2006年7月9日(日)「しんぶん赤旗」

混合診療と病院株式会社参入

米国の要求くっきり

日米投資イニシアティブ


 「米国企業も医療改革の議論に積極的に関与できることを期待している」――六月二十九日の日米首脳会談に合わせて発表された「2006年日米投資イニシアティブ報告書」で、日本にたいして医療分野でいっそうの市場拡大を迫る米政府の姿があらためて明らかになりました。

参画を表明

 同イニシアティブは投資問題を協議する場として、小泉首相とブッシュ米大統領との初の首脳会談(〇一年六月)で設置。毎年一回、議論状況が報告書で発表されています。今回の報告書では、M&A(企業の合併・買収)、教育、医療サービス、労働法制などが米政府の関心事項として上げられています。

 「医療サービス分野」で、米政府は「米国の製薬業界、医療機器業界がすでに日本市場で主導的なプレーヤーとしてプレゼンスを持っている」と医療制度問題の議論への参画を強く表明。その上で、(1)病院経営への株式会社の参入(2)公的保険のきく医療と、きかない医療を組み合わせる「混合診療」の拡大――などを求めました。

 日本政府は、これまで病院や診療所への株式会社など営利企業の参入を認めてきませんでした。医療費の高騰を招く恐れがある一方、利益が上がらない地域からは撤退するなど、国民の命にかかわる分野にはふさわしくないからです。しかし小泉「構造改革」のもとで、規制改革・民間開放推進会議(議長・宮内義彦オリックス会長)などの議論をへて、政府は「構造改革特区」に限り、営利企業による病院経営を認めました。

 報告書のなかで米政府は「病院、診療所経営に対する株式会社の参入拡大を可能とするよう」と強く要望。「構造改革特区」について「その範囲は非常に限定的であり、実質的に特区における株式会社の病院経営はほとんど実現していない」と不満を示して、「高度医療特区を実施するための条件を緩和すべき」だと求めています。

改悪を評価

 また米政府は「混合診療」の導入について関心を表明しました。「混合診療」も日本の医療では原則禁止です。しかし「規制改革」の名のもとに、〇四年十二月に解禁が厚生労働相と行革担当相の間で「合意」され、先の通常国会で成立した医療改悪法で、拡大の方向が盛りこまれました。

 米政府は「混合診療」について、「医療支出を減らし、効率化を促し、さらに医療保険制度の財政上の困難を緩和しうるものである」と日本の「医療費削減」に利点があることを強調。同時に「現行制度は極めて限定的である」と全面的な解禁を要求しています。

 日本政府は「そのような米国政府の見解を共有してはいない」としながらも、「構造改革特区」の設定や、混合診療についての「大臣合意」を例にして、米国要求の実現に努力している姿勢を示しています。


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