2006年7月8日(土)「しんぶん赤旗」
主張
「骨太」方針
格差と貧困広げる逆立ち改革
小泉内閣が二〇〇六年版の「骨太方針」を決めました。
今回の骨太方針が主眼としているのは「歳出・歳入一体改革」です。
社会保障のいっそうの改悪、消費税の増税など、今後十年間にわたって国民に「痛み」を押し付け続ける方針を掲げています。
壊した「聖域」は
骨太方針は小泉「改革」が旗印にしている「聖域なき構造改革」の実行計画です。
不良債権の強行処理、不安定雇用の規制緩和、大企業減税と庶民増税、社会保障改悪、マネーゲーム奨励のための減税と規制緩和―。
小泉内閣が過去五回の骨太方針で具体化してきた経済政策は、大企業・大銀行に空前の利益をもたらす一方、社会的格差と貧困を大きく広げました。ライブドア・村上ファンド事件に象徴されるカジノ資本主義が、「通貨の番人」である日銀総裁さえ巻き込むほど横行し、腐敗の底深さを示しています。
いま、負担が数倍から十数倍にもなる住民税が、国民健康保険料や介護保険料の値上がりにも連動して、多くの高齢者を襲っています。この大もとになった年金・高齢者課税の強化も、〇二年の骨太方針に明記され、実行に移された計画です。
「聖域なき構造改革」が破壊の対象にしている「聖域」とは、憲法が保障している生存権と額に汗して働く庶民のくらしであり、最低限の経済ルールとモラルです。
財政赤字も増えました。小泉内閣は歳出では軍事費と大型公共事業、歳入では大企業・高額所得者とマネーゲームを聖域にし、新たな借金を百七十兆円も増やしています。
くらしと経済、財政を立て直すためには、こうしたやり方を根本から転換することが切実に求められています。
〇六骨太方針が今後五年間の歳出削減の第一にあげているのは、生活保護の母子加算廃止や失業給付の国庫負担廃止、介護・医療の負担増など、社会保障の抜本改悪です。悪化した庶民のくらしに追い打ちをかける無慈悲な政策です。「増税額を出来る限り小さくする」ためには仕方がないと説明していますが、福祉改悪は国民の自己負担を増やします。
公共投資は三・九兆―五・六兆円削減するとしていますが、これもごまかしです。今後五年間、公共投資を毎年3%ずつ増やし続ける前提で膨らませた数字を基準に置き、削減幅を大きく見せかけています。
こうした公共投資の数字の立て方には経済財政諮問会議の中でも異論が出ていました。「大盤振る舞いした数字を仮定して、そこから歳出削減を考えるという議論はよくわからない」(竹中総務相)。竹中大臣は結局、賛成に回りましたが、国民が納得できるはずはありません。
大企業に応分の負担を
歳入では消費税の増税以外に選択肢がないかのように描いています。
財務省の調査によると、日本の法人所得税と社会保険料の企業負担の割合は、フランス、イタリアの二分の一から三分の一の水準にとどまっています。大企業に、せめて欧州並みの応分の負担を要求するのは当然です。高額所得者を優遇する税制、マネーゲームを応援する税制を改めることも必要です。国民を欺く説明はやめるべきです。
〇六骨太方針は「新たな挑戦の十年」だとうたっています。しかしその実体は、噴出している「構造改革」の矛盾をいっそう深刻にするだけであり、何ら改革に値しません。