2006年7月30日(日)「しんぶん赤旗」
イスラエル首相を戦争犯罪で提訴
ベルギー人夫妻
【パリ=浅田信幸】ブリュッセルからの報道によると、レバノン出身のベルギー人夫妻が二十七日、ベルギーの法律に基づきイスラエルのオルメルト首相ら政府指導者を戦争犯罪でベルギー連邦裁判所に提訴しました。
訴えたのはアリ・アブドルサテルさんと妻のファルカド・エルフセイニさん。夫妻は三人の子どもを連れてレバノンでバカンスを送っていましたが、イスラエルによる爆撃でシリアを経由した避難行を余儀なくされ、ベイルートの住宅は破壊されました。
夫妻は訴状で、ベルギー刑法の戦争犯罪の定義に基づき、四百人を超えるレバノン人の死亡、救急車や孤児院への爆撃、国連レバノン暫定軍(UNIFIL)基地への爆撃などを挙げ、「意図的な殺人」と非難しています。
提訴の対象はオルメルト首相、ペレツ国防相、ハルツ軍参謀総長の三人。夫妻の弁護士によると、二人は宗派にかかわらずレバノンの将来を考える市民団体の活動家で、さらに多くのベルギー市民が訴訟を起こす見込みだといいます。
ベルギーでは一九九三年に、ジェノサイド(大量虐殺)や人道に対する犯罪、戦争犯罪について、犯罪実行者と犠牲者の国籍も犯罪が行われた場所も問わず、世界中の誰でもがベルギーで裁判を起こせる法律が成立しました。
しかし二〇〇三年の米英などによるイラク戦争で米国のブッシュ大統領やラムズフェルド国防長官らが提訴され、ベルギーと米国の外交紛争に発展。米国の圧力のもとで同年八月、犯罪の実行者か犠牲者がベルギー人であるとともに提訴の権利をベルギー在留者に限定する新法に置き換えられた経緯があります。