2006年8月3日(木)「しんぶん赤旗」
主張
サラ金高金利
引き下げの骨抜き許すな
年三割近い金利をとる借金では、普通に働く人にはまず返済できません。ましてリストラや失業、病気などでせっぱ詰まっての借金なら、そのまま生活破たんに結びつきます。
サラ金、クレジット会社がこんな暴利をとることを許してきたグレーゾーン(灰色)金利を禁止し、せめて利息制限法の上限金利(15―20%)に引き下げるということは社会的なコンセンサスです。ところが、政府・与党がすすめる制度改正作業のなかで、金利引き下げを骨抜きにする“逆流”が起こっています。
灰色金利残すため
サラ金の高利は、刑事罰のない利息制限法の上限を超えて、これをはるかに上回る出資法の上限金利29・2%をとることで成り立っています。利息制限法の上限金利と出資法の上限金利の間の灰色金利は、借り手が任意で払っているという建前で、貸金業規制法が特例として認めているものです。
明らかな法の不備であり、サラ金被害者やその支援者、法曹関係者などは灰色金利の廃止を強く求めてきました。今年一月には最高裁で灰色金利を無効とする判断が相次いで示され、各地で払いすぎた金利の返還を求める訴訟が広がっています。
貸金業規制法の三年目の見直し時期を来年に控え、金融庁の貸金業制度等に関する懇談会は四月、上限金利を「利息制限法まで引き下げることが委員の大勢意見」とする中間報告をまとめました。日本共産党の国会での追及にも、政府は「灰色金利撤廃が大勢」(後藤田正純内閣府政務官)と認めました。
八月をめどにまとめられる政府の改正案で、灰色金利の廃止が不可避とみたサラ金、クレジット業界は、少額・短期の融資に限って高金利を認める「特例」措置を導入することを画策、七月の与党合意に盛り込まれました。新たな灰色の持ち込みであり、現状の高金利の合法化をねらうもので、絶対に認められません。
サラ金側は「消費者金融の金利が下がれば、業者は融資の幅をせばめ、借りられない借り手が多く出て、ヤミ金融がはびこる」と主張します。
まったく道理のない話です。現実に起きていることは、明るいサラ金CMにつられて軽い気持ちで借金をしたものの、高すぎる金利で返済困難になり、返済のために別の業者から借り入れるという悪循環で多重債務に陥り、ついにはヤミ金被害にまでいたるという悲劇です。
サラ金業界の信用情報機関である全国信用情報センター連合会が金融庁に示した資料では、消費者金融の利用者は全国で千六百万人にのぼり、四社以上から借りている多重債務者は三百五十六万人。平均残高は二百万円で、三割以上で返済が滞っているといいます。高金利被害を断ち切ることができなければ、悲劇はどこまでも広がっていきます。
小泉首相は国会で「(低い上限金利を)もし法律で決めちゃうと必ずヤミがはびこる」(五月十八日、参院行革特委)と答弁しました。業界の主張を受け売りし、高金利引き下げの流れを止めることは許されません。資金をサラ金業界に依存する自民、公明両党の議員が、サラ金寄りの立場にたつ議員連盟を立ち上げるなどしていることも重大です。
社会の落とし穴ふさげ
生活困窮者を狙い撃ちに、返済能力を超える借金を負わせ、違法な取り立てで追い詰め、人生を破壊するサラ金は「社会の落とし穴」です。高金利引き下げこそこれを封じる唯一の道であり、社会の要請です。