2006年8月2日(水)「しんぶん赤旗」
NTTデータ
取引先に支払い水増し
自社利益操作の疑い
ソフト会社社長が告発
システム開発最大手のNTTグループ企業「NTTデータ」(東京都江東区、東証一部上場)が、取引先の中小企業に実際の取引を水増しして支払い、課税対象となる自社の利益を操作していた疑いがあることがわかりました。取引先だった企業の経営者が本紙に告発しました。
告発したのは、昨年までNTTデータにシステムエンジニア(SE)を派遣していた東京都内のソフト開発会社の社長。
同社社長によると、NTTデータは一九九五年から九九年までの五年間、NTTの電報システムの開発にからみ、同社が派遣していたSEの稼働(勤務)時間を、実際の稼働とは違う虚偽の数字で報告するよう同社に要求。NTTデータは、その数字に基づき、取引実績よりも水増しした金額をソフト開発会社に支払っていました。
同社社長は、これはNTTデータが経費を水増しするためだったとしています。
取引実績と、支払い額に大幅なずれがあることは、NTTデータ作成の複数の文書でも示されています。例えば九七年三月のSE稼働実績は八千七百五十二時間でしたが、支払い額は二倍以上の一万七千五百五十六時間分(約八千百三十万円)にのぼっていました。
水増しによる翌年度への繰越額は、少ない年で一千万円弱、多い年には九千五百万円以上にのぼります。
同社社長によると、水増し分については取引実態がないにもかかわらず、ソフト開発会社は売り上げとして会計処理するよう強制されていたといいます。
しかし、水増しされた売り上げはソフト開発会社に実態以上の利益をもたらすわけではなく、水増し分は両社の間で「前渡金」として扱われ、翌年度の取引でのソフト開発会社に対する支払いと相殺できるようにされていました。
NTTデータ側としては、売り上げの多い年に経費を増やせば、利益を圧縮して納税額を減らすことができます。取引先に対して「前渡金」扱いを強いることで、水増し分を翌年度の取引での支払いと相殺することも可能で、自由に利益操作ができる仕組みになっていました。
一方、取引先企業は、架空の売り上げがもたらされることで利益が増し、納税額が増します。実際、ソフト開発会社は九七年、水増しされた売り上げによる高額の課税を避けるために売り上げの一部を申告せず、国税当局の指摘を受けました。同社は追徴課税を含めた修正申告に応じました。ソフト開発会社の社長は「六千万円にのぼる税金を代わりに支払わされた」と話します。
同社長は、「相手は業界トップの大手企業で、このような“前渡金”は違法だと思ったが、断ることはできなかった。これがあると、翌年の仕事も保証されるため、了解してやっていた部分もあり、こちらも悪かった点はあるが、経営に甚大な損害を受けた」と話しています。
NTTデータは、違法の可能性もあるのではないかと問い合わせた本紙の取材に対し「コメントは差し控える」(広報室)としました。
NTTデータ 一九八八年「NTTデータ通信」として発足。郵便貯金システム、社会保険オンラインシステムなど官公庁の大規模システムを多数受注。全国銀行データ通信システムなども手がけています。社会保険システムでは社会保険庁が随意契約で毎年六百億―八百億円超を同社に支払っていたことが問題に。二〇〇六年三月期の経常利益約四百二十億円。従業員数約八千人。浜口友一社長。
独禁法違反の可能性強い
原和良弁護士の話 取材内容が真実であれば、独占禁止法一九条が禁止する「不公正な取引方法」に違反する疑いが強い。公正取引委員会は、自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して、正常な商習慣に照らして不当な取引条件を相手方に強要することを、不公正な取引方法として禁止している。この取引先は、NTTデータが指示する水増し処理を受け入れなければ翌年以降の取引を停止させられる弱い立場にあったといえるのではないか。