2006年7月20日(木)「しんぶん赤旗」

主張

パロマ中毒死

企業も行政も命への責任を


 パロマ工業製の瞬間湯沸かし器による一酸化炭素中毒死問題が拡大しています。パロマは新たに十件、計二十七件の事故を認め、死者は二十人になりました。同社は「さらに増えるかもしれない」としています。

 人命に直接かかわるガス器具の重大事故にもかかわらず、パロマも、事故報告を受けた経済産業省も、長年にわたって事態を放置し、消費者に警告することもしていませんでした。被害を拡大したメーカー、行政の責任はきわめて重大です。

「不正改造」いうが

 経産省(旧通産省)が、パロマの瞬間湯沸かし器による一酸化炭素中毒事故が一九八五年から十七件発生し、十五人が死亡したと発表したのは十四日です。最初の死亡事故からはすでに二十年もたっています。あまりにも遅すぎます。

 発表を受け同日記者会見したパロマの小林弘明社長は、謝罪を一言ものべず、「製品には問題はない」としたうえ、「原因は不正改造だ」と繰り返しました。命の重みをまったくわきまえない無責任な発言です。

 事故は、異常時にガス供給を自動的に遮断する安全装置が働かず、一酸化炭素が充満したため起きました。被害者がその危険性を知りながら、安全装置を働かなくする「改造」をしたとでもいう気でしょうか。パロマの責任逃れは通用しません。

 この直後から、同社の説明の不合理をつく指摘が相次ぎました。十八日に再度会見したパロマ側は、「改造」ではなく部品の劣化が原因の事故が多数あることを認め、「製造した責任がある」と初めて謝罪せざるをえませんでした。しかし、早い時期から事故を認識していたのではないか、「不正改造」そのものもパロマの指示によるものではないかなどの疑問にまともにこたえていません。

 同社はホームページで「創業以来、パロマが一貫してこだわり続けてきたのはなによりも『安全』」とうたいます。現実のパロマは、消費者の命と安全を担う自覚が欠けているといわざるをえません。

 経産省はガス事業法など製品安全四法で、危険な事故が発生した場合、安全確保のために報告徴収・立ち入り検査などをおこない、改善・危険等防止・緊急命令などの措置を講じ、これに従わない場合には罰則を加える権限を持っています。

 八五年からのパロマ湯沸かし器による一酸化炭素中毒事故は、それぞれガス事業者から通産省・経産省に報告されていました。しかし、同省は「事故の共通性を見抜けなかった」と、二十年間も放置していました。

 パロマが九二年に瞬間湯沸かし器のいっせい点検をおこなったときにも、通産省はただ報告を受けるだけで、その後の事故の続発にもかかわらず、パロマを指導することも、事故情報を公表することもしませんでした。責任感を欠くメーカーが次々重大事故を起こしているのに、調べず、知らせない行政では、安全確保などできるはずもありません。

「二度と起こさないで」

 経産省を事故公表に動かしたのは、九六年の事故で長男・山根敦さんを亡くした両親の訴えでした。両親は本紙(十七日付)に、パロマへの憤りとともに、「事故の報告を受けながら指導をしない国の責任は重い」、「二度と起こさないでほしい」という悲痛な思いを語っています。

 悲惨な事故を繰り返さないために、原因の徹底解明、責任追及をすすめる必要があります。命と安全第一を社会のルールとして打ち立てることが求められています。


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