2006年7月8日(土)「しんぶん赤旗」
第2回中央委員会総会
志位委員長の幹部会報告
日本共産党が六、七の両日、党本部で開いた第二回中央委員会総会での志位和夫委員長の幹部会報告は次のとおりです。
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みなさん、おはようございます。CS通信をご覧の全国のみなさんにも、心からのあいさつを送ります。私は、幹部会を代表して、第二回中央委員会総会への報告をおこないます。
北朝鮮によるミサイル発射に
強く抗議する
報告の本題に入る前に、昨日(五日)、北朝鮮が、七発のミサイルを発射し、日本海に落下した問題についてのわが党の立場をのべます。
北朝鮮の当局者は、ミサイルの発射は、「国の自主権の問題だ」とのべていますが、そんな言い訳はとうてい通用するものではありません。
公海上に達するミサイルやロケットの発射は、一般の航空機や船舶の航行に危険を及ぼすものであり、関係する機関や国々に事前に通告することが国際ルールになっており、事前通告なしのミサイル発射は、国際ルールに違反する無法行為であります。さらに、今回の行為は、ミサイル発射凍結を確認した「日朝平壌宣言」をはじめとする国際的取り決めにも違反します。武力による威嚇で自らの要求を通そうという「瀬戸際戦術」は、北東アジアの平和と安定を脅かす、許しがたい行為であります。
わが党は、国際ルールと国際的取り決めを無視した、北朝鮮によるミサイル発射にきびしく抗議します。北朝鮮が、こうした無法行為をただちに中止し、国際ルールと「日朝平壌宣言」を順守することを、強くもとめます。
わが党が、かねてから指摘してきたように、北朝鮮が責任ある国際社会の一員となるためには、国際的無法行為を清算し、国際ルールを守る立場を確立することが不可欠であります。このことを、かさねて強く指摘しておくものです。
中央委員会総会の主題について
この中央委員会総会の主題についてのべます。
その第一は、大会後の情勢の展開とわが党の役割について明らかにするとともに、来年の二つの全国的な選挙戦――参議院選挙といっせい地方選挙で何としても前進をかちとるという政治的構えを全党的に確立することであります。
第二は、「支部が主役」の党建設について、大会後のとりくみから教訓を引き出すとともに、党建設のとりくみでも選挙勝利を正面にすえ、「選挙で勝てる、強く大きな党」づくりをめざして、とりくみを大きく飛躍させることであります。
一、大会後の情勢の展開と、
日本共産党の先駆的役割
大会後の情勢の展開と、日本共産党の先駆的役割について報告します。
党大会決定は、自民党政治の危機とゆきづまりの根底に、「世界の他の資本主義国にも類例のない、自民党政治の三つの異常な特質」――歴史問題、対米従属、大企業中心主義の異常があること、それが国民との矛盾・世界の流れとの矛盾を深めていること、日本の政治がこの異常なゆがみを打開する新しい政治をもとめる歴史的時期を迎えていることを、全面的に明らかにしました。
大会後の情勢の展開のなかで、綱領と大会決定の分析と提起は、大きな力を発揮しています。悪政の根源をつき、国民とともにたたかう党の値打ちがきわだっています。
過去の侵略戦争を正当化する異常――
誤りをただすかどうかの大きな岐路
まず過去の侵略戦争を正当化する異常についてのべます。
首相の靖国神社参拝問題を中心とする歴史問題での誤りについて、わが党は、昨年五月十二日の時局報告会での不破議長(当時)の提起いらい、問題の核心を明らかにするとりくみをつづけてきました。それから一年余、わが党の提起は、内外に大きな反響をよび、世論を動かしてきました。
靖国問題は、日本と中国、韓国との関係の問題にとどまらず、アジアと世界の問題となりました。
東南アジア諸国連合(ASEAN)諸国の政府首脳からも、「日中の関係悪化は、アジアの平和と安定、協力の促進のために重大な障害」との批判が公然と出されました。
さらに、最近、ある経済誌が「太平洋を越えた靖国問題」というリポートで紹介したように、アメリカでの批判も広がりました。今回の小泉首相の訪米にさいして、米国議会のハイド下院外交委員長は、下院議長に書簡を送り、首相が靖国参拝を見送るとの約束をしないかぎり、首相に米国議会でのスピーチを許すべきではないとの提言をおこなったと伝えられました。ポール・ジアラ元米国防総省日本部長は、最近発表した「首相参拝は米国にも損失」と題する論文で、「歴史の愚かな書き換えは、米国に対する直接的な挑戦である」とのべました。
アメリカとの関係では、さらに深刻なもう一つの側面もあります。在日外交団の少なくない人々から、「小泉首相の靖国参拝は、アメリカも含めて、世界にたいして日本の政治的・道義的な立場を劣勢においてきた。それを取り戻すために首相は、アメリカの要求を十二分にのんで歓心を買っているのではないか」という指摘が寄せられています。靖国参拝に固執する首相の立場は、対米関係で自らの立場をいよいよ弱いものとし、米国の要求を丸のみする結果を招き、異常な対米従属を加速させてきました。これは、日本国民にとって、二重の深刻な損失にほかなりません。
いま政府・自民党は、この誤りをただすかどうかの重大な岐路にたっています。靖国参拝に固執した結果うまれた日本外交の深刻なゆきづまりは、何よりも小泉首相自身がつくりだした問題であって、わが党は、首相が九月までの在任期間中に、誤りを繰り返さず、自らその誤りを是正することを強くもとめるものであります。次期自民党総裁にだれがつくにせよ、この歴史逆行の誤りを引き継がず、すみやかに是正をはかるべきであります。
この問題の核心をつたえ、事態の前向きの打開をはかるために、日本共産党が果たしてきた役割は大きいものがあります。防衛庁・防衛研究所の幹部も、靖国問題を分析したある月刊誌の論文のなかで、「遊就館批判が国内外一般に広まるのは、去年の五月になされた……時局講演会とそれに続く『しんぶん赤旗』の報道を契機として」だったこと、いまでは広く使われている「『靖国史観』との用語は、……『しんぶん赤旗』が遊就館の展示を指して批判的に使用し始めたのを出自としている」とのべていることは、立場を異にする側からの分析として注目されます。
わが党は、歴史を偽造する逆流の根をたつまで、ひきつづき力をつくすものであります。
アメリカいいなり政治の異常――
憲法闘争と基地闘争の前進を
つぎにアメリカいいなり政治の異常についてのべます。
世界の中の日米同盟」――「長い戦争」を米国とともにたたかう重大な危険
大会決定は、「日米軍事同盟の体制は、日米安保条約の枠組みさえこえた、地球的規模の『日米同盟』への侵略的変質を深めている」と分析しましたが、異常なアメリカいいなり政治は、六月二十九日の日米首脳会談にいわば“集大成”される形であらわれました。
日米首脳間で「新世紀の日米同盟」と題する「共同文書」がかわされ、「世界の中の日米同盟」を確認するとともに、「21世紀の地球的規模での協力のための新しい日米同盟」が宣言されました。これは、一九九六年の「日米共同宣言」で、「極東」から「アジア太平洋」に対象が拡大された日米の海外での軍事的共同態勢を、文字どおり「世界」へと拡大するものにほかなりません。日米が、世界における共通の戦略目標をもち、米軍と自衛隊の軍事一体化をはかり、基地体制の抜本的強化をはかる――これが「新世紀の日米同盟」の名ですすめられている内容であります。
こうした日米軍事同盟の侵略的変質が、アメリカのどういう世界戦略のもとですすめられているかを直視することが大切であります。
第二期ブッシュ政権の二年目にあたる二〇〇六年の冒頭から、米国政府の外交軍事戦略についての重要声明・重要文書が相次いで公表されました。一月の大統領一般教書演説、二月の国防総省「四年ごとの国防計画見直し(QDR)」、三月の「二〇〇六年国家安全保障戦略」などであります。これらのすべてで共通して、つぎの二つのことが強調されています。一つは、米国は「長い戦争」(ザ・ロング・ウオー)をたたかっている、そのさなかにあるという「世界認識」です。いま一つは、「同盟国の協力なしには、この戦争に勝てない」ということであります。
アメリカは、イラク侵略戦争で手ひどい失敗をし、深刻な打撃を受けました。いつ果てるとも知れない戦争の泥沼化に苦しんでいます。そのもとで「敵を迅速に打ち負かす」という従来の言葉にかわって「長い戦争」という言葉があらわれました。「長い戦争」をたたかい、勝利するには、米国一国の力では足りない。この戦争を文字どおり一体になってたたかう同盟国が必要だ。こういう世界戦略のなかで、「世界の中の日米同盟」が宣言されたことは、日本と世界の前途にとってきわめて重大な危険をもたらすものです。だいたい憲法九条という「恒久平和主義」の憲法をもつ国が、「長い戦争」、いわば「恒久戦争」を宣言する米国とともに、戦争への道にのめりこむ。こんなことはけっして許されることではありません。
