2006年8月9日(水)「しんぶん赤旗」

気流

ポスト小泉

安倍・御手洗会談の思惑

経団連、法人税減税に執着


 安倍晋三官房長官と御手洗冨士夫日本経団連会長(キヤノン会長)の会談が七月三十一日に開かれました。九月の自民党総裁選挙を前にした政府と財界の意見交換。関係深化をにらんだ両者の思惑は……。


  両者の会談は、安倍官房長官側から申し込まれたものだった。会談では政府がまとめた「再チャレンジ(挑戦)」戦略がテーマになった。

  中身よりも、開かれた時期に意味がありそうだね。

財界に売り込む

  自民党総裁選で安倍長官の対抗馬として有力視されていた福田康夫元官房長官が不出馬を表明した。安倍にとっては、「小泉―奥田」時代のような財界との関係を早く構築したい、という思いがあるのだろう。

  確か、多くの財界人は福田元官房長官支持だったものね。それに「安倍には経済政策が見えない」という意見も強い。

  安倍長官は、政府作成の「再チャレンジ」戦略への財界の協力を要請した。御手洗会長は「考え方を共有している」と応じたんだ。政府と経団連との意見交換を定期的に行っていくことでも合意した。

  安倍長官は「構造改革」の司令塔である経済財政諮問会議の人選でも「御手洗会長は、高い見識を持った方、当然、有資格者の一人」と言っていたよ。

  安倍長官が経団連に色目を使っているのか。

  「再チャレンジ」戦略の個別論では経団連にも異論がある。それに、安倍長官のアジア外交も不安だ。

御手洗マジック?

  もともと、経団連にとって総裁候補が出そろっていない段階で特定の候補に肩入れしていると見られることを警戒しているからね。現段階では、距離感を保っている。

  御手洗経団連としては、ポスト小泉政権にどんなことを望んでいるの。

  御手洗経団連のテーマは「イノベート日本」だ。

  やたらに英語を使うのはやめてほしいね。どういう中身なんだ。

  つまりは、産業技術の高度化によって大企業の国際競争力強化を図ることだ。来年一月に発表する「御手洗ビジョン」に向け、経団連は新しい装いでの企業向けに研究開発減税なども検討しているみたいだ。

  そういえば、御手洗会長は、法人税減税を改めて強調している。経団連の機関誌『月刊・経済トレンド』七月号の対談では「法人税を下げて日本の産業競争力を強化することが必要です。企業の業績がよくなれば、法人税率が低くても法人税収は多くなり、間接税の税収も上がります」といった具合だ。

  減税すれば、税収が上がるって。「御手洗マジック」か。

  その考え方は一九八〇年代前半のレーガン政権の経済政策と同じだ。企業・高額所得者減税をすれば景気が良くなり税収が増える、というものだった。しかし、実際には財政赤字が大幅に拡大し、貿易赤字とあわせ、「双子の赤字」になった。すでに破たん済みの考え方だよ。

  御手洗会長は、レーガン政権時代にアメリカに住んでいたからね。郷愁があるんじゃないの。

  すでに天文学的な財政赤字を抱える日本でそんなことをやったら、アメリカで経験したより深刻な結果に陥ってしまうよ。

  経団連は、次期政権に財界支援を高く売りつけたいってところだろう。ここは要注意だ。


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