2006年7月20日(木)「しんぶん赤旗」
米国が新兵獲得へ入隊基準引き下げ?
「問題あり」の希望者も増
米国防総省は先週、本年度(二〇〇六年九月末まで)の新兵募集目標を達成できそうだとの見通しを明らかにしました。イラク、アフガニスタンへの駐留が長期化するなか、さまざまな手段を使い「優遇措置」も用意して新兵の獲得に躍起になってきた結果です。しかしその一方で、無理な募集によるさまざまな問題もあります。(ワシントン=山崎伸治)
「国防総省は六月も続けて、四軍(陸海空軍と海兵隊)いずれも新兵募集目標を達成した」―十一日の記者会見でチュー国防次官は誇らしげに述べました。昨年度は全体として目標を達成できず、ことにイラク占領の主力部隊である陸軍は、八万人の目標を七千人下回りました。本年度はこれまで約五万二千人を獲得しています。
しかし目標達成のために、入隊希望者に対して行う「適性試験」の基準を引き下げていると、十一日付の米紙サンフランシスコ・クロニクルが指摘しています。
数学の知識や英語の能力を試す九十九点満点の試験で、これまで十五点から三十点の入隊者は全体の2%以下に抑えるとしていたものを、陸軍は昨年秋から4%に緩和しています。
これが、英語を十分に使いこなせない移民の若者の入隊を促すことを狙っているのは明らかです。国防総省が公表している最新の数字(二〇〇四年)では、新入隊者の13%が中南米系で、十年前の倍になっています。
また同紙は、今年最初の四カ月で、入隊希望者のうち、軽犯罪の経歴や薬物・アルコール依存症などの問題があった人が15・5%にのぼり、昨年、一昨年を上回っていることも指摘。「市民社会では問題とみなされる資質の多くが軍隊では歓迎される。たとえば、非常に攻撃的な若者というのは、まさに海兵隊が探しているもので、ことに下士官に求めている」との専門家の指摘を紹介しています。
入隊希望者の中にネオナチやスキンヘッドなど極右組織の構成員が増えているとの指摘もあったばかり。イラクで次々と明らかにされている民間人の殺害事件も、長期化する占領で兵士の間にいら立ちがつのっているとの指摘とともに、社会的に問題を抱えた兵士が派兵されていることと無関係ではないという見方もあります。