2006年7月26日(水)「しんぶん赤旗」

主張

貧困率

不公平を広げた「構造改革」


 日本の格差と貧困の広がりに、改めて国際社会が注目しています。

 世界経済の「先進国クラブ」と呼ばれるOECD(経済協力開発機構)が、二十日に発表した「対日審査報告書」で、初めて一章を割いて日本の格差問題を取り上げました。OECDは加盟国の経済情勢を定期的に分析・審査し、審査報告書として公表しています。

 その中でOECDは日本の所得格差が一九八〇年代半ば以降大きく広がり、相対的貧困率は「今や最も高い部類に属する」とのべています。

アメリカに次ぐ水準

 「構造改革」を推進するOECDの現在の立場と、「構造改革」による深刻な矛盾の解決を図る日本共産党の立場は違います。しかし、貧困と格差の拡大を敏感にとらえる現状認識では共通しています。

 対日審査報告書に掲載された勤労世代の相対的貧困率の国際比較によると、すでに二〇〇〇年時点で、日本は先進諸国の中でアメリカに次いで貧困率が高い国となっています。

 相対的貧困率は、その国の平均的な生活水準の一定割合の所得を下回る人を貧困層と定義して、その貧困層が全体に占める比率で表します。今回報告された数字は、昨年二月にOECDのワーキングペーパーに掲載された分析のうち、勤労世代に焦点を当てたデータの抜粋です。

 小泉内閣は派遣・請負労働や契約社員など雇用の規制緩和を進め、正社員を非正規雇用に置き換えて人件費を減らそうという財界の身勝手な要求に全面的に従ってきました。

 政治が本来やるべき貧困と格差の是正とは正反対の、労働者・若者に痛みを押し付ける弱肉強食の路線です。日本の貧困と格差が、二〇〇〇年時点よりも、いっそう深刻になっていることは明らかです。

 報道によると、対日審査の会合に出席した日本政府の代表は、「格差拡大の主因は高齢化による人口構成の変化」だとする日本政府の公式見解の立場で反論しました。

 OECDはこれを退け、高齢化は「格差拡大の一因」ではあるが、「主な要因は労働市場における二極化の拡大にある」と報告書に明記しました。非正規雇用の割合が十年間で10ポイント以上増えて30%を超えたこと、パートの時給がフルタイムの40%にすぎないことをあげています。

 さらに、景気が回復しても非正規雇用の一部しか解消せず、「労働市場の二極化が固定化するリスクがある」と警鐘を鳴らしています。

 小泉内閣は、「格差の拡大は確認されない」「格差は悪いことではない」と開き直り、景気が良くなればいずれ解決すると言ってきました。これは、国民にも国際社会にも、まったく通用しない議論だということが、ますますはっきりしています。

最悪の消費税増税

 OECDの分析から、もう一つ重要なことが分かります。税や社会保障など所得再分配で貧困率がどれだけ是正されたかを比べると、日本は是正の割合がもっとも低い国になっています。日本が世界でも格差の大きな国になったもう一つの原因が、税や社会保障を通じた所得再分配の弱体化にあるということです。

 この点でも、小泉内閣は大企業・大資産家に減税、庶民には増税・社会保障負担増と、まったく逆立ちした政策を取ってきました。

 小泉「構造改革」路線の抜本的な転換が必要です。小泉内閣と自民・公明両党、民主党が主張する消費税率の引き上げは、貧困と格差を拡大する最悪の庶民増税です。


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