2006年8月1日(火)「しんぶん赤旗」

レバノン攻撃めぐり米英

「即時停戦」に背向ける

イスラエルの主張支持


 【パリ=浅田信幸】レバノン情勢の深刻化を前に「即時停戦」という当面する課題について、国際外交の舞台では対テロ戦争の観点から軍事的対応を優先させる米英と即時無条件停戦を求める国際社会との対立という構図が明確になっています。


 五十七人の死者を出した三十日のイスラエルによるカナ爆撃を受け、国連安全保障理事会が採択した議長声明には、当初の仏提案にあった爆撃非難と「即時無条件の停戦」の文言はありませんでした。

 ローマで七月二十六日に開かれた十五カ国・三国際機関の国際会議でも、「恒久的、持続的停戦」を可能にするためにはシーア派民兵のヒズボラを「無力化」することが先決だとのイスラエルの主張を支持する米英がごり押しして、議長声明に「即時停戦」の文言を入れさせませんでした。

 ライス米国務長官はこの会議の直前、「緊急の停戦が必要」と主張しましたが、停戦に前提条件を付け加えることに変わりはありませんでした。

 このため、この国際会議の結果を、イスラエルのラモン法相は「ヒズボラがレバノン南部に存在しなくなるまで作戦を続けてもよいとの事実上のお墨付きを得た」とまで歓迎する始末。カナの悲劇はこうした中で引き起こされました。

 ブレア英首相はカナ爆撃の惨劇を受け、三十日、週内にも安保理決議の採択を急ぐ姿勢を明らかにしました。しかし、「持続的な停戦」という表現を使い、「即時停戦」には言及していません。

 ブッシュ米大統領とブレア英首相は二十八日、ワシントンで首脳会議を開き、「国際安定化部隊」をレバノンに「速やかに展開」するために国連に働きかけることで合意しています。

 停戦のないまま国際部隊の派遣を急ぐ米英の姿勢の背景には、イスラエルの爆撃によって日々民間人の犠牲が拡大しているにもかかわらず、これを対テロ戦争のために正当化していることへの国際世論の批判があります。

 これにフランスが異議をとなえ、イラク戦争前にも似た「米英対仏」の対立再燃かと、マスコミの関心を呼んでいます。

 停戦実現後に国連の明確な委任を得て国際部隊を派遣することにはフランスも賛成しています。ドストブラジ仏外相は二十九日、「停戦が決まらないうちに多国籍軍を展開するというイニシアチブに対し、フランスは全く別のアプローチをとる」「力と暴力の悪循環では何も達成されない。イラクの例がそれを示している」と述べ、停戦から始めて政治的合意を達成することが優先されるべきだとの考えを明らかにしました。


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