2006年8月6日(日)「しんぶん赤旗」

レバノン攻撃は戦争犯罪

民間人を意図的に殺害

人道支援部隊も対象


イスラエルをNGOが告発

 【ワシントン=鎌塚由美】人権擁護を目的に各国の人権侵害を調査・報告している国際NGO(非政府組織)「ヒューマン・ライツ・ウオッチ」(本部は米国)は三日、イスラエル軍によるレバノン攻撃で民間人が意図的に殺害されている実態を報告書にまとめ、イスラエルの民間人攻撃を「戦争犯罪」だと指摘しています。

 「死の攻撃―イスラエルのレバノン民間人への無差別攻撃」と題された報告は、主に七月十二日の攻撃開始から二十七日までの期間の聞き取り調査をもとに編さん。同期間にイスラエル軍が殺害した約四百人の大多数が民間人だと指摘しています。報告が取り上げた死者百五十三人のうち、六十三人が子どもでした。

 報告は、今回の紛争で、▽戦闘行為に参加していない民間人への攻撃▽人道支援に当たる民間人や平和維持部隊への攻撃▽過剰な攻撃による民間人の二次的な死傷や建物破壊―などに懸念を表明。「戦争犯罪」となりうると述べました。

 同報告は、七月十三日にイスラエル軍が、イスラム教シーア派民兵組織ヒズボラに賛同しているとされる聖職者の自宅を攻撃して殺害した事件をあげ、イスラエル軍が、今回の紛争に無関係の聖職者を「合法的な攻撃対象」だと主張したとしても、妻と十人の子ども、スリランカ出身のメイドの殺害は正当化できないと指摘しています。

 カナダ国籍を持つ一家十一人が殺害された十六日の事件を聞き取り調査した結果、ヒズボラとのかかわりは証明されなかったとし、一、三、五、七歳の子どもが犠牲になっていることを告発しました。

 民間人が多数犠牲になっていることについてイスラエル政府は、ヒズボラが民間人を「人間の盾」として使っているからだと主張しています。これに対し報告は「ヒズボラが故意に民間人を利用しているケースはなかった」としています。

 イスラエルが戦闘員と民間人を「一貫して区別していない」ことは、「戦闘員のみを攻撃するという戦争法規の根本的原則の侵害」だと指摘。「イスラエルの攻撃パターンは単なる事故だとは説明できない。その結果の深刻さは、それが戦争犯罪であることを示唆している」と述べました。

 レバノン南部にとどまる住民はすべてヒズボラの関係者だとするイスラエルの主張についても、国際法で攻撃の対象にしても免責されるのは、戦争行為に直接かかわる民間人だけだと指摘しています。

 報告は、レバノン南部にとどまる民間人の多くが病人や負傷した人々であると述べ、移動する手段がないと指摘。イスラエル軍は白旗をつけている民間の車を攻撃していると指摘しています。

 「ヒューマン・ライツ・ウオッチ」はイスラエルに対し、無差別攻撃の即時停止を要求し、米国には、レバノンでの国際人道法違反に使われるイスラエルへの武器の供給を即時停止するように呼びかけ。国連事務総長に対して、イスラエルの戦争犯罪を含む国際法違反を調査する国際調査委員会の設立を求めました。

 ヒズボラには攻撃停止を要求。シリア、イランの両政府に対して、ヒズボラへの武器供給の停止を求めています。


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