2006年8月8日(火)「しんぶん赤旗」

「派遣」で補助金受給後「請負」に変更

松下、操業前から計画

共産党が返還要求 兵庫県「調査する」


 松下プラズマディスプレイ尼崎工場(兵庫県尼崎市、松下電器と東レの合弁会社)の操業にあたり、松下が二億円余の「雇用補助金」を不正に取得していたとの疑惑が指摘されています。松下は操業前から派遣を請負に切りかえることを計画していたことが七日、明らかになりました。兵庫県は同日、日本共産党県議団にたいして「調査して回答する」とのべました。同県議団は、「松下側に補助金の全額返還を求めるべきだ」と緊急申し入れをしていました。


 尼崎工場は、プラズマテレビのパネルを生産する世界最大の工場で、二〇〇五年九月に操業しました。

 県は、雇用補助金の支払い条件として、派遣労働者は対象とするが、請負労働者は「補助金対象企業との間には一切の労使関係がない」として対象にしていませんでした。

 松下はことし二月、県に補助金を申請。県は、「正社員六人」「派遣二百三十六人」を条件にあてはまると認定して、二億四千五百四十万円を松下に支払いました。

 ところが本紙は厚生労働省の関係者から、「(操業前の)昨年六月、プラズマの白井正明工場長が『派遣社員は将来請負で対応することを検討している』とのべていた」との証言をえました。

 また、工場に入っている派遣・請負会社四社のうち、こん包作業の派遣・請負会社である「日豊」の日下篤社長も同月、「将来的には派遣から業務請負に切り替わっていく予定です」と同関係者にのべていました。

 日下社長は、本紙の取材に対して事実を認め、「現在、請負に変えている。百四十人いる」と話しています。

 松下は、操業前から「派遣」を「請負」に変える計画をたてながら巨額の税金を受け取っていたことになります。

 労働者派遣法では、一年以上同一場所で働いている労働者を派遣先(松下)が直接雇用する義務が生じます。このため松下は、派遣労働者を請負労働者に変えたとみられます。

 松下電器本社は、「申請時、派遣と請負の区別はなかった」(広報部)としています。これにたいして県は、「派遣と請負の区分は松下に説明していた。操業前から切り替えるという話は聞いていない」と日本共産党県議団に説明しています。

 「赤旗」日曜版は、兵庫県の異常な税金投入を七月二日号で告発していました。


 雇用補助金 地元の雇用増大と経済振興を目的にした兵庫県の「新事業・雇用創出型産業集積促進補助」。(1)新規地元雇用者が11人以上の企業に3億円を上限に補助(2)設備投資額の3%(金額の上限なし)を補助。額は50人までが1人当たり60万円、51人〜100人が同90万円、101人以上が同120万円です。


 派遣労働と業務請負 派遣労働は、派遣会社が企業と契約して労働者を派遣するシステム。この場合、企業が労働者を、指揮・命令します。業務請負は、請負会社が企業から製造ラインなどを請け負い、労働者を指揮・命令します。請負の形をとって実際には企業が労働者を指揮・命令するのが偽装請負といわれ、違法です。なぜ偽装請負が横行するかというと、派遣では、一年以上同一職場で働いている場合、企業はその派遣労働者に直接雇用を求める義務が生じるからです。請負の場合は、こうした規定はありません。


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