2006年7月7日(金)「しんぶん赤旗」
障害者の施設利用
「断念」「検討中」215人
自立支援法 応益負担1割が影響
共産党国会議員団調査
日本共産党国会議員団「障害者の全面参加と平等推進委員会」が行った障害者自立支援法実施による施設への影響調査で、同法施行後二カ月でサービス利用を「断念」または「(断念を)検討中」の障害者が全国で少なくとも二百十五人いたことが六日、分かりました。また、報酬単価の改定や補助金削減の影響を受ける施設では、九割近くが同法施行前の三月と施行後の四月を比べ「減収」になったと回答しました。
同調査は、五月中旬に二百三十の身体・知的・精神障害者の入所・通所施設、グループホームを中心にアンケート用紙を郵送。そのほか、党地方議員が直接施設に訪問して聞き取りを行いました。六月七日の調査結果発表後も回答が相次いで寄せられ、最終的に四十都道府県二百五十六施設から回答を得ました。施設を利用する障害者は、アンケートに無記入だった分を除き八千八百五十人です。
同法では、障害者に原則一割の応益負担を新たに導入しました。障害者からは、障害が重いほど必要なサービスは多くなりますが、定率負担ではサービスを利用した分、負担が増えるため、「逆進性が強い」などの批判が出ています。障害が重いほど、一般就労はできず収入は限られます。
調査によると、施設のサービス利用を「断念」した障害者は七十八人、「(断念を)検討中」は百三十七人でした。
利用者負担増額は、これまで無料だった人が、身体障害者通所施設の場合、一万円未満が29・6%、二万円未満が51・8%、三万円未満が14・6%、三万円以上が3・9%となっています。
施設関係者 悲痛な声 アンケートから
自立とは程遠い道
生きていく場ない
「自立支援法は、何十年もかかって障害のある人にやさしい世の中になりつつあった日本の中で、障害者と家族をどーんとおとしめる政策だと思います」――アンケートの自由記入欄には、施設関係者が悲痛な声を寄せています。
通所する四十人全員が負担増、うち三十二人が月二万円以上という東京・江東区の知的障害者授産施設は「いろんな刺激を受け、たくさんの体験を重ね、可能性の芽を咲かせようとしているのに自立とは程遠い阻害された道を選ばなくてはならない人たちがどんなに増えていくのだろう」と。
原則一割の応益負担に批判が。「諸悪の根源は応益負担制度といえます。サービス利用の抑制につながる面だけでなく、利用者家族と施設の間に分断を持ち込み、本来社会福祉が果たすべき役割から遠いところへ行ってしまいかねません」(東京都練馬区・知的障害者授産施設)
施設・事業にたいする報酬単価が四月から引き下げられ、支払い方式が月額制から日額制に変更された影響も深刻です。
「障害のある人たちは、体調の維持もあり毎日通所することが難しい人がたくさんいます。日払い方式では施設運営が成り立ちません」(東京都昭島市・知的障害者授産施設)
「施設の収入減対策として、職員の労働条件の低下(賃金カットや休日労働の増加等)は避けられそうにない。優秀な専門家が活躍する場がなくなっていく傾向があり、福祉施設としても大きな損害」(愛媛県宇和島市・通所授産施設)
サービス支給決定の際「勘案事項の一つ」とされている「障害程度区分」のあり方が、障害者の特性に見合っていないとの指摘もあります。
「判定基準が知的障害者に合っていない。今まで児相(児童相談所)などの判定には、IQや社会適応能力についてもきちんと判断されていたがなんだったのか」(札幌市・知的障害者通所授産施設)
「どんなに重度の知的障害者であっても軽く判定されてしまい、知的障害者が生きていく場所が無くなってしまう」(東京都町田市・知的障害者入所更生施設)