憲法改悪反対闘争の広がり――国民の過半数結集めざす運動をたゆまず前進させる
日米軍事同盟の侵略的変質は、国民との矛盾をいよいよ深刻にし、これまでにない広範な人々が平和をもとめて立ち上がりつつあります。とくに、憲法闘争と基地闘争が力強く前進していることは、きわめて重要であります。
憲法問題では、六月十日、結成二周年を迎えた「九条の会」の全国交流集会が開かれ、草の根の「会」が五千百七十四まで広がっていることが公表され、この運動が、創意的で自発的な力によって支えられ、洋々たる前途をもっていることが示されました。交流会の場で、「『九条の会』からの訴え」が発表されましたが、その第一項目に「過半数世論の結集」を掲げ、その実現のために、「アピール」に賛同する思想・信条・政治的立場の違いを超えた結集と「会」の結成を呼びかけていることは重要です。
憲法運動のもう一つの柱である憲法改悪反対共同センターは、全国で二百をこえる地域センターをつくり、宣伝、対話、署名のとりくみを発展させています。現在、センターが集約している署名は五百万人に達しますが、高知県土佐清水市、大月町で住民過半数署名を達成し、多くの自治体で過半数署名がとりくまれています。
この運動で、何よりも大切なことは、「九条の会」や「共同センター」の運動がとりくんでいるように、憲法改悪反対の一点で、思想・信条・政治的立場の違いをこえて、国民の過半数を結集する運動を、たゆまず前進させることにあります。国民多数が反対といえば、改憲はできない。「海外で戦争をする国」づくりという改憲の本質が伝われば、国民多数の結集は必ずできる――その確信をもってこの運動を発展させようではありませんか。
改憲手続き法案についても、法案そのものの反民主的内容の告発とともに、この法案の狙いが憲法九条改定と一体のものであることを広く明らかにし、改憲反対の多数派結集の運動を前進させることと結びつけて、廃案に追い込むことを追求することが大切であります。
基地強化反対のたたかい――最も幅広い人々が共同できる一致点で
日米首脳会談での「共同文書」では、「米軍再編」の日米合意の「完全かつ迅速な実施」を宣言しました。しかし、基地強化押し付けに反対する自治体ぐるみのたたかいは、一部に曲折はありますが、力強く前進しています。二度にわたって「艦載機移転反対」の住民の審判をくだした山口県・岩国市をはじめ、神奈川県・座間市と相模原市、福岡県・行橋市、宮崎県・新富町、鹿児島県・鹿屋市などが、自治体ぐるみで頑強に基地強化反対の姿勢をつらぬいています。沖縄県・名護市では、市長が海兵隊新基地の受け入れを表明しましたが、沖縄県民の七割が反対の声をあげ、県内第二の都市・沖縄市では、新基地建設反対をつらぬく革新共闘の市長候補が勝利をおさめました。
自治体ぐるみのたたかいという点では、地域ごとに広域的な共同と連携がすすんでいることも注目されます。岩国基地問題では、岩国市とともに、広島県・廿日市市、大竹市などが「艦載機移転反対」で協議会を立ち上げ、共同闘争を発展させています。築城基地問題では、福岡県・行橋市、築上(ちくじょう)町、みやこ町の首長が共同して反対を表明しました。鹿屋基地問題では、鹿児島県・鹿屋市とともに、旧肝属(きもつき)郡、旧曽於(そお)郡などの市町村共同の運動となっています。横須賀基地をめぐっては、首都圏規模での共同した大集会が計画されています。
わが党は、基地強化押し付けの動きにたいして、民主団体とも共同して独自の反対闘争を展開するとともに、それぞれの地域で最も幅広い人々が共同できる一致点にそくして、自治体ぐるみ、住民ぐるみのたたかいをすすめることを、一貫して重視してきました。これまで基地との共存を受け入れてきた保守の人々も含めて、新しい共同の広がりが全国各地で生まれていることはきわめて重要であり、ひきつづく運動の発展のために力をつくすものであります。
「米軍再編」のために三兆円もの巨額の財政支出をおこなう計画にも、国民の怒りが噴き出しています。この財政支出は、そのすべてが米軍の世界戦略にもとづく基地強化のためのものであり、日本国民を苦しめる結果をもたらします。とりわけグアム移転費用を日本が支出するというのは、他国領土の基地強化への財政負担という、世界でも歴史にも類例のない異常な従属の道にのめりこむことになります。これを実施することは、新法が必要になりますが、国会内外でのたたかいを強め、くいとめるために全力をあげたいと思います。
切実な要求でのたたかいを前進させつつ、 安保解消をもとめる国民的世論を広げる
こうして、日米軍事同盟の侵略的変質が新たな段階にすすむもとで、憲法問題でも、基地問題でも、これまでにない広範な人々との共同が発展しています。経済問題でも、BSEの危険を抱えたままの米国産牛肉輸入の再再開問題をはじめ、「こんな従属国家でいいのか」という声が、これまでになく広範な人々からわきおこっています。
わが党は、それぞれの問題で、一致する要求にもとづく共同のたたかいを前進させながら、この根源にある仕組み――日米安保条約解消をもとめる国民的世論を広げるために奮闘するものであります。
異常な大企業中心の政治――「ルール
なき資本主義」「新自由主義」をただす
つぎに異常な大企業中心の政治についてのべます。
この半年間、大会決定が、全面的に告発した「ルールなき資本主義」と「新自由主義」の害悪が、深刻な形で噴き出しました。
格差社会と貧困の広がり――根源ついた批判と打開の方策をしめす
格差社会と貧困の広がりが、一大社会問題となりました。野党だけでなく与党も、この問題への言及を避けられなくなっています。小泉首相は、「格差は悪いことではない」と開きなおりつつ、「これは改革の途上に生まれた問題であって、景気が回復していけば、いずれ格差問題は解決する」といっています。
しかし、いまおこっていることは、一方で、財界・大企業が三期連続で史上最高の利益をあげるなど、バブルの時期を上回る空前の富を得ながら、他方で、国民の大多数のなかで所得が減少し、格差と貧困が深刻な形で広がるという事態であります。
わが党は、その根底には、「構造改革」の名でおこなわれてきた政治悪があると追及してきました。異常な大企業中心主義という根源をついた批判と打開の方策をしめし、国民とともにたたかいをすすめている党は、日本共産党だけであります。
格差社会と貧困の広がりを、根本から是正していくために、つぎの三つの分野でのたたかいを、よびかけたいと思います。
雇用と労働―― 「職場講座」 を生かしたたたかいの成果も
第一は、人間らしい労働をもとめるたたかいであります。
四月の「職場問題学習・交流講座」では、格差社会と貧困の広がりの根底に、低賃金・無権利の非正規雇用労働者の急増とともに、成果主義賃金を根源にした深刻な状態悪化があることを、詳細に解明し、現状打開のためのたたかいをよびかけました。「しんぶん赤旗」でも、日刊紙・日曜版合同で「職場取材チーム」をつくり、「シリーズ職場から」などの特別企画を開始しています。これは、全国の労働者の共感と反響をよび、たたかいが開始されています。
すでに成果も生まれています。岩手県では、県教育委員会が、この六月から教職員に成果主義賃金を導入する計画を打ち出しましたが、職場のたたかいと連帯したわが党の奮闘によって、延期に追い込んでいます。成果主義賃金の是非を問う職場投票で、教職員の96%が反対するなどの職場のたたかいがおこりました。わが党の県議は岩手県では一人ですが、このたたかいに連帯し、「講座」を力にして、「教職員の仕事は、子どもたちの人格の形成を目的に共同してすすめられるべきであって、一人ひとりばらばらに評価し、競争と分断を持ち込むことは正しくない」と見事な論戦を展開し、導入延期に追い込んでいます。
政府は、日本経団連の号令と米国の圧力のもとに、労働者の解雇と残業を自由化する労働法制の大改悪の動きを開始し、来年度の通常国会には法案の提出をねらっています。格差社会の根源をなしている労働と雇用の破壊に立ち向かい、人間らしい労働のルールをつくるために、職場を基礎に、国民的連帯を強め、たたかいを前進させようではありませんか。
社会保障――2つの反動的変質から守り、 拡充する国民的たたかいを
第二は、社会保障改悪に反対し、拡充をもとめるたたかいであります。格差と貧困の広がりのなかで、国民の生存権を保障する社会保障制度の役割が、あらためて問われています。ところが、「構造改革」路線のもとで、国民の暮らしの支えになるべき社会保障が、逆に、国民の暮らしに襲いかかるという事態がおこっています。とくに、わが国の社会保障制度に、つぎの二つの反動的変質がおこっていることは重大であります。
一つは、低所得者、社会的弱者が、社会保障制度から排除されるという事態が、広範におこっていることであります。国保料の滞納に伴う保険証取り上げと資格証明書への置き換え、高い年金保険料を払えず制度から除外されつつある人が一千万人にものぼる事態、餓死者まで出した過酷な生活保護の抑制、障害者福祉でも介護保険でも施設からの冷酷な追い出しがすすめられていることなど、どれ一つとっても胸がつぶれるような許しがたい事態が全国ですすんでいます。
