2006年7月31日(月)「しんぶん赤旗」
主張
地上デジタル
テレビが映らなくなる不安
「私の家のテレビが、五年後には映らなくなるんですか?」
テレビの「地上デジタル」(地デジ)放送への切り替えが、不安を呼んでいます。赤旗編集局にも、読者の問い合わせが寄せられています。
現代人の生活に、なくてはならない存在となっているテレビです。そのテレビが「映らなくなる」という不安を国民に抱かせるとは、いったい誰がどう責任をとるのか―。
納得しないままの計画
不安の原因は、まず知らされていないことです。最近、電器店などの店頭にも表示され、テレビでのスポットCMも始まっていますが、正確な知識となるとまだまだです。
地上波のテレビ放送の電波を送る仕組みが、現在の「アナログ」から「デジタル」に変わること、「アナログ」放送は五年後の二〇一一年七月二十四日で打ち切られるので、翌二十五日からは「地デジ」放送を受信できる装置がないとテレビが映らなくなること―。
こう説明されても、それだけではうなずけません。不安の根本には、国民の多くが、「地上デジタル」化の計画に納得していない現実があります。なぜ変えるのか、「地デジ」を受信するための装置はどうなるのか、費用は自分で負担するしかないのかと、疑問が続きます。
本来こうしたことは、「アナログ」から「デジタル」に切り替えると決めたさい、政府やNHKなど放送事業者が国民に知らせ、納得してもらっておくべきことではないのか。質問に答えながらも、国民を無視した計画に怒りを禁じえません。
「アナログ」から「デジタル」への切り替えは、二〇〇一年の電波法改定で決まりました。反対は日本共産党だけで、自民、公明の与党も、民主、社民などの野党も賛成しました。日本共産党が反対したのは、「アナログ」放送が打ち切られる二〇一一年までに全国で「地デジ」放送が受信できるようになる見通しがない、テレビを強制的に買い替えさせるのは不当などの理由からです。
実際、事態は日本共産党が批判したとおりです。全国にはテレビが一億台以上あるといわれるのに、「地デジ」対応に切り替わったのはまだ一千万台。これから五年間で全部切り替えるのはとうてい不可能です。中継所のデジタル化も遅れており、このままでは電波の届かない世帯が出るのは確実です。最初に「打ち切りありき」の計画が生んだ矛盾があらわになっています。
「地デジ」放送を受信するには、現在のテレビにチューナーを取り付けるだけで数万円、テレビそのものを買い替えれば安くても十万円はかかります。費用が負担できなくて受信できない人と受信できる人との、情報格差の拡大も重大問題です。
日本共産党は、生活保護受給世帯の買い替えについて、公的補助を求めてきました。電波や放送は公共のものです。お金がないからテレビが映せないでは、放送の公共性そのものに反することになります。
社会問題として対応を
一人暮らしの高齢者や、地方で暮らす人たちからテレビが取り上げられたらどうなるか。社会の動きから隔絶され、生活が大幅に制約されることは、火を見るよりも明らかです。
政府は自らの責任で、国民の不安を取り除くべきです。「アナログ」放送の打ち切りまで五年間を切りました。「アナログ」放送の二〇一一年打ち切りを再検討し、視聴者の理解を得た、無理のない「デジタル」化計画を策定しなおすことが必要です。