光明美なだけに、イスラエルは手放そうとしていません。(伴安弘)

米政権の態度

イスラエルを全面擁護

 イスラエルのレバノン攻撃に対し、ブッシュ米政権は、あらゆる面でイスラエル擁護を貫いています。

 政治面では、イスラエルのレバノン攻撃を、レバノンのイスラム教シーア派民兵組織ヒズボラの攻撃に対する「自衛権行使」だとして擁護。安保理では、イスラエル軍の即時撤退を伴う「即時停戦」要求を否定し、レバノン南部に「国際部隊」が駐留するまではイスラエル軍のレバノンでの「自衛行動」を容認する決議案を採択させようとしました。

 軍事面では、米国は毎年十八億ドルの軍事援助を無償で供与しています。イスラエルの軍事予算の二割は、米国からの援助で成り立っています。これらは、一九五二年に結ばれた米イスラエル相互防衛援助協定に基づいています。

 米国は、十二億ドルの経済援助も無償で行っています。イスラエルは米国の最大の援助対象国となっています。

 米国の中東政策では、イスラエル擁護とエネルギー資源の確保が常に中心目標におかれてきました。例えば、九六年に公表された共和・民主両党有力議員と専門家による「米国の国益に関する報告書」は、中東での最も重大な「死活的利益」として、「イスラエルが自由で繁栄した国家として生存できるようにすること」と、「世界へのエネルギー供給の重大な削減がないようにすること」の二つを挙げています。(坂口明)

戦火の行方は

武力で問題は解決せず

 イスラエル軍は、レバノン南部にとどまらず、シリアに接するレバノン東部のベカー平原にも空爆を拡大しています。イスラエルと、同国を全面擁護する米国の政権首脳らは、レバノン危機にシリアとイランが関与しているとして、両国を挑発する発言を繰り返しています。

 この一カ月の事態は、武力によって問題が解決しないことを示しています。

 イスラエル建国後、四回の中東戦争とレバノン戦争を経験した地域だけに、戦火拡大の危険性も軽視できません。

 戦火の拡大を阻止するためにも、イスラエルがレバノンから直ちに兵力を撤退させ、即時停戦に応じることが強く求められています。米国も、イスラエルの侵攻を弁護する姿勢を改めるべきです。ヒズボラもイスラエルへのロケット攻撃などの挑発行為を停止すべきです。

 また、レバノン、イスラエルの自決権を尊重するとともに、危機の根源にあるパレスチナ問題の政治解決を再開し、独立国家樹立を含むパレスチナ人の自決権尊重が不可欠です。(おわり)


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