いま一つは、「官から民へ」の掛け声で、国の公的責任を放棄する流れが、この分野にも押し付けられていることであります。医療改悪法に盛り込まれた「混合診療」が本格的に導入されるなら、公的医療保険だけでは必要な医療が保障されず、民間保険に頼らざるをえなくなります。国民の命と健康にかかわる分野まで、日米の医療保険会社・医療大企業がハゲタカのように食い物にしようとしている。これも許すわけにはいきません。
医療改悪に反対するたたかいで、国政に寄せられた署名は二千万をこえました。このエネルギーをさらに発展させ、社会保障をこうした反動的変質からまもり、拡充する国民的たたかいを、あらゆる分野でおこしていこうではありませんか。
「逆立ち税制」――高齢者への大増税、 消費税増税に反対する国民的反撃を
第三は、「逆立ち税制」をただすことであります。格差が拡大したら、所得の再分配によってそれを是正するのが税制の役目です。ところが、「庶民に大増税、大企業に減税」という逆立ちした税制によって、格差に追い打ちをかける事態が引き起こされています。
いま高齢者のなかで、急激な増税・負担増への悲鳴、怒りと怨嗟(えんさ)の声が沸騰しています。老年者控除の廃止、公的年金控除の縮小、定率減税の縮小などが、いっせいに襲いかかり、税負担が数倍から十数倍になり、それに連動して介護保険料や国民健康保険料などが「雪だるま」式に膨れ上がるという事態がおこっています。これは高齢者が耐えられる限度をはるかに超えた、まさに生存権を脅かす負担増です。わが党は、「雪だるま」式負担増の問題をいち早く国会でとりあげ、中止をもとめてきましたが、政府は高齢者へのまともな説明もなく、負担増を強行しました。不意打ち的に大増税の波がおそう。このやり方もきわめて乱暴で許しがたいものであります。
すでに党として政府への緊急申し入れをおこないましたが、わが党は、いま実施されている高齢者への大増税と負担増の実施をただちに中止し、その見直しをはかることをもとめます。また今後、実施予定の負担増計画の凍結、見直しをもとめます。自治体での保険料の減免制度を緊急にもとめてたたかうとともに、各種控除など現行の税金の軽減制度を最大限に活用するとりくみも強め、高齢者の暮らしをまもるために力をつくします。高齢者の生存権をまもる負担増反対のたたかいを日本列島津々浦々で急速におこすことを心からよびかけるものです。
小泉内閣の最後の「骨太の方針」では、「歳出入の改革」と称して、十六・五兆円の「歳出入ギャップ」を、まず最大限の社会保障や国民サービスの切り捨てによって埋め、足りない部分を消費税など庶民増税でまかなうという方針が盛り込まれようとしています。小泉首相は、「歳出をどんどん切り詰めていけば、『やめてほしい』という声が出てくる。増税してもいいから必要な施策をやってくれ、という状況になるまで、歳出を徹底的にカットしなければならない」とのべました。国民生活を兵糧攻めで締め上げたあげく消費税増税をおこなう。このたくらみにたいして国民的反撃をもってこたえようではありませんか。
わが党は、「逆立ち税制」をただし、空前のもうけをあげている大企業と高額所得者に応分の負担を――この主張を堂々と掲げて奮闘するものであります。
「カジノ資本主義」への堕落と、 財界直結の利権政治
格差社会の広がりと表裏一体で噴き出してきたライブドア事件や村上ファンド事件は、「新自由主義」路線がもたらす腐朽性を象徴するものであります。規制緩和万能路線が、マネーゲームをあおり、「株ころがし」「会社ころがし」で巨額の利益を得ようという、いびつな「マネー資本主義」「カジノ資本主義」を広げてしまいました。国民から吸い上げた金を、経済のまともな発展ではなく、投機にそそぎこむ。英エコノミスト誌は、日本の資本主義は「驚くばかりに規制がない」と喝破しましたが、モラルもルールもない資本主義への堕落は、目を覆うばかりのものがあります。
この問題で許しがたいのは、「新自由主義」の経済政策を推進してきた当事者が、このマネーゲームに深く関与し、そこから莫大(ばくだい)な利益を得てきたことであります。小泉内閣の「規制改革・民間開放推進会議」の議長であり、十年間にわたって規制緩和万能論の旗振りをつづけてきたオリックスの宮内会長は、村上ファンドを実質的に創設し、そこから巨額の利益を得ていました。日銀総裁として、ゼロ金利政策、量的緩和政策をつづけ、庶民から巨額の利子所得を奪いながら、マネーゲーム経済の金融的基盤をつくりだし、村上ファンドの広告塔となってきた福井氏もまた、ぬれ手で粟(あわ)の利益を得ていました。小泉内閣の「経済財政諮問会議」の「民間議員」として、「新自由主義」の経済路線の陣頭指揮をとってきたウシオ電機の牛尾会長も、村上ファンドに巨額の投資をしていました。みずから規制緩和の仕掛けをつくり、その仕掛けのなかで、私腹を肥やす。首相は、「族議員をなくした」といいますが、この政治がつくりだしたのは、最悪の財界直結の利権政治ではありませんか。
ここにも国民の激しい怒りがむけられています。この間、状況の大きな様変わりがおこっています。かつては「官から民」「小さな政府」論が横行し、歯向かうものは抵抗勢力というレッテルがはられました。わが党は、この流れに正面から対決して力戦奮闘しましたが逆風にさらされました。ところが「ルールなき資本主義」をただすという綱領の立場が、文字どおり現実の弊害を克服する生きた方策として、広い国民に違和感なく入っていく新しい状況が展開しはじめています。ここに確信をもっておおいに党の役割を訴えるとともに、「社会的連帯で反撃を」を合言葉に、国民要求にこたえて「たたかいの組織者」としての役割を果たそうではありませんか。
教育基本法改定を許さない――
日本の未来にかかわる国民的課題
通常国会で与党が持ち出してきた教育基本法改定の動きにたいして、わが党は、党アピールの発表、国会論戦、六月六日の全国中継でおこなった演説会など、この悪法を阻止するために、国民の運動と共同して、全力をあげてたたかってきました。
国会論戦をつうじて、政府の改定案が、国民が望む教育の改革に逆行するものであり、憲法が保障する内心の自由を侵害し、教育への国家的介入を無制限に拡大するという重大問題が明らかになりました。首相が、「愛国心」を通知表で評価することは「難しい」と答弁せざるをえず、全国の運動によって一定の是正がはかられてきていることも重要であります。
秋の臨時国会にむけて国民的世論と運動をどれだけ広げられるかが、法案の行方を大きく左右します。ひきつづき知恵と力をつくし、広い国民的共同をつくりあげながら、何としてもこの悪法を葬るために奮闘したいと思います。
この問題は、教育に直接携わる人々だけでなく、すべての国民にかかわる大問題であります。子どもたちが、教育という営みをつうじてどのように成長し発達するかは、二十一世紀の日本の未来を左右する大きな問題です。
教育基本法改定の動きは、「自民党政治の三つの異常な特質」のすべてにかかわってくる問題です。それは、「海外で戦争をする国」「弱肉強食の経済社会」づくりという「二つの国策」に従う人間を育成するという点で、対米従属と大企業中心主義の政治に深くかかわった動きです。その推進勢力の中核に“靖国派”がすわっているという点では、侵略戦争への無反省の流れともかかわってきます。
自民党政治が、教育という子どもたちの未来を準備する営みまで政治的・権力的支配のもとにおき、日本の未来を閉ざそうというのが、この動きの本質であります。そういう意味でも、教育基本法改定問題は、二十一世紀の日本の進路、未来にかかわる国民的大問題だということを強調したいのであります。
多くの人々と手を携え、教育基本法改悪反対の国民的運動を発展させ、このたくらみを打ち破るために全力をつくそうではありませんか。そのなかで多くの国民のみなさんと、子どもたちの未来を開く教育とは何かを語りあい、一歩でも二歩でもいまの教育をよくするために奮闘しようではありませんか。
政治の“流れの変化”のなかで、悪政の
根源をつく党の値打ちがきわだつ
歴史問題、対米従属、大企業中心主義、教育問題――どの問題をみても、自民党政治の矛盾が劇的にすすみ、政治の“流れの変化”がおこっています。かつて小泉政治に期待を寄せた人々もふくめて、内政でも、外交でも、「いまの政治にはまかせておけない」という国民の気分、世論の変化がおこっています。
政府・与党は、昨年の衆院選挙で三分の二をこえる絶対多数の議席を得ました。しかし政府・与党の思い通りに、ことがすすむかというとそうはならない。靖国問題で外交がいよいよゆきづまる。「米軍再編」では保守層もふくめて反対の火の手があがる。憲法問題では、国民的な運動が広がり、改憲派にとって大きな圧力になっています。経済問題でも、一方で格差拡大、他方で経済犯罪の続発と、矛盾が噴き上がっています。いたるところで国民のたたかいがおこり、深いところで世論の変化がおこっています。
