2006年8月3日(木)「しんぶん赤旗」
鼓動
初ダウン、棒立ち 不可解な判定
亀田興毅選手が判定勝ちで新チャンピオンになりました。
しかし、試合内容は決して勝利したとはいえないものでした。最初から手数多くパンチをくりだす相手に終始主導権を奪われ、1回終了間際には痛烈な右フックを浴びて初ダウン。その後も、相手の巧みなボクシングに自慢の強打も不発、11回はクリンチで逃れるのがやっと。最終12回もいいように打たれました。
テレビで解説していた元世界チャンピオンも、途中から亀田選手の劣勢を指摘するコメントが続きました。まるで、最後まで立っていたことがポイントに加算されたような不可解な判定でした。
いまの亀田人気はテレビを先頭にマスコミが作り出しています。今回のタイトル戦も試合開始前から延々と関連映像を流していました。亀田一家の派手な言動を話題づくりに仕立ててきました。
人気はあっても、その実力を疑問視する声はボクシング界からも起きていました。実際、デビュー戦から戦績も不明な無名選手とばかり試合を組み、残念ながら今回もその疑念を晴らすことにはなりませんでした。
マスコミやボクシング界の一部には、亀田人気に便乗してボクシングを盛り上げたいという期待があるのでしょう。しかし、それも真の実力が伴わなければ一時的なブームで終わってしまうのは明らかです。
亀田選手はまだ発展途上のボクサーです。過大な期待や持ち上げは本人の成長のためにもなりません。現に、相手を挑発し、おとしめるような言動が批判されています。
世界チャンピオンにはボクシングの強さとともに、周りからも尊敬される人格が必要です。
今後、険しい道が予想されますが、ボクサーとしても、人間的にも、いっそうの精進を求めたい。(青山俊明)