2006年7月9日(日)「しんぶん赤旗」
共通の歴史教材で学習
教師と高校生、シンポで交流
日中韓
日本・中国・韓国の歴史認識の共有を目指して研究者・市民らが編集した三国の近現代史共通教材『未来をひらく歴史』の発刊一周年を記念した国際シンポジウムが八日、東京都内で開かれ、三百数十人が参加。三国の教師、高校生が共通教材でどのような歴史学習をしたかを交流しました。
『未来をひらく歴史』は、「新しい歴史教科書をつくる会」など侵略戦争を正当化する動きに対し、東アジアの歴史認識の共有を可能にするような歴史教材を作製しようと、日中韓の関係者が議論と研究を重ねて昨年発表したもの。これまで三国で計二十五万部が発行されています。その後も寄せられた意見も踏まえて検討を重ね、このたび第二版が出版されました。
中国・上海中学の教師、孔繁剛さんは、中国・韓国・日本それぞれの国の生徒がいる国際部の授業で共通教材を使った実践を報告。共通の歴史を理解することで「ともに平和と友好の東アジアの新しい仕組みをつくることができると思う」という生徒の感想を紹介しました。
韓国・ソウル市の高校教師、朴中鉉さんは韓国の教科書には登場しない沖縄戦について教えた授業を報告しました。沖縄戦の背景や「集団自決」、ひめゆり部隊、現在の米軍基地問題などについての資料を示し、生徒たちに考えさせ、「手紙」の形で意見をまとめさせました。生徒たちはこれまで知らなかった事実に驚き、ある生徒は「ひめゆり部隊のお姉さんたちへ」として「これ以上戦争で罪なき人々が傷を負わないよう私たちが努力していく」と書きました。
京都の立命館宇治中学・高校の教師、森口等さんは、「受験に出る事項をいかに効率よく暗記するかが主眼になっているような状況に風穴をあけたい」と、高校の世界史の授業で『未来をひらく歴史』を副読本にした経験を報告。二人の高校生が授業を受けて感じたことを語りました。いつもは授業中寝ていた友達が日本軍による「慰安婦」問題に驚き、「もっと知りたい」と語っていたことを紹介。「本当のことを知ることは最初はいやな気持ちになるけど、知ることで自分の考えが生まれる。その意見を交換することが大事だと思った」「学ぶだけでなく、学んだ上で、自分がどうしていくのか判断する力をつけることが大切だと思う」と語りました。