国と地方との矛盾も、きわめて激しくなっています。
国による地方自治体と地域社会の破壊が深刻な形ですすんでいます。市町村合併の押し付けのもとで、周辺部、過疎地の切り捨ての不安が現実のものとなりつつあります。地方財政削減、公務員削減の大号令のもとで、住民に身近な福祉、教育などの大きな後退が余儀なくされています。郵政民営化によって、過疎地や農村地域を中心に、郵便物の集配業務を廃止する大規模な計画がすすんでいます。これらは国民との矛盾を深刻にし、従来の保守基盤の崩壊が激しく進行するもとで、地域社会から新しい政治をもとめる流れが生まれています。
先の通常国会で、わが党は、医療改悪法案、教育基本法改悪法案、改憲手続き法案、共謀罪法案をそろって廃案にと主張して奮闘しました。医療改悪法は強行されましたが、残りの三つの悪法は成立を許さず、秋の臨時国会に持ち越しになりました。国会の会期が延長されなかったのは、首相の政治的思惑もあるでしょうが、延長をしても悪法を思い通りには強行できないというところまで、国民のたたかいが政府・与党を追い詰めたこともまた事実であると思います。たたかいのこの成果に確信をもって、秋のたたかいで一連の悪法をそろって廃案に追い込むために力をつくそうではありませんか。
わが党の奮闘は、こうした政治の“流れの変化”をつくるうえで、大きな役割を果たしてきました。各分野でおこっている国民運動の力強い前進に、わが党は大きな役割を果たし、貢献をしています。同時に、政治の“流れの変化”のなかで、政治の現状の抜本的打開の方策を明らかにする綱領と大会決定の先駆性が浮き彫りになり、それが多くの国民に無理なく受け入れられる状況が広がっています。
悪政の根源をつき、国民とともにたたかう党の値打ちがきわだっている。まさに党の出番の情勢であります。ここに確信をもち、広い視野にたって国民のなかに打って出て、党の前進の新しい波をつくりだそうではありませんか。
二、2007年の参議院選挙、
いっせい地方選挙をたたかう方針
つぎに、二〇〇七年の参議院選挙、いっせい地方選挙をたたかう方針について報告します。
来年の2つの全国的選挙戦の
政治的位置づけと構えについて
まず来年の、二つの全国的選挙戦の政治的位置づけと構えについてであります。
二〇〇七年のいっせい地方選挙と、それにつづく参議院選挙は、日本の進路にとってきわめて重大な意味をもつ政治戦となります。
第一に、わが党は、この選挙を、自民党政治の平和と暮らしを破壊する暴走に正面から立ち向かう力をのばす選挙と位置づけてたたかいます。選挙戦の具体的な争点は、今後の情勢の展開によって流動的ですが、アメリカいいなりに憲法を変え「海外で戦争をする国」づくりを許していいのか、大企業・財界の利益第一の「構造改革」で「弱肉強食の経済社会」――規制緩和万能、社会保障破壊、庶民大増税の道をつきすすんでいいのかという、国の進路にかかわる二つの大問題が問われるたたかいになることは間違いありません。さらに国による地域社会の破壊という動きにたいして、国政でも、地方政治でもきびしい審判がもとめられます。自民党政治に正面から対決し、国民の利益をまもるたしかな立場をもつ日本共産党をのばすことが、これらの逆流への痛打になることを訴えてたたかいます。
第二に、この選挙を、「二大政党づくり」の動きを本格的に押し返す選挙としなければなりません。民主党・小沢執行部は、「対立軸」路線を掲げ、「参議院選挙で与党を過半数割れに追い込み、政権交代につなげる」としています。しかし、その実態はどうでしょう。憲法改定でも、改憲手続き法でも、教育基本法改定でも、消費税増税でも、国政の基本問題で自民党と変わらない立場にあるのが、いまの民主党です。教育基本法をめぐる特別委員会の国会論戦では、自民、民主の議員が、たがいに「教育勅語」をほめそやし、「国体護持」をとなえるなど、あたかも戦前の帝国議会にタイムスリップしたかのようなありさまが繰り広げられました。民主党は、財界との癒着関係でも、村上ファンドに秘書給与の肩代わりをしてもらうなど深い癒着関係にあった議員の責任を、党としてただすことができないでいます。わが党は野党党首会談にさいして、この問題を直接にも指摘しましたが、野党としてのあり方がきびしく問われる問題といわなければなりません。さらに地方政治では、民主党は、多くの自治体で自民・公明とともに、「オール与党」の一員として、悪政の共同執行者の立場にたっています。「対立軸」をいうが、対立の実態はない。国民の利益を犠牲にして「政権交代」を追求する。民主党のこの姿勢を、事実にもとづいて的確に批判していくことが大切であります。
二つの全国的選挙戦の勝利をめざして、わが党は、「たしかな野党」の責任を果たしつつ、新しい綱領と日本改革の方針を広く国民に語り、国民の多数の支持と共感をかちとるとりくみを、日常の活動として抜本的に強めます。きたるべき選挙の真の争点は、「与党の過半数割れ」かどうかではなくて、自民党政治を大本から変えるたしかな立場をもつ日本共産党がのびるかどうかにある。このことを、広く訴えてたたかいます。
選挙戦の目標、
連続選挙をどうたたかうか
つぎに選挙戦の目標、連続選挙をどうたたかうかについてのべます。
選挙戦の目標の政治的意義、それを実現する可能性と条件について
大会決定では、二つの全国的選挙戦の目標について、つぎのように確認しています。
参議院選挙は、「比例代表では五議席を『絶対確保議席』として、今度こそ、全党の結束した力で必ず獲得する。比例代表選挙での得票目標は、六百五十万以上(得票率10%以上)とする」「選挙区選挙では、全選挙区に候補者を擁立してたたかい、現職区である東京での議席の絶対確保とともに、二〇〇四年選挙で議席を失った神奈川、埼玉、愛知、京都、大阪、兵庫での議席奪還をめざす」。
いっせい地方選挙については、つぎのようにのべています。「当面する中間地方選挙で確実に勝利をつみかさねながら、……いっせい地方選挙では、『議席占有率』『議案提案権』『空白克服』という三つの目標で必ず前進をかちとる。とくに第四党にとどまっている道府県議、政令市議選において、現有議席の絶対確保と前進、県議空白六県の空白克服を重視する」。
これらの目標は、国政でも、地方政治でも、本格的な議席と得票増の新しい流れをつくりだそうという大志にたった、同時に、全党の奮闘いかんでは達成可能な、リアリズムにたった目標であります。
参議院選挙の目標を達成するなら、わが党は院内交渉会派の条件とされている十名以上の議員団を確立し、発言権を大幅に回復できます。現在、参議院では、わが党の本会議質問は、通常国会の政府四演説と決算の審議の場合に限られるなど、不当な制約を受けていますが、十名以上となれば本会議質問が大きく広がります。不当に排除されている党首討論での発言も保障されます。
比例代表で六百五十万票以上、10%以上という得票目標は、これをやりきるなら国政選挙での新しい上げ潮をつくりだす重要な意味をもつ攻勢的な目標であります。六百五十万票以上の比例票の獲得は、比例代表で五議席を獲得するたしかな保証になるとともに、選挙区で東京の議席を確保し、さらに議席増を実現する土台ともなります。歴史的にみても、戦後二十回の参議院選挙で、旧全国区・比例代表選挙を通して、わが党が六百万を超える得票を得たのは九八年の選挙だけであって、それにつぐ峰をきずくことになります。さらに、つぎの総選挙を展望しても、その本格的前進の土台となります。ちなみに、二〇〇〇年の総選挙では、わが党は比例代表で六百七十二万の得票、得票率11・2%で二十議席を獲得し、十一ブロックすべてに議席を確保しています。今度の参議院選挙の得票目標をやりぬくなら、つぎの総選挙での大幅議席増への道が開かれます。
これらの目標をやりぬくことは、もとより容易なことではありません。マスメディアも含めた“共産党締め出し”の包囲網のもとで、どんな情勢の展開のもとでも自力で「風」をおこす大奮闘があってこそ、手にしうる目標であります。
同時に、政治の“流れの変化”のなかで、力をつくせば目標を達成する条件が存在することも、確信をもってとらえることが大切であります。党大会後の中間地方選挙で、わが党は、一部の失敗はありますが、全体として健闘し、議席占有率は6・7%から7・7%に前進しました。獲得した得票も、衆院比例代表選挙の得票と比べて129%にのばしています。この前進の根底には、地方政治の「オール与党」政治の矛盾とともに、国政で自民党政治がゆきづまり、新しい政治をもとめる国民の切実な声と動きがおこっていることがあげられます。
