2006年7月11日(火)「しんぶん赤旗」

主張

福井総裁辞任問題

あいまいな決着は許されない


 福井俊彦日銀総裁をめぐり、インサイダー取引で起訴された村上世彰・村上ファンド前代表と深い付き合いがあり、みずからも巨額の利益を手にしていたとの問題が発覚して、まもなく一カ月を迎えます。辞任を求める国民世論に、福井総裁は応えようとしていません。

 なぜ辞任要求に背を向け続けるのか。あいまいな処理で済まそうとするなら福井氏本人はもちろん、「通貨の番人」である日銀そのものの信頼も、取り戻すことはできません。「職責を全うすべきだ」と、福井氏を擁護し続ける任命者の小泉首相をはじめ政府・与党も、その責任が問われています。

辞任要求は七割にも

 福井総裁は「辞任すべきだ」が69・5%(「産経」四日付)、大企業のトップも7・8%が辞任を求め、53・4%が進退は「自身で判断を」と要求(「毎日」九日付)―福井氏の辞任要求は、どの世論調査でも引き続き高い比率を占めています。国民の多数は福井氏に「職責を全う」することなど求めていません。

 公表された資料で見ても、福井氏は村上ファンドに一千万円の資金を拠出し、千四百七十三万円もの利益を得ていました。資産も膨大な額でした。どんなに預金してもほとんど利子がつかない「ゼロ金利」政策を国民に押し付けながら、自らは巨額の収益を手にする―日銀総裁として、「職責を全う」する資格などないのは明らかです。

 福井氏の問題を受け、日銀は先週、総裁や副総裁は、村上ファンドのような「私募ファンド」はもちろん、日銀の取引先である銀行や証券会社の株式などへの投資も許されないと、内規を改正しました。いわば福井氏の行為が間違っていたと認めたのも同然で、福井氏の総裁としての責任はますますはっきりしました。内規の改正前だからと、許されることではありません。

 福井氏の投資は、「規制緩和」の旗振り役を務める宮内義彦氏が会長のオリックスも絡んだ、特別の体制でおこなわれたことも明らかになってきています。福井氏が、「村上代表の志に賛同して」、まったくの善意で応援したなどという弁解では、誰も納得できません。

 福井氏は村上ファンドへの投資を日銀総裁に就任したさいにも解消せず、今年二月になってライブドアや村上ファンドの問題が明るみに出てはじめて解約を申し出ています。その時期は日銀が金融の量的緩和を解除(三月)する直前でした。株価の値下がりを見込んで解約を申し出たとすれば、それこそ究極のインサイダー取引というべきで、その責任も免れません。

 ことは日銀総裁としての資格と資質にかかわる問題です。いったい、小泉首相をはじめ政府や与党は、こうした事情をすべて不問にして、福井総裁をかばいだてしているのか。政府が日銀総裁の首を勝手に切れない、日銀の「独立性」などという理屈はこの際通用しません。あくまでかばい続けるなら、政府も与党も同罪だという批判を免れません。

信頼の回復こそ

 日本銀行は通貨の発行や金融の調整を通じて、日本経済の動向や国民の暮らしとも密接なかかわりを持ちます。日銀が続けた超低金利、「ゼロ金利」政策によって、国民がこうむった損失が三百兆円を超すといわれるなど、日銀の金融政策への国民の批判は根深いものがあります。

 日銀が国民の信頼回復が大切だと思うなら、まず総裁自らが責任を明らかにすることこそ、不可欠です。


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