2006年7月16日(日)「しんぶん赤旗」

主張

ゼロ金利解除

金利は戻っても信頼は戻らず


 日銀が五年四カ月ぶりにゼロ金利政策を解除しました。

 日銀の量的金融緩和(ことし三月に解除)とゼロ金利政策は、日本経済のゆがみを大きく増幅させてきました。世界に類例のない異常な政策をやめるのは当然です。

貯蓄から「投機」へ

 ゼロ金利を含む超低金利政策で、国民の貯蓄から吸い上げられた金利の大半は、借入金利の引き下げを通じて大企業の利益に付け替えられました。国民の懐から大企業への隠れた所得移転です。

 一年物の定期預金の金利はかつての二百分の一に低下したのに、住宅ローンの固定金利は三分の一にも下がりませんでした。

 銀行はゼロ金利解除を先取りして住宅ローン金利の引き上げに動いています。超低金利と血税投入という国民の犠牲の上に、大銀行は空前の利益を記録しています。大銀行には住宅ローン金利の安易な引き上げを抑える体力と責任があります。

 日銀がゼロ金利を解除する理由にあげたのは景気回復です。従来なら、景気の回復につれて、市場の金利や物価が上がるとともに国民の所得も増えて、貸付金利や物価上昇の影響を緩和してきました。

 ところが、いま起こっていることは大企業が三期連続で最高益を上げる一方、国民の大多数の所得が減少し、増税・負担増が重なって格差と貧困が深刻化する事態です。庶民や中小企業のくらしと営業は回復どころではないのに、貸付金利と物価の上昇が追い打ちをかけています。

 日本経済の安定を図るためにも、庶民と中小企業を痛めつける「構造改革」路線を転換すべきです。

 この五年間、日銀が湯水のように銀行につぎ込んだ余剰資金は実体経済には回らず、実体経済に寄生するマネーゲームに流れてきました。

 その象徴がライブドア事件と村上ファンド事件です。日銀がせっせとためたダムの水は投機市場を潤し、モラル無用、ルール無視の腐敗した資本主義を太らせました。

 小泉内閣と日銀が進めてきたのは「貯蓄から投資へ」ではなく、「貯蓄から『投機』へ」のカジノ資本主義にほかなりません。規制緩和や減税で「株ころがし」「会社ころがし」を応援する小泉内閣とともに、日銀には、マネーゲームをまん延させた重大な責任があります。

 福井俊彦日銀総裁は、みずから村上ファンドに投資し、マネーゲームに参加していました。

 村上ファンドは昨年の阪神電鉄株の買い占めで、利益のためには手段を選ばない“ハゲタカ”の本性をいかんなく発揮しました。それにもかかわらず福井総裁は、昨年十月の記者会見で、村上ファンドの行動は「ひとつの投資主体の投資行動だ」と容認しています。

 ライブドアがニッポン放送株を買い占めた昨年二月には、「証券取引法には違反していない」とライブドアを擁護しています。

「職責」を果たすとは

 マネーゲームに手を染めながら、「通貨の番人」が務まらないことは明らかです。国民の七割が総裁の辞任を求めているのは当然です。

 福井総裁は十四日の記者会見でも「粛々と職責を全うしていく」とのべ、改めて辞任を否定しました。

 しかし、いま日銀がやらなければならないのは、深く傷ついた公正性と中立性への国民の信頼を取り戻すことです。総裁が「職責」を重んじるなら、責任を取って辞める以外にありません。


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