七月二日、人口五十一万人をかかえる大都市・東大阪の市長選挙で、日本共産党員の長尾候補が、自民・公明の現職市長を破って民主市政を奪還したことは、政治の“流れの変化”を象徴する快挙であります。この勝利は、住民の暮らし犠牲、不公正な同和行政の拡大など市政のゆがみへの批判とともに、選挙のさなかに住民税・国保料の大幅値上げの通知が各世帯にとどけられ、小泉「構造改革」による格差と貧困など国政問題への怒りが沸騰するなかで、「現状を変えてほしい」という声が長尾候補への期待と共感につながった結果であります。
小泉「改革」の五年間によって、「構造改革」路線と国民との矛盾があらゆる分野で噴き出しています。医師会、農協、特定郵便局など、従来、自民党の支持基盤とされてきたところで、大規模な自民党離れの動きがすすんでいます。いま視野を大きく広げ、新しい進路を模索している広大な無党派層、保守層にたいして、思い切って広く働きかけ、党の訴えを届け切るならば、わが党の新たな前進をつくることは可能です。この可能性を現実のものとするために、党と後援会が一体になって、力をつくそうではありませんか。
参議院選挙の勝利を前面にたて、 全党の力を総結集して目標をやりきる
二〇〇七年は、十二年ぶりに、いっせい地方選挙と参議院選挙を連続的にたたかう年となります。連続選挙でどうやって勝利をかちとるか。党大会決定では「連続する選挙で本格的前進をかちとる共通した土台は、参院選はもとより、地方選挙においても、党とその議席の値打ちを太くおしだし、党そのものへの支持を獲得する活動をたたかいの軸にすえることにある」と強調しています。それを大前提としながら、基本的な構えとしてつぎのような諸点が重要になってきます。
まず強調したいのは、全国すべての地域でたたかわれる政治戦は、参議院選挙であるということです。この勝利を前面にたてて、全党の力を総結集して目標をやりきることが大切であるということです。
とくに、そのなかでも比例代表選挙は、全国どこでも必勝区であり、「比例を軸に」の立場を堅持して党そのものへの支持を広げぬき、五議席を「絶対確保議席」として「全国は一つ」の立場で獲得することに、執念を燃やしてとりくみたいと思います。
選挙区選挙では、全選挙区に候補者を擁立して積極的なたたかいを展開します。ここでも比例代表での得票目標を実現することを正面にすえて奮闘するとともに、現職区・回復区では、比例代表での得票目標実現と議席獲得という二重の任務をもって奮闘します。
いっせい地方選挙との関係では、「参院選はいっせい地方選挙がすんでから」という段階論に絶対におちいってはならない。二つの全国的選挙戦は、「比例を軸に」を共通の土台としながら、それぞれの勝利に必要なことを、独自にとりくむ、そして相乗的に推進するという姿勢を、いっかんして堅持することが大切であります。
いっせい地方選挙――激烈な党派間闘争、新しい様相にふさわしい攻勢的たたかいを
つぎに、いっせい地方選挙でありますが、いっせい地方選挙は、参議院選挙との連続選挙となるだけに、どの党も参院選の前哨戦と位置づけており、従来にもまして政党選択を激しく争うたたかいとなることは必至です。ですから、政党間闘争のつばぜりあいに競り勝つ構えを確立してこれにのぞむことが大切です。そのさい、有権者の意識も、地方政治の問題とともに、国政での政治の流れと各党の役割はどうなっているかに強くむけられる。国による地方自治体と地域社会の破壊がすすめられるもとで、国政と地方政治の問題が、一体に問われることになる。ここに留意したとりくみが大切であります。この選挙では、地方政治での争点と党の役割を明確にすることとともに、より広い視野で、「国政をどう変えるか」「日本共産党はどんな改革の方針をもっているのか」「日本共産党はどんな政党か」をおおいに語ってこそ、広い有権者の共感と支持を獲得し、勝利をつかむことができます。
この点で、六月二十五日投票の鳥取県米子市議選において、わが党が議席と得票を後退させた経験から教訓を引き出すことは大切です。後退の原因について、小村県委員長は、「選挙戦の様相は、県議選、参院選にむけて、小泉政治が破たんして住民のなかに政治への怒りが渦巻き噴き出す事態を背景にして、各党派が生き残りをかけて激突する激しい党派間闘争」だったにもかかわらず、わが党の構えが「これまでの選挙の対応の延長線上にとどまった」こと、政策論戦も民主党などが小泉政治の問題点をとりあげて「政治の刷新」を訴えるもとで、わが党は市政問題と一体に国政問題を語ることが不十分だったことを、率直に反省点としてのべています。この教訓は、全党が今後に生かすべき重要な内容だと考えるものです。
そのうえで、いっせい地方選挙には、つぎのような新しい様相が生まれていることを正確にとらえて、攻勢的なたたかいをおこなうことが大切であります。
第一は、前半戦の比重がいっそう大きくなり、たたかいがいっそう激しくなるということであります。前半戦では、全国四十四の道府県議会選挙がおこなわれるとともに、新たに四市が政令市に加わり(新潟市、静岡市、浜松市、堺市)、十五の政令市議選がおこなわれます。道府県議選は、政令市移行、合併などによる定数の変更で、大幅な得票増なしに現有議席がまもれないという選挙区も少なくありません。これらの状況を直視した、攻勢的なたたかいが必要になります。政党間の力関係が直接あらわれる前半戦で前進をかちとることは、後半戦はもとより、参議院選挙の動向にとってもきわめて重要となってきます。
第二は、後半戦がどうなるかという問題です。後半戦は、市町村合併によって、選挙実施数は千六百四十二自治体から七百九十五自治体へと約半分になりますが、これは選挙単位の広域化によるものであって、選挙の対象となる有権者数は、全国合計で四千九百七十七万人から四千五百五十二万人とほとんど変化がなく、大多数の道府県では変わりません。広域化し規模の大きい選挙が増えるもとで、後半戦においても党派間闘争がいっそう激烈なものとなることを念頭におき、党の議席の値打ちを鮮明におしだす論戦をいっそう重視することが大切であります。
第三は、市町村合併という新たな条件のもとで、すべての自治体に党議員をもつ――空白克服がいっそう切実で現実的な課題となっていることであります。この間、中央委員会として、「空白議会克服のための立候補と移住・帰郷をよびかけます」という訴えをだしました。「全国は一つ」の立場で、この大事業をやりとげることを心からよびかけたいと思います。
「支部が主役」の選挙戦で、
必ず勝利をつかもう
二つの全国的選挙戦を勝ち抜く最大のカギは、「支部が主役」の選挙戦にとりくむことです。わが党は、四十万人をこえる党員、二万四千の支部、百数十万の読者、三千四百人の地方議員、二百八十八万人の後援会員をもち、草の根で住民と結びつき、国民の利益をまもるために日常・不断に活動している自前の組織をもつ唯一の党です。この草の根の力を総発揮することが、勝利へのカギであります。
市町村合併によって、市町村議員定数がこの三年間で一万七千五百九十一人削減されました。この動きのなかで、わが党は健闘し、議席占有率をのばしましたが、議員総数は減っています。ただこれを他党と比べてみますと、自民党などは、議員削減がそのままその地域での党組織の解体・消滅につながっています。しかし、わが党は、市町村合併によって議員数が減少したとしても、党支部は自立した組織として奮闘しています。ですから、合併との関係でも、ますます「支部が主役」の選挙戦が重要になってきます。
すべての党支部が、得票目標・支持拡大目標を自主的に決めましょう。現在、得票目標をもっている支部が三割台という状況を一気に打開し、すべての支部が選挙をたたかう目標と構えをしっかりとつくりましょう。二つの政治戦を勝ち抜くのにふさわしい目標を支部がもつうえで、機関の丁寧な援助が不可欠であります。
職場・地域・学園で、「アンケート活動」をはじめ、要求をとらえた運動にとりくみ、支部の職場・地域新聞を発行して有権者と広く結びつき、ハンドマイク宣伝などで党の元気な姿をしめしましょう。すべての支部が、対応する単位後援会を確立し、後援会員を増やし、後援会ニュースを発行し、後援会とともにたたかう態勢をつくりあげましょう。
こうした「支部が主役」の選挙戦を、全国津々浦々、草の根からの大きなうねりにしていくために、すべての支部が、支部主催の演説会、懇談会、小集会を、年内に必ず開き、とりくみを発展させる結節点としていくことをよびかけたいと思います。
日本の進路がかかった来年の二つの全国的選挙戦で、「支部が主役」の選挙戦を縦横に展開し、必ず勝利をつかみとろうではありませんか。
三、「選挙で勝てる、強く大きな党」を
――「支部が主役」の党建設のとりくみ
つぎに「支部が主役」の党建設のとりくみについて報告します。
党大会後の新しい努力を確信に、
「選挙で勝てる、強く大きな党」を
党大会後の探求と努力、党発展の新しい息吹に確信をもって
党大会から半年、「この年を党建設の前進の大きな波をつくる歴史的画期の年」とするために、中央も、地方も、支部も、さまざまな新しい探求・努力をしてきました。
