2006年8月1日(火)「しんぶん赤旗」
金融事業で収益拡大
日本郵政が「実施計画骨格」
来年十月の郵政民営化で持ち株会社となる日本郵政(西川善文社長)は三十一日、民営化後の経営計画の概要にあたる「実施計画骨格」を政府に提出しました。
郵便貯金を引き継ぐ「ゆうちょ銀行」として二百三十三の直営店を設けます。簡易保険を行う新会社は「かんぽ生命保険」として、八十一の直営店を保有します。これら金融二社の株式については、「遅くとも民営化後四年目の上場を目指し」、その後の五年間で完全民営化する方針を明記しました。
民営化後に提供する新商品・サービスとして、二社は、個人、中小企業向けローンへの参入のほか、投資信託商品や外貨預金、変額年金といった投機性が強い商品を列挙。金融事業での収益拡大路線を鮮明にしています。
民営化時の総資産は、ゆうちょ銀が二百二十七兆円、かんぽ生命が百十四兆円となり、民間最大手の三菱UFJフィナンシャル・グループ(百八十七兆円=三月末)を大きく上回ります。
二万四千六百の店舗網で窓口業務を行う「郵便局株式会社」、物流事業を担う「郵便事業株式会社」とともに、全体で従業員二十五万三千二百人の巨大グループ企業となります。
日本郵政は今後、先に内定した四事業会社の最高経営責任者(CEO)を中心に、詳細な民営化実施計画を決め、来年四月末までに政府に申請します。
解説
国民の利便性と両立せず
日本郵政が提出した郵政民営化の実施計画(経営計画)の骨格は、ゆうちょ銀行、かんぽ生命保険という金融二社が民営化後に提供を目指す新商品・サービスを明示し、収益拡大路線を鮮明に打ち出しました。
しかしその中身をみると、投資信託商品の多様化などを掲げ、外貨預金、変額年金といった投機性の強い金融商品が並んでいます。変額年金は、これまで多くの金融被害者を生み出してきた悪名高い金融商品の一つです。もうけのためなら、どんなにリスクのある商品でも国民に売りつけようとする考えが露骨です。
金融二社は既存の郵便局とは別に金融サービスを提供する直営店を設けるとしていますが、それが設置されるのは大都市部が中心で、地方都市や過疎地は「かやの外」です。国民にあまねく公平にサービスを提供するという政府の約束にも反します。
すでに郵政民営化に向けて、集配・外務業務を行う郵便局の再編計画が出され、地方切り捨ての動きが進行しています。国民へのサービス低下が懸念されています。もうけ優先の方向が国民の利便性向上と両立しないことは明らかです。誰のための民営化なのかがいよいよはっきりしてきました。(矢守一英)