2006年7月17日(月)「しんぶん赤旗」
ゆうPress
若者に広がる 「デートDV」
最近、十代、二十代のカップルの間で「デートDV(ドメスティックバイオレンス)」が問題になっています。殴る、けるなどの身体的な暴力、「毎日電話を強制される」「セックスのとき避妊してくれない」「お金をとられる」などの精神的、性的、経済的暴力も含まれます。デートDVの実態は――。(伊藤悠希)
女子高生の10人に1人被害
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長崎の「NPO法人 DV防止ながさき」が行った調査(グラフ)では女子高生の10人に1人、女子大生の6人に1人がデートDVを受けていることがわかりました。アンケート結果からは常に携帯電話にメールをし、相手の行動を監視する、携帯電話を勝手にチェックするなどという束縛、干渉を受けているケースが多いという実態が見えてきました。
埼玉県の栗橋高校で若年者DV予防啓発講座「デートDVお互いを尊重した関係とは」が開かれました。全校生徒550人が対象です。県男女共同参画課のDV対策事業の一環として行われました。講座を聞いた女子生徒は「束縛がいけないと思わなかった。愛情はそういうものだと思っていた」と述べ、男子生徒も「デートDVという言葉は初めて聞いた。自分がやってしまわないための参考になったし、被害を受けたときの対処法もわかった」。
入江克己校長は「水面下ではもっと起きているのではないかと思います。暴力と気付いていない生徒が多いのでは。生徒の一生にかかわる問題なので、啓発のいい機会にしていきたい」と話します。
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服装まで好み強要
市民団体の「レジリエンス」でサバイバー(DV被害を受けた、受けている人)をサポートしている中島幸子さん(42)。大学時代、彼氏からDVを受けていた中島さんの場合は――。
二十歳から四年半付き合っていた男性から殴る、ける、夜中に車で連れ出され知らない場所に置いていかれるということもありました。ショッピングセンターに行ったときのことです。彼の態度が変わって置いていかれそうになりました。
「置いていかないで」と言うと、彼が「おかしな人がいるから連れてってください」と私を警備員に突き出しました。あまりの仕打ちにそれ以降の記憶がありません。
デートをするときも彼が気に入る服でないと着替えなければなりませんでした。ハイヒールを履くなと言われたので、すべて捨てました。笑うと「なんで笑ってるんだ」と怒られるので笑うことをやめました。
彼から逃げたのは大学院生のときです。彼が子どもを殺しかねない人だと感じたことがきっかけでした。家族の協力もあり、親せきの家に四カ月間隠れました。
カウンセリングを受け、初めてDVを受けていたことに気付かされました。こんな目に遭っているのは世界中で自分だけだと思っていたのです。
一人で我慢せず相談を
レジリエンスでサバイバーのサポートをしている島田里沙さん(39)=仮名=もDV経験者です。
結婚前、彼の気に入らないことをすると責められることがありました。結婚すれば彼は変わると思って二十七歳のときに結婚、子どもを二人産みました。二人目の子どもを妊娠しているとき顔をたたかれました。これは子どもへの暴力だと感じました。そのとき離れようと思いました。二歳と二カ月の子どもを連れて家を出、五年間別居し、離婚しました。
DVの一般知識と自分の場合を比較して自分は違うと思い込んでいました。相手の言うとおりにするのが安全と認識します。そうして、心理的に支配されるのです。
今はレジリエンスで「後から続く人のために歩きやすい社会にしたい」と活動しています。でも、DVの体験から物音に敏感で、男性の大声、クラクションに対する恐怖心は強いままです。
DV被害に遭っていると気付いたら一人で悩まず家族や友達に相談してください。身近な人に言いにくかったら公的機関やNPOなどを活用してください。がまんしていても解決にはなりません。がまんすることは危険な状態に身を置き続けるということです。
加害者が自分と向き合う必要
デートDV防止プログラム、DV行動変革プログラムを行っている「アウェア」の山口のり子さんの話
DVは特定の人にしか起こらないというのは間違った認識です。私たちは体罰、セクハラ、いじめ、リストラなどのさまざまな暴力に日常的にさらされています。暴力で問題解決してもいいという暴力容認の意識がどこかにあるのかもしれません。まんが、映画、テレビ、雑誌、歌の歌詞から受ける影響も大きいでしょう。
DVは暴力を用いて相手を怖がらせ、力を持つことで相手を思い通りに動かし、支配することが目的です。
アウェアが行っているDV加害者の行動変革プログラムでは加害者がグループ教育を受け、自分の加害に向き合い、どうすれば行動を変えていけるか考えます。幾人もの参加者がプログラムを受ける過程でDV行動は妻に対してだけでなく、結婚前に付き合っていた人にもしていたことに気付きました。防止教育は若年であるほど効果があります。中学、高校あるいは大学で防止教育をすることが必要です。
相手が自分とは違う考え方、生き方、価値観を持っていることを受け入れ、自分の価値基準で評価しない。自分の考えを押しつけず歩み寄る努力をし、尊重する人間関係をつくることが相手を大切にすることです。
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なりたいものあるがイマイチ決まらない
Q 人生を迷える子羊をお救いください。僕は京都に住む二十四歳のニートなのですが、人生の進路に迷っています。お金持ちになりたいから、ホストをしたいという気持ちもあるし、美容師かバリスタ(カフェオーナー)になりたいとも思いますが、どれもイマイチ決定できません。勇気をもって前に進む決定をしたいのですが…。(男性)
何でもやってみることです
A あなたがやりたいホスト、なりたい美容師やバリスタ、すべてやってみてはどうですか。どれか一つに決定しようとすると勇気がいりますが、やりたい事をかたっぱしからすべてやるのであれば、勇気の前に楽しさや喜びがわいてくるでしょう。思い込まず、まず、何でもやってみる事です。
たとえ三日坊主で辞めてしまう職業があったとしても、その職業が自分に合わないと分かっただけ、前に進めます。お金持ちになりたいからホストをやりたいという考えは安易だと思いますが、まずやってみることですね。そこから、さまざまなことが見えてくるでしょう。
あなたが望むホストや美容師やバリスタはどれも、美的センスを必要とされる接客業ですね。ほかにもたくさん、あなたの美的センスを生かせる接客業があるかもしれませんね。
また、世間が「ニート」と位置付けるなかに自分自身をはめ込んでしまうことは、あなた自身の可能性をもある一定のワクに縛ってしまうようで、もったいないことだと思います。
あなたは未知の可能性を秘めた一人の人間です。独自の可能性を生かして、未知なるあなたの人生を楽しんで生きていってください。
舞台女優 有馬 理恵さん
「肝っ玉お母とその子供達」など多くの作品に出演。水上勉作「釈迦内柩唄」はライフワーク。日本平和委員会理事。