大会決議と綱領の文書を、すべての党員に届け、学習するとりくみをつうじて、党に新鮮な活力が広がりつつあります。「政策と計画」をもった「支部が主役」の党づくりという大会が打ち出した大方針が歓迎され、「この道しかない」と真剣なとりくみをすすめたところでは、どこでも党発展の新しい息吹が生まれています。
中央としても、大会決定にもとづいて、一連の努力をはかってきました。
三月に開催した「特別党学校」は、受講生のみなさんの自覚と気概、真剣さがみなぎる党学校となり、今日の時代にふさわしい職業革命家の集団を系統的につくりあげるとりくみが、重要な第一歩をふみだしました。
四月に開催した「職場問題学習・交流講座」は、中央と都道府県が一体になっておこなった二百七十におよぶ職場支部の調査をふまえ、一歩でも二歩でも職場支部の活動の促進に役立つものにすることを基本においたことが歓迎され、温かい連帯感あふれる会議として、大きな成功をおさめました。
大会決定にもとづく全党のこれらの努力によって、党建設の豊かな発展の条件がつくり出されつつあることに、確信をもつことがまず大切であります。
党の実力をつける仕事に、選挙の投票日からの逆算でとりくもう
同時に、党建設のとりくみの到達点は、大会決定と綱領の全党員への届けは七割、決定・綱領を読了した党員は三割から四割、「政策と計画」をもって自覚的な活動を開始している支部が六割弱程度にとどまっています。党員と読者の拡大は、前進をかちとりつつある党組織も生まれていますが、全党的には、後退傾向を脱して前進に転ずるにはいたっていません。「しんぶん赤旗」読者数の後退の現状を打開することは、機関紙の再発行の保障と、中央・地方の財政基盤の確立という観点からみても、焦眉(しょうび)の課題となっています。
参議院選挙まで一年、いっせい地方選挙まで九カ月の現時点で重要なことは、選挙勝利を党活動の前面にすえ、「選挙で勝てる、強く大きな党」づくりをめざし、この間すすめてきた努力方向をさらに発展させ、加速させることにあります。
選挙に勝とうと思ったら、「強い党」が必要です。すなわち、綱領路線への政治的確信に支えられ、党員みんなが活動に参加し、すべての支部が自覚的に活動する党が必要です。また「大きな党」が必要です。大会決定では、いっせい地方選挙がおこなわれる来年四月までに「五〇万の党」「二〇〇三年総選挙時比三割増の日刊紙と日曜版の読者」を達成することを確認しています。
選挙闘争は、期限が決まったたたかいです。どんな条件のもとでも自らの力で「風」をおこして勝利をつかむために、党の実力をつける仕事に、選挙の投票日からの逆算でとりくみ、全党の知恵と力を結集して何としても成功させなければなりません。
地区委員長から寄せられたアンケートへの回答などをふまえて
そのために何が大切か。この間、中央として、全国すべての地区委員長のみなさんにアンケートをお願いし、党建設の教訓と問題点、悩みを、率直に寄せていただきました。私たちはその全体をつぶさに検討しましたが、アンケートには大会決定にもとづく真剣な努力、献身的な奮闘、そして苦闘がつづられており、たいへん豊かな教訓がふくまれています。アンケートからくみ出した教訓と、全国各地でのとりくみの教訓を、全党の運動をすすめるうえでの指針として返す形で、いくつかの問題を提起したいと思います。
どのようにして大会決定と綱領を身に
つけ、政治と理論に強い党をつくるか
まず、どのようにしてみんなが大会決定と綱領を身につけ、政治と理論に強い党をつくるかという問題です。
全国的な到達は、大会決定と綱領届けで71・3%、大会決議の読了で31・3%、綱領読了で37・3%です。
決定と綱領を届ける活動での前向きの変化を確信に、すべての党員に届けきる
第一に、アンケートで共通して報告されたのは、すべての党員を対象に、決定と綱領を届ける活動で変化が生まれているということであります。
多くの地区委員長から、長期に党活動に参加していなかった同志も、訪問し対話した結果、多くは党を支持する態度は変わっていないこと、何らかの形での協力と参加がかちとられていることに、感動と確信をもったということが、報告されました。
また、このとりくみをつうじて、なぜこういう同志を生み出したのかの反省と自己検討がおこなわれ、こんどこそ「支部が主役」の活動によってみんなが参加する党活動をつくろうという意欲が生まれていることはたいへん重要だと思います。
青森県のある地区委員長は、支部に所属していない党員や長期に連絡がとれなかった党員の訪問をすすめたことについて、こうのべています。「すぐに党費を納めて党活動に参加するところまでいかなくても、どの人も『党を辞める』とはいわない。党の前進を願っているし、心は党とつながっている。多くの場合に党の側に責任がある。一人ひとりをとりもどしていきたい」。
つかんだ教訓と問題点を今後の党活動に生かす立場で総括しながら、すべての党員に届けきる活動をひきつづき強めていきたいと思います。
読了が過半数まですすめば党に変化が起こってくる
決定・綱領の読了では、過半数の党員が読了した地区が二十六地区ありますが、多くの地区が三割程度にとどまっており、これ以上読了をすすめるにはなかなか大きな力が必要です。しかし、読了が過半数まですすめば党に変化がおこるということも共通して報告されました。また、多くの地区でさまざまな形で綱領学習会がとりくまれ、それが読了を促進し、党を活性化する力となっている経験が報告されましたが、これも大切だと思います。
福島県のある地区委員長は、決定読了はいつも三割台だったが、地区委員長を先頭にすべての党員が参加する党づくりに執念をもってとりくみ、決定・綱領届けを94・6%まで前進させ、綱領の読了を57・0%まで前進させるなかで、三つの変化がおこってきたと報告しています。一つは、支部会議がこれまでの五割から、六割、七割の支部で開かれるようになり、支部の綱領学習会が広がっていること、二つは、要求実現の活動にふみだす支部が広がってきたこと、三つは、一人ひとりの党員の初心を大切にする気風が広がってきたことであります。党のあらゆる活力の根本的源泉は、綱領にあることを生きいきとしめす実例として、たいへん印象深くこの報告を読みました。
読了をどこまで広げられるかは、あらゆる党活動をすすめる自覚的な力をどれだけ広げるかに直結する課題であり、ひきつづき努力をはかりたいと思います。
「政策と計画」をもった「支部が主役」の
活動をどうやって前進させるか
つぎに「政策と計画」をもった「支部が主役」の活動をどうやって前進させるかという問題です。
アンケートでは、党大会の提起が、多くの支部に歓迎され、活発な議論がおこなわれ、支部が自覚的に「政策と計画」をつくり、実践に足をふみだしているところでは、大きな変化がおこっていることが報告されました。同時に、これを広げていくうえでのさまざまな悩みも、率直に語られました。「政策と計画」をもった支部がそれを日常の指針として前進をかちとり、まだもってない支部が自らつくって活動するうえで、何が大切か。地区委員長のアンケートや、全国からの聞き取りで、私たちが重要だと感じた点を、順不同で七点のべたいと思います。
結びつきと要求にもとづく活動を重視し、それを励ます活動にとりくむ
第一に、すすんでいるところの経験は、例外なく、国民との日常的結びつきと要求にもとづく活動を重視し、そこに光をあて、それを励ますとりくみを地区委員会としてもおこなっています。支部と党員が、国民の要求実現にとりくみ、国民の利益をまもったと実感できるとき、最大の喜びであり、活力の源泉となることが、共通して報告されています。
大阪のある地区委員長からは、ある自治体で、全世帯対象の「市民アンケート」活動にとりくみ、その結果を、支部が「政策と計画」をつくる参考に提供した経験が報告されました。アンケート活動は、住民から歓迎され、支部からも「要求が切実で、何とかしなければと自覚を新たにした」との声が聞かれるようになり、市内のすべての支部が得票目標と「政策と計画」をきめて活動にとりくむ状況をつくりだしています。
北海道のある地区委員長からは、「この地域と職場をどうするか」という「政策」の討議が活発におこなわれ、「食の安全と農業問題を考える勉強会」「市政懇談会」などが多面的に開かれるなかで、85%の支部が「政策と計画」をもち、党勢拡大の前進にもつながってきているとの報告が寄せられました。
支部の自発性・自主性を大切にすることの重要性
第二は、支部の自発性・自主性を大切にするということであります。多くのアンケートで、地区委員会の姿勢として、たとえ最初は不十分なものでも、支部が自ら考え、決めたことを大切にする、支部がつくった「政策と計画」はたとえ一行のものであっても大切にする、いくつの支部が「政策と計画」をつくったかの数だけではなくて、その中身をよくつかみ、その実現のために一緒になって努力することが重要であると報告されています。
