2006年7月30日(日)「しんぶん赤旗」

シリーズ 大企業応援政治を洗う

ここが知りたい特集

企業大再編で何が?

リストラで高収益、巨大グループ化


 小泉自民・公明政治で一段と加速する大企業応援政治のもと、何が起きているのか。シリーズで洗います。一回目は、企業の合併・再編です。(吉川方人)

 バブル経済が破たんした一九九〇年代。「三つの過剰(設備、債務、雇用)の解消」を叫ぶ財界は“大企業がもうかるようにする”改革を要求します。

 そのひとつが、もうからなくなった「不採算」部門を切り捨て、「余剰人員」をリストラするため、会社まるごと無くしたり、売買したりできる企業再編のための法づくりです。

 九七年には、独占禁止法で禁止されていた純粋持ち株会社(事業をせず株を保有し、支配するだけの会社)の設立を解禁し、商法「改正」によって合併手続きを簡素化します。

市場を「独占」

 それまで、企業再編としてできる手法は、合併や営業譲渡、企業買収などに限られていました。九七年の純粋持ち株会社の解禁から二〇〇五年の会社法制定まで連続した法「改正」がされます。会社分割など、持ち株会社を利用し、子会社の統括、統廃合ができるようになりました。

 これらによって、大企業の「独占」はどんどん進み、さまざまな業種で、ひとにぎりのグループが、市場を占める状況がうまれています。

 自動車産業では、日産自動車、三菱自動車、マツダに欧米資本が参入し、トヨタ自動車を含めた五大グループに集約されました。

 銀行業界は、九〇年代初頭には、都市銀行、信託銀行、長期信用銀行であわせて二十三行ありましたが、証券会社もあわせて三菱UFJ、みずほ、三井住友の三大グループが形成され、大規模な人員削減と支店の大幅な削減が行われました。

 鉄鋼業界では、二〇〇二年八月にNKKと川崎製鉄が経営統合し、同年十一月には新日鉄と住友金属、神戸製鋼が、連合を結成し、二大グループに集約されました。

 解禁後、真っ先に持ち株会社をつくったNTTが、その子会社、NTT東日本、西日本で保守・管理部門など十一万人のリストラと、五十一歳以上の五万八千人の賃金の15%から30%減額を実施したように、企業再編とリストラは一体のものとして推進されます。

 東京商工リサーチの調査によると、東証に上場している製造業の従業員数は、二〇〇〇年三月期の二百十九万人から〇三年九月期の百八十六万人までに三年半で三十三万人削減されています。

会社を分割し

 この間に、日立製作所は半導体やハードディスクドライブ部門を会社分割して一万人を削減。三菱電機は会社分割により新設した会社に転籍させるリストラを実施して七千二百人を削減しました。

 電気機械製造業の就業者数(資本金十億円以上の会社)は、九二年の十万人から、〇四年の四万五千人に削減。一方、多くの電機大手は、過去最高の利益を更新しています。

日米財界が次つぎ要求

 企業再編の法整備を要求してきたのは、対日投資をすすめたいアメリカ企業とリストラをすすめながら国際競争に打ち勝つ巨大企業グループをつくりたい日本の財界です。

 たとえば、経団連(現、日本経団連)は、一九九五年十二月の「純粋持株会社の解禁についての考え方」で、持ち株会社は「リストラチャクリング(事業の再構築)を進め」「人材をはじめとする経営資源の最適配分」のための効率的な組織形態とのべ、あからさまにリストラのための持ち株会社の解禁を要求しました。

 財界・大企業の意向をそのまま政治に反映させるために設置された産業競争力会議(議長・小渕恵三首相=当時)は、ソニーなど財界からのメンバーの強い要求で、会社分割制度や連結納税制度などの前倒しを決定し、それが次つぎと実施されることになります。

 会社法のための審議会答申をまとめた江頭憲治郎東大教授は、三角合併の解禁について「こうした制度を強く要望していたのは外資系企業」「今度は100%子会社のまま合併できるわけで、外資によるM&Aが容易になります」(『エコノミスト』〇五年四月十一日臨時号)とのべています。

自民・民主・公明が推進

▼1997年

 持ち株会社の解禁(独占禁止法改悪) 自民、新進、民主、社民、太陽、さきがけが賛成。日本共産党が反対。

▼99年

 株式交換・株式移転制度導入(商法「改正」) 自民、自由、公明、民主、社民が賛成。日本共産党が反対。

▼2000年

 会社分割制度導入(商法「改正」) 自民・保守、公明、民主、自由が賛成。日本共産党、社民が反対。

▼02年

 連結納税制度導入 自民、公明、保守、民主が賛成。日本共産党が反対。

▼05年

 会社法 自民、公明、民主、社民が賛成。日本共産党が反対

持ち株会社と連結納税制度

 持ち株会社は、株式を所有することにより、子会社の事業を支配することができます。

 戦前の財閥支配の反省から事業をしない純粋持ち株会社は戦後、一貫して禁止されてきましたが、財界の要求で設立できるようになりました。

 株式交換・移転や会社分割を使い、企業のリストラがすすめられていますが、持ち株会社に労働組合が団体交渉をすることが困難だという問題があります。

 連結納税制度は、子会社の赤字を親会社の黒字と相殺して、法人税を大幅に安くすることができる制度。この制度ができ、持ち株会社化がすすみました。

会社分割制度

 不採算部門を従業員まるごと切り離して売却できるようにした制度。従来の営業譲渡などよりも簡単にできるようになっています。

 あわせてつくられた労働契約承継法で、企業側などは、分割などに労働者の承諾が不要だと主張しており、労働者に知らされずに別会社になっていたということが起きています。

 法の前提として、解雇するためや、債務超過の不採算部門分割は認められませんが、実際には、不採算部門を切り離すための、会社分割が横行しています。

株式交換・移転制度と三角合併

 株式交換や株式移転制度は、親会社となる会社の株を使って、子会社となる会社の株を移転したり、交換して完全子会社をつくるもの。買収するための現金がいらず、株主から強制的に子会社の株を買収することもできます。

 これらには税の繰り延べなどの優遇税制があります。

 三角合併は、外国企業などが、外国企業の株を使って、日本の現地子会社を通じ、日本の会社を買収して子会社にできるようにするもの。日本企業の株価が外国企業に比べ低いため、日本企業の子会社化が簡単になるなどの問題があり、施行が1年間延長されています。


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