2006年7月31日(月)「しんぶん赤旗」
列島だより
遊休地を活用 農業おこし
遊休農地を活用して農業おこしを進めている、埼玉県美里町(みさとまち)、愛知県田原市(たはらし)の例を紹介します。
埼玉・美里町
ブルーベリーの観光果樹園
作付面積日本一、全国に発送
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「甘くておいしい」「目にいいのよね」。紫色の粒を摘みながらにぎやかな声が聞こえます。取り入れ時期を迎えた埼玉県美里町の観光果樹園、植栽を始めてから八年目を迎えたブルーベリー農園はたくさんの実をつけお客さんを待っています。
整地、苗木代 町の負担で
観光果樹園は町が遊休農地解消と町の特産品づくりを目指し、一九九九年から二〇〇三年まで五年間かけて、観光果樹園百町歩構想事業として取り組んできました。果樹品種は、アンズ、梅、プルーン、ブルーベリーの四品種。植栽者は四百七十三人、七十・三ヘクタール。そのうちブルーベリーが約四十ヘクタール、三万一千本作付けてあり、自治体作付面積は日本一となっています。
遊休農地や耕作放棄されていた農地を抜根、整地をするところから始め、植栽、土壌改良や苗木代まで町の負担で進めてきました。県の補助事業で「育農の里づくり」や「緊急雇用対策事業」などを取り入れ総事業費は一億三千五百二十万円です。
娘さんとブルーベリー畑で摘み取り販売所を経営する雷坂幸男さん(80)は、町の補助事業が始まる前の一九九四年からブルーベリーを植栽して十二年。四十アールに十三品種を植栽しています。「宅配便で北海道から沖縄まで全国に発送している。摘み取りが主で年間千人を超える入園者がある」といいます。
小林延孝さんは、丘陵地帯に町で推奨した四品種を六十アール植栽しました。小林さんは「観光果樹園は街づくりの一端を支えている」「人生を引くようなときに楽しくて仕方ない」「自宅周辺の丘陵地帯に今五人で一ヘクタールほどある。この人たちと力を合わせて『ブルーベリーの丘』をつくりたい」と抱負を語っていました。
住民投票で合併選ばず
埼玉県の北西部、関東平野の北端に位置する美里町は平成の大合併をしないで「小さくても輝く街づくりを進める」と住民投票で決めた人口一万二千人の町です。首都圏百キロ圏内にあり以前は米麦養蚕の盛んな地域でした。養蚕は廃れ、米麦も収入が得られず、農家の少子・高齢化、後継者不足は深刻で遊休農地、耕作放棄地が増加し、廃棄物の不法投棄などが目立ち始めていました。
日本共産党は町の基幹産業の農業が元気でなければ町は発展しない、住民や農家が主人公の町づくりを進めること、高齢化した後継者不足を解消するためにも、力を注ぐことを提案してきました。
果樹園構想とともに町と農協が出資し農業生産法人「みのり」を立ち上げ、遊休農地を借り上げ露地野菜を栽培したり、担い手のない農家や、果樹園の管理などを請け負っています。(笹井均町議)
愛知・田原市
菜の花 じゅうたんのよう
観賞と搾油、廃油は燃料に
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愛知県南部に位置する渥美半島は、風光明美な常春の国として、伊良湖岬・恋路が浜を擁し、島崎藤村の「椰子(ヤシ)の実」でもその名が知られています。この半島は以前、三町からなっていましたが、二〇〇三年八月と〇五年十月の二度の合併で田原市となりました。
農業産出額は七百六十億円、日本で一番の生産額で、そのうち半分以上が花卉(かき)・野菜の施設園芸です。農用地面積六千八百九十ヘクタール、遊休農地六百八十三ヘクタールと、約一割の農地が遊休化しています。米・野菜・施設・畜産と総合的な農業地帯である渥美半島といえども、国の農業政策の影響は遊休農地の増大として目に見える形であらわれています。
農業委員会が先頭に立って
農業委員会は「農業が地域経済の要」であるとの立場で、遊休農地解消のため、毎年全筆調査し、担い手を探しあっせんをしてきました。同時に、委員会自らが遊休農地を耕し菜の花を育て、遊休農地解消の先頭に立ってきました。この菜の花が十一月後半から三月まで咲き続けます。寒い冬空の中、じゅうたんを敷きつめたような、温かみのある菜の花は、訪れる人たちに幸福を与えるかのように多くの人たちをひきつけました。
二〇〇〇年度から始めた農業委員会の菜の花事業は二十アールでしたが、〇二年には十倍の二ヘクタールになりました。
〇三年度には市の菜の花エコ・プロジェクト推進事業に位置づけられ、たはらエコガーデンシティ構想のもと、観賞用菜の花と搾油用の菜種が栽培されました。〇五年度では、菜の花で観光事業など、菜種油で食用、廃食油でぐるりんバス(巡回バス)、公用車の燃料(バイオディーゼル燃料)として利用が広がり、農業として循環型社会への歩みとなりました。
面積も観賞用菜の花が二・六五ヘクタール、搾油用の菜種が四・六四ヘクタールとなりました。道の駅の支配人は「お客さんが三倍増えた」といい、喜ばれています。
団塊の世代に営農の支援も
この事業の中心は農業委員会でしたが、それ以上の事業拡大は農業委員会の仕事と両立は難しいことから、今年四月にNPO法人が設立され、さらなる事業展開に向けた取り組みが行われています。
地域の農業にとって農業委員会の果たす役割は非常に重要です。特に今後、品目横断対策にどう対処して地域農業を守るのか、大きな岐路に立たされています。
遊休農地解消の事業でも、日本共産党は市が応援すべきだと議会で要求し、大型のトラクターも購入されました。遊休農地を利用し団塊の世代の退職に合わせ営農支援センターが立ちあがりだしています。農家の直売所もでき活気を呈しています。菜の花事業は、地域資源循環型農業の一歩として新しい農業をつくりだす一つでもあると思います。(河辺正男市議)