また、支部が自主的活動をすすめるうえで、支部会議を定期的に開くことをはじめとして「党生活確立の三原則」を定着させ、支部長だけでなく複数の支部指導部を確立するための援助がカギになっていることも共通して報告されました。支部のとりくみを励ましていくうえで、かなりの地区委員会で開かれている支部交流会も、きわめて大切であると思います。
職場支部が集中している東京のある地区委員長は、「職場講座」で機関の努力方向の第一に提起された「苦労に心を寄せ、実情を聞き、謙虚に学ぶ」という精神で、地区委員が担当する支部が決めた「政策と計画」の内容をよくつかんで支部に援助に入り、その実現のためにどうするかをともに考える活動にとりくんでいる。どんな内容でも、決めたことを実践することで、支部は少しずつ自信をもつようになっていく。たとえ一つの項目から始まっても実践し、補強・充実させ、コツコツとすすめていくことで支部の活動が総合的な活動へと発展してきていると報告していますが、これもたいへん教訓的な内容でありました。
「即効性」をもとめず、「いまの努力が必ず実を結ぶ」という確信をもって
第三は、当面の課題に、すぐに役立つかどうかという「即効性」を求めるのでなく、支部がそのリズムにそくして内発的な力を発揮して発展していくことを育てる、粘り強い努力が必要だということであります。
宮城県のある地区委員長からは、つぎのような教訓的な報告が寄せられました。「地区委員会総会で議論になったが、自主的・自覚的支部づくりの努力で、即効的に変化・結果だけをもとめるのでなく、いまの努力が、必ず実を結ぶことに確信を持つことが大事だ――この観点、確信が地区党にとっては前進のカギになると思う。大会決定をうけて、『政策と計画』にもとづく支部活動への指導にとりくんでみての感想は、『この道しかない』が実感だ。時間はかかるが、『粘り強く』この道から離れないで努力しようと思う」。この地区では、四月も五月も六月も、月末の奮闘で読者を増勢にしてきていますけれども、参加党員が増え、成果支部も若干であるが増えているとの報告でした。
「この道しかない」「いまの努力が必ず実を結ぶ」――この確信をもって、がんばりぬくことの大切さを教えてくれる報告でありました。
党勢拡大と「支部が主役」の党づくりの統一的な追求
第四は、党勢拡大と「支部が主役」の党づくりの統一的な追求であります。党勢拡大を前進させるためには独自追求の執念が必要です。同時に、それは「支部が主役」の党づくりと結びついてこそ、安定的で持続的な発展となります。
愛知県のある地区は、読者拡大で党大会後、五カ月連続前進していますが、地区委員長は、つぎのように報告しています。「三割増達成のカギは、どれだけ多くの党員が拡大行動にたちあがるかにかかっている。それには大会決定・綱領の学習が必要であり、支部の自覚的活動をつくりだすことだ。その要は『政策と計画』にある。そこを土台にしながら、読者拡大にたちあがる支部と党員を増やすための独自の努力・系統的とりくみがたえず必要になる。毎月読者拡大にとりくんでいる党員は、4%から5%だが、これが一割までいけば、前回選挙時回復は一カ月でできる」。
その通りだと思います。われわれの党勢拡大運動の弱点がどこにあるかといえば、結局、これが月単位でみて三割程度の支部、数%の党員に担われる活動にとどまっているというところにあるわけです。ここが広がれば、必ず飛躍がおこります。そのためにも「政策と計画」にもとづく自覚的な党づくりは不可欠であります。
党員拡大も「支部が主役」でとりくんでこそ、安定的に前進する
第五は、党員拡大も、「支部が主役」が大切だということであります。
一部に、新入党員が支部活動に加わっていないことから「入れても力になるのか」「成長させていくことができるのか」という消極論も生まれていますが、ここには考えるべき大きな問題があります。
アンケートを見ても、党員拡大を持続的に前進させているところでは、広く入党をよびかけながら、党規約にもとづく党員の資格をはっきりと話して決意してもらっています。また新入党員を迎えることと一体に、自覚的な支部づくりを前進させる努力をはかっています。
京都のある地区委員会では、この一年余で百人をこえる新入党者を迎えていますが、ほとんどの人が党費をきちんと納め、党生活に参加しています。ここでは入党のさいに「四つの大切」(「しんぶん赤旗」を読む、支部会議に参加する、学習につとめ活動に参加する、党費を納める)をきちんと話し、あいまいにせずに納得してから決意してもらっています。新入党員にたいしては、ただちに訪問し、贈呈用の資料を届け、人間的に結びつき、歓迎会に案内し、新入党員学習を必ずおこない、その月から党費を納めてもらっています。
党大会後に、四十人をこえる新入党員を迎えている東京のある地区委員長からの報告では、「党員を迎えられる支部になってこそ本物」という立場で、「政策と計画」にもとづいた自覚的支部づくりと一体に党員拡大にとりくんでいる、とのことでした。すなわち、要求活動に活発にとりくむなど支部活動の改善によって新入党員も無理なく活動に参加でき、逆に、新入党員を迎えることによって支部活動の弱点がおのずと改善される。支部活動の改善と党員拡大がいわば相乗的に発展する。そういう努力のなかで、「わが支部にもっと仲間を迎えたい」という気持ちが広がり、入党対象者を見る目線も広くなり、持続的拡大の力となっているとの報告でした。
「しんぶん赤旗」中心の党活動、「支部が主役」の配達・集金活動について
第六は、「支部が主役」で「しんぶん赤旗」中心の党活動を強めることが、党活動全体を活力あるものとする不可欠のカギとなっているということであります。
とくに、三月の全国機関紙部長会議で提起した「支部が主役」の配達・集金体制の確立の問題は、単なる実務の問題ではありません。支部が配達・集金に責任を負っている地域や職場では、読者と結びつき、読者の要求が日常的につかまれ、地域や職場の状況がよくみえるようになり、減紙も少なく、そして読者を増やす意欲も高まってきています。この努力と結びつけて、三割増をめざし、読者拡大を安定的な軌道にのせる努力をはかりたいと思います。
岩手県のある地区委員会からは、これまで地区の「しんぶん赤旗」の配達・集金は、支部とは別体系の体制のなかで、議員と地区役員の献身的な活動で支えられてきた。しかしそのことから過重負担、そして未集金が大量に生まれ、滞納額も膨れ上がった。そこで「長年の惰性を本気で打ち破らなければ地区党組織の本格的前進は開けない」と討議を重ねるなかで、「地区党を土台から作り直す覚悟で」と支部に足を運び、「支部が主役」の配達・集金体制をきずく努力をおこなっているとの報告がありました。ここでは、出発点は支部とは別体系のところから出発したわけですが、だいたい三分の一くらいのところまで「支部が主役」の配達・集金体制を構築しているという報告でありました。
同様の努力が、全国各地で開始されていることに敬意を申し上げたいと思います。こうした努力は、惰性を突破する勇気と、不屈の粘り強いとりくみが必要ですが、この改善なくして読者拡大の安定的な発展はありえません。
「しんぶん赤旗」は、この七月に一九二八年の創刊いらい通算二万号を迎えます。「しんぶん赤旗」が日本社会の変革の力として国民的新聞に成長するように全党の努力をよびかけるとともに、よりよい新聞にするためのいっそうの努力を中央としてもはかる決意であります。
すべての職場支部に「講座」の成果をつたえ、前進をかちとろう
第七に、「職場問題学習・交流講座」は、困難を抱えている支部も含めて、職場支部の前進に大きな励ましとなっています。「まずあいさつからといわれると気持ちが楽になる」「目の前が明るくなった感じだ」「うちの職場のことを言われているようだ」「わが支部でも『政策と計画』をつくって、自覚的に活動する支部になろう」といったうれしい受け止めが、全国各地から寄せられています。「講座」を力に、足をふみだし、成果主義賃金や非正規雇用労働者の問題にとりくみながら、要求運動で実際に成果をあげ、入党者を迎えるという変化もはじまっています。
多くの地区委員長のアンケートでも「講座」が積極的に歓迎され、「講座」が提起した「党機関の指導と援助の三つの基本姿勢」を正面から受け止め、機関活動の刷新・改善がはじまっていることが報告されました。職場支部援助委員会の確立は、都道府県で四十二、地区委員会で百二十以上となっています。「いままでは、職場支部への連絡は、党費と新聞代をもらうときだけだった。職場支部を訪問して職場の様子を聞けて本当によかった。今後は地区機関として援助できる力を身につけたい」という決意が、少なくない地区委員長から寄せられたことは心強いことであります。
職場支部で「講座」を討議しているのは、二割から四割程度です。ビデオやパンフレットの活用に加えて、発言を載せた『前衛』八月臨時増刊号も活用しながら、すべての職場支部にこの「講座」の成果をつたえ、力をあわせてこの分野での前進をかちとることを、心から訴えるものであります。
地区委員会活動と体制の
