2006年7月24日(月)「しんぶん赤旗」
米食肉処理制度 問題点明らかに
紙議員事務所の本好評
日本共産党の紙智子参院議員がことし二月の訪米調査で入手した、米国食肉加工施設での牛海綿状脳症(BSE)規制違反の実態をまとめた『ノンコンプライアンス・レコード 日本向け米国食肉処理施設におけるBSE違反記録』(紙智子事務所編、合同出版)が出版され、話題をよんでいます。
同書に掲載した違反記録は、「牛の月齢判定が不適切」「BSE危険部位の除去が不適切」など、米政府から日本向け輸出認定を受けた食肉処理での違反を米農務省食肉検査官が記録・作成したもの。米国内で非公開となっていた同記録を情報公開ではじめて公表させた、米国消費者団体代表の特別寄稿も掲載。BSE規制を守る保障や体制がない米国の食肉処理システムの問題点を明らかにしています。
紙議員は「ノンコンプライアンス・レコードは、違反が同じ工場で繰り返されている事実を証明するものでした。一千枚に及ぶ記録を翻訳しながら読み進めると、ずさんな作業実態が明らかになり、政府がこれを知りながら国民には知らせず、輸入再開を決めたのだとしたら、重大な問題だと痛感した」と指摘。「解決ずみという米政府の主張をうのみにしての輸入再開は国民の安全に責任を果たしていない」と批判します。
違反記録を情報公開させた米国の消費者団体に所属していたパティー・ロベラさん(フード・アンド・ウオーター・ウオッチ副理事長)は、この本の中で「ノンコンプライアンス・レコードは、狂牛病に感染しているかもしれない牛が食肉処理場の検査の関門をやすやすと通り抜けてしまうという実態を明らかにしています」と指摘。「危険部位除去違反の摘発は氷山の一角かもしれない」とのべ、「食肉処理の現場で多くの検査官が、『従業員による月齢判定のチェックを監視することは検査官の任務ではない』と抗議された体験をしているという事態を受け、論争が起こっている」ことを明らかにしています。
一億頭ともいわれる牛を飼育し、年間三千五百七十三万頭の牛が食肉加工され、多いところでは一日に五千頭以上も処理する米国の食肉工場では、低賃金の移民労働者を主体に脅威的なスピードで操業され、なんの安全性の保障もないことを浮き彫りにする記録集です。日本向けの輸出条件が守られるという仮定を前提に、米国産牛肉の輸入再開をする危険性を証明するものとなっています。