2006年7月9日(日)「しんぶん赤旗」

水谷建設役員を逮捕

不透明な金の流れ 「政治力」が背景に


解説

 東京地検特捜部が経理担当常務を逮捕した「水谷建設」は、空港やダム、高速道路といった大型プロジェクトの下請けで事業規模を拡大し、全国でも屈指のサブコン(一次下請け業者)に躍り出ました。

 民間信用調査機関によると、二〇〇五年八月期で約四百四十四億円の売上高をあげています。

 本紙は、これまでも水谷建設の急成長のカギは「政治力」にあると指摘してきました。

 今回の捜査対象の一つ、福島県の佐藤栄佐久知事の実弟が社長をつとめる郡山三東スーツ本社工場跡地をめぐる疑惑も、本紙が昨年三月二十七日付で報道しています。

 二〇〇一年、大手ゼネコン前田建設工業とその子会社が郡山三東スーツに、郡山市内にあった同社工場跡地を担保にして計四億円を融資。その後水谷建設がこの土地を約八億円で購入し、郡山三東スーツは前田建設工業側に融資を全額返済しています。

 前田建設工業はこの前年、県発注の大型ダム・木戸ダム(楢葉町)の本体建設工事を共同企業体(JV)の幹事社として二百六億円で受注しており、水谷建設はその一次下請け業者でした。また知事は当時郡山三東スーツの取締役で筆頭株主でした。

 大型公共事業の受注企業と知事の親族会社がここまで密接な関係にあるのは異例のこと。公正さが求められる知事自身の政治姿勢も問われます。

 東京電力福島第二原発の残土処理事業をめぐっても、水谷建設は都内の出版社などに三億六千万円の高額リベートを支払っていたことも明らかになっています。

 こうした水谷建設の“役割”を業界関係者は「ゼネコン汚職事件以来、ゼネコン各社が裏金をつくりにくくなるなか、資金を捻出(ねんしゅつ)し政治力を背景にしたサブコンが受注工作の主役を担うようになった。業界の中で、水谷建設の『政治力』は有名だった」と指摘します。

 政財界に幅広い人脈をもち、自らも「政商」と名乗ってきた水谷建設の不正経理の実態と、そうして捻出した資金が政界に流れていないのかどうか、全容解明が必要です。(阿曽 隆)


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