改善・強化について
こうした「支部が主役」の党づくりをすすめていくうえで、地区委員会の活動と体制の改善・強化は、不可欠であります。
地区委員長のアンケートでは、すすんだ経験とともに、支部への指導・援助が十分にできない、なかなかうまくゆかない、という悩みも率直に寄せられました。それらにも可能なかぎり答えながら、地区委員会活動の改善・強化のために大切だと考えることを、これも順不同で五点ほどのべたいと思います。
「総合計画」を大切にして、実践のための系統的努力をはかる
第一は、地区委員会自身が、自ら決めた「総合計画」を大切にして、つねにそこに立ち返り、実践のために系統的努力をはかることであります。
地区委員会は、(1)その地域で日本共産党を代表して活動し、地方政治とその地域の国民の利益をまもる活動に責任を負うと同時に、(2)支部活動を直接指導・援助するという、二つの重要な任務をになっています。
アンケートをみて、ここでまず強調したいのは、この二つの任務のうち、その地方・地域で日本共産党を代表しての政治活動であります。「そこまで手が回らない」という気分もありますが、視野が党内だけにしか向かなくなると、支部の指導もうまくいかなくなることにもなります。ここで積極的な役割を果たしている地区委員会は、地区委員会でしか働きかけられない幅広い無党派層や保守層との共同を広げ、支部や党員をおおいに元気にさせ、励ます活動となっています。
北海道の農村地域で活動するある地区委員会では、農業問題のシンポジウムや「食と農の集い」にとりくみ、ここに町長、町議会議長、農協役員、農業委員など広範な人々が参加しています。「九条の会」の一翼をにない、幅広い人々を結集しています。地区委員長は、「地区委員長としての何よりの喜びは、地域の無党派層との共同と相互理解が広がり、それが支部の励みとなり喜びとなることです」と報告しています。
政治的・理論的力量をどのように高めるか――機関学習について
第二に、地区委員会が支部を援助するうえで、自らの政治的・理論的力量をどのようにして高めていったらいいのかという悩みが多く寄せられました。この点で、地区の常任委員会や総会で、半日や一日などの時間をしっかりとって、綱領や大会決定、科学的社会主義の理論を深く学ぶ努力をおこなっている地区の経験は、たいへん大切であると思います。
党機関の仕事は多面的です。たいへん忙しい。そのうえ、常勤常任委員や専従者が減って、一人や二人などの地区委員会などでは、「必要性は理解できるが時間がない」「落ち着いて学習などしていられない」という声もあります。しかし、日常の忙しさに埋没してしまって、ここがおろそかにされたら、支部と党員を政治的・理論的に結集することはできなくなってしまいます。機関の学習は、「時間があったらとりくむ」でなく、「第一義的課題として優先的にとりくむ」という立場が大切であります。
一九八九年の第十八回党大会六中総決定では、中間機関の任務として、「毎日一時間、週に半日近くは機関学習をする作風をつくることや、地区委員会総会でも十分に時間をとって決定などの学習や討議を活発におこなうことなど、機関の理論水準の向上と思想的・政治的一致による団結の強化を、日常の機関運営の根本にすえなければならない」という提起をしています。これにもとづく努力を続けている地区委員会も少なくありませんが、この決定を、この総会でも再確認し、全党がとりくむようにしたいと思います。
十月には、講師資格試験が予定されていますが、多くの同志のみなさんが挑戦し、講師活動に積極的にとりくむことをよびかけたいと思います。
地区体制の強化のための努力――ベテラン党員の結集、若手幹部の系統的養成
第三に、地区体制の強化のためにひきつづく努力をすすめたいと思います。そのさい常任委員会などの強化はもちろんですが、それにとどめず、何があっても中断してはならない専門部の活動――財政、学習・教育、組織、機関紙など専門部の活動に参加してもらう努力も大切であります。
この間、「しんぶん赤旗」の「別刷り」で、岩手・両磐地区、沖縄・北部地区、青森・下北地区、栃木・北部地区、神奈川・西相地区、兵庫・西宮芦屋地区、東京・武蔵野三鷹地区の経験をあいついで紹介しました。職場を定年退職して年金生活に入ったベテラン党員の結集をはかり、それぞれの困難に正面から向き合う努力を通じて、党機関が活性化し、「支部が主役」の党づくりへの真剣な探求がはじまっているドラマは、熱い感動と共感を広げています。
地区委員長のアンケートを読みますと、大会の提起を受けて、ほとんどの地区が、何らかの形で、非常勤の幹部を結集して体制の強化をはかっています。わが党には大きな潜在的な力があるということを、あらためて痛感いたします。ここに確信をもってさらに努力をはかりたいと思います。
そのさいベテラン党員の結集とともに、若手幹部の結集と系統的養成の努力を、中間機関としても積極的におこなうことを強調したいと思います。中央の「特別党学校」とともに、二十二都道府県で若手幹部の系統的養成の具体的とりくみが始まっていますが、これはたいへん大切です。すべての都道府県でとりくむことを訴えるものです。
機関財政の困難をどうやって打開するか
第四に、地区委員長のアンケートでは、機関の財政活動で困難をかかえ、その打開のために苦闘しているという報告が多数寄せられました。同時に、財政問題の打開は、特別の道があるわけではない、「財政活動の四原則」(党費、機関紙誌代、募金、節約)にたった努力を粘り強くつづける以外にない、またそれが大道だ、ということも多くの報告で共通して寄せられ、こうした立場から財政再建の努力をすすめている経験も報告されました。
ここで大切なことは、「財政四原則」のなかでも根幹となるのは党費だということです。そして党費納入を大切にするということは、一人ひとりの党員を大切にするということであり、党員が自覚的に党を支える力をつくり出すということであり、党の活力を高める土台となっているということを強調したいのであります。
財政活動とは、直接は「お金」の問題ですが、根本は「人」の問題であります。それは財政においても国民と草の根で結びつき、草の根から支えられた党をつくる仕事です。財政再建で前進しているところがこうした見地で奮闘していることは、たいへん教訓的であります。
専従活動家の給与が、遅配・欠配になっている状況が少なくない地区から報告されましたが、この事態は何としても打開をはからねばなりません。専従活動家の存在と献身的な活動は、全党の宝ともいうべきものであり、その活動と生活はすべての支部と党員で支えるという気風をつくりあげていくことを、心からよびかけたいと思います。
党大会が「衆議院小選挙区選挙供託金支援基金」の設置を決定して以降、党員の「基金」への拠出が広がり、全国で月十五万口を超えています。毎月の党員の拠出が二十万口を超えて広がっていくことが必要であります。「基金」への協力に心から感謝するとともに、さらに多くの党員のみなさんの協力とお力添えをお願いするものです。
常任活動家の健康と休養の問題について
第五は、常任活動家の健康と休養の問題です。少なくない地区委員長のアンケートで、常任活動家が疲労の蓄積から身体や心の健康を壊しているという事態が報告されましたが、これはたいへんに胸の痛む事態であります。
常任活動家は、その一人ひとりが、日本革命の事業のかけがえのない担い手であり、短期の視野だけでなく、長期の視野で、元気で健康に活動することがもとめられます。全党がそのことに心を砕くことは、一人ひとりの人間の自由と全面的発達を原理とする社会をめざす党のあり方にもかかわる問題であります。
すべての常任活動家が、週一回の休みをとるようにします。定期的な健康診断を受け、休養と学習、家族とのだんらんや地域の人々との交流、文化的営みなどにふれる時を過ごし、肉体的にも精神的にも健康で機関活動を長く続けられるようにするための努力を、お互いにはかりたいと思います。そのためにも、党中央をふくめ、機関活動をいっそう科学的で合理的なものにするための努力を強めたいと思います。
以上、五つの点をのべましたが、地区委員会が、それぞれの地域の政治変革と、支部指導に責任を負う機関として、「日本を、わが地域をこう変えたい」との大志をもち、活動を改善・発展させることは、「支部が主役」の党づくりを全党に定着・発展させるうえで、決定的なカギとなっています。そのためにお互いに知恵と力をつくそうではありませんか。
選挙戦勝利を正面にすえ、「支部が主役」
の党づくりの本格的前進をめざす総会に
わが党は、この七月で党創立八十四周年を迎えます。この中央委員会総会が、激動の情勢の展開と政治の“流れの変化”、そのなかでの日本共産党の値打ちに全党が確信をもち、来年の二つの全国的政治戦の勝利にむけた構えを確立し、「支部が主役」の党づくりの本格的な前進をめざす総会として、実りある成果をおさめるために、中央役員のみなさんの積極的討論をお願いして、報告を終わります。