2006年7月8日(土)「しんぶん赤旗」
トンネルじん肺 国に責任
東京地裁賠償命令 規制・監督怠る
公共事業のトンネル工事にたずさわった元労働者が国の責任を問い、全国十一地裁でおこしたトンネルじん肺根絶訴訟で、東京地裁(芝田俊文裁判長)は七日、規制・監督権限を行使しなかったのは「著しく合理性を欠き違法」と、国の怠慢を断罪する判決を言い渡しました。
じん肺をめぐる国の責任については、炭鉱労働者がおこした筑豊じん肺訴訟最高裁判決(二〇〇四年四月)で賠償が認められていますが、トンネルじん肺訴訟で国の責任を認めたのは初めて。炭鉱じん肺につづき、トンネル工事でも断罪されたことで、国のじん肺対策の強化が迫られています。
訴えていたのは、国発注のトンネル建設現場で働いていた十九道府県の四十九人。
芝田裁判長は、一九八六年末ごろまでに国は粉じん測定や送気マスク着用などを義務付ける省令制定などの措置を「新たに講ずべき義務が生じたのに怠った」と批判。八六年末以降にトンネル建設作業にあたっていた四十四人に総額六千九百三十万円の賠償を命じました。五人の原告は、八六年末以降はじん肺になるほどの粉じんにさらされていないとして、請求が棄却されました。
判決は、筑豊じん肺訴訟判決を踏襲し「規制権限が適切に行使されていれば、じん肺被害の発生、拡大を相当程度防止することができた」と指摘。賠償請求権の時効について、国の責任を認めた筑豊じん肺訴訟の福岡高裁判決に触れ、「この判決が広く報道された時点で国への賠償請求が可能になった」と、請求権消滅の国の主張を退けました。
トンネルじん肺根絶訴訟 新幹線・高速道路などのトンネル工事に従事した元労働者が、発注者の国、ゼネコンに損害賠償を求めた訴訟。二○○一―〇三年にはゼネコン側と賠償で合意し、○二年以降、全国十一地裁で国の責任を問う国賠訴訟を起こしました。原告数は約九百六十人。十三日には熊本地裁で判決が言い渡されます。
じん肺は粉じんが、肺組織に沈着し、呼吸困難や体力消耗などの症状を伴う治療が困難な職業病。毎年新たに千人も労災認定を受けています。