2006年7月5日(水)「しんぶん赤旗」

教育基本法改悪 民主党の態度

「愛国心」盛り込み教育勅語まで礼賛


 教育基本法改悪法案は先の通常国会で、政府案と同時に民主党が提出した対案も継続審議になりました。しかし日本教育法学会が「政府案はもとより、民主党対案についても、その速やかな廃案を強く求める」と声明を発表したように、民主党案は多くの問題をはらんでいます。秋の臨時国会での成立をねらう自民党は民主党に対して両案をふまえた「共同修正」を呼びかけており、こうした動きにも警戒が必要です。


 民主党案(日本国教育基本法案)は前文で「日本を愛する心を涵養(かんよう)」することを掲げています。政府案が第二条で「我が国と郷土を愛する」態度を盛り込んでいるのと同様です。

 さらに、民主党案は教育行政の条項で、現行法一〇条にある「教育は、不当な支配に服することなく」の文言を削りました。文言の多少の違いはありますが、「教育内容に対する国家的介入を無制限にする点では、政府案とうり二つです」(志位和夫委員長)。

 また宗教教育について、民主党案は「宗教的感性の涵養」を盛り込み、政府案以上に踏み込んでいます。

 右翼改憲団体「日本会議」は政府案に対し、(1)「愛国心」の明記(2)「宗教的情操」の涵養の明記(3)「不当な支配に服することなく」の削除―の三点の修正を求めています。この要望をすべて満たしているのが民主党案です。

首相もほめた

 先の国会審議では、小泉純一郎首相が民主党案について、前文を読み上げ、「なかなかよくできている」とほめそやしました(五月二十四日)。安倍晋三官房長官も前文について、「これはなかなか琴線にふれることもあるかもしれない」と発言。「わが党の法案であったとしても、あまり大きな違和感はない」と述べました(六月八日)。

 この対案に示された民主党の右翼的体質を裏付けたのが、衆院教育基本法特別委員会での同党議員の発言です。山口壮議員は「民主党の案に『日本を愛する心』を入れたのは、まさに日本が日本であり続けること、国体の護持に、ある意味でつながっていく」(五月二十六日)と発言。戦前の絶対主義的天皇制を意味する「国体」が民主党案につながっているとアピールしました。

 大畠章宏議員は教育勅語の現代語訳を配布し、「今、日本の社会を見るとこういう基本的な考え方がどこか薄れはじめている」と質問。安倍官房長官から「(教育勅語は)大変すばらしい理念が書いてある」という答弁を引き出しました。(六月二日)

現行法を敵視

 鷲尾英一郎議員は「日本国憲法も現行の教育基本法も、結局は敗戦の混乱と占領による圧力のもとで成立した。やはり歴史の浅いアメリカという国の国家観とか個人観が充満している」と、現行の基本法を敵視する立場を展開しました。(五月三十一日)

 民主党案の作成の中心だったのが、同党の西岡武夫元文相です。参院議員である西岡氏は、衆院教基法特別委員会に毎回傍聴に現れ、審議を見守っていました。

 西岡氏は森喜朗前首相とともに「教育基本法改正促進委員会」という同法の抜本的改悪をめざす議員連盟の最高顧問を務めています。教育基本法改正促進委員会は二〇〇四年二月、右翼改憲団体の日本会議と日本会議国会議員懇談会との合同役員総会で設立されました。

 衆院議員二百四十八人、参院議員百三十人が参加し、民主党からも四十人以上が名を連ねています。

 衆院教基法特別委員会の自民・民主党のメンバーには同議員連盟参加者が多くいます。民主党では、牧義夫議員が同議員連盟の理事、笠浩史議員が事務局次長などとなっています。

共同修正狙う

 特別委員会では、同議員連盟について次のようなやりとりがありました。(五月二十六日)

 自民・岩屋毅議員 私はそこの事務局長をおおせつかっておりまして…自民党はもちろん民主党にも国民新党にもたくさん入っていただいています。

 民主・藤村修議員 岩屋委員の教育基本法改正促進委員会における日ごろの活動に敬意を表します。

 また、同じ日に次のようなやりとりも。

 民主・牧義夫議員 有村先生も役員を務めているわけで…私も実は入っております…まだまだ同志がいっぱい自民党内にもいるわけです。

 有村治子政務官(自民) 私も、日本会議はじめ議連で一語一句もんできた一員です。

 教育基本法の改悪をめざす勢力が政府・自民党と民主党に分かれてエールを交換し合っているのです。

 この議員連盟の母体である日本会議は機関紙「日本の息吹」(〇六年特別号)で、「民主党の『日本国教育基本法案』には、『愛国心』や『宗教的感性』の涵養などの内容が明記してあり、今後は、臨時国会以降の審議の中でこれらの法案を参考に政府案がよりよい内容に修正されるよう…」と述べています。自民・民主の「共同修正」による教育基本法改悪の実現をねらうものです。

現行教育基本法と政府案、民主党案の比較
 現行法政府案民主党案
愛国心規定なし 伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛するとともに、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと(第2条) 日本を愛する心を涵養し、祖先を敬い、子孫に想いをいたし、伝統、文化、芸術を尊び、学術の振興に努め、他国や他文化を理解し、新たな文明の創造を希求する(前文)
宗教 宗教に関する寛容の態度及び宗教の社会生活における地位は、教育上これを尊重しなければならない(第9条) 宗教に関する寛容の態度、宗教に関する一般的な教養及び宗教の社会生活における地位は、教育上尊重されなければならない(第15条) 宗教的感性の涵養及び宗教に関する寛容の態度を養うことは、教育上尊重されなければならない(第16条)
不当な支配 教育は、不当な支配に服することなく、国民全体に対し直接に責任を負つて行われるべきものである(第10条) 教育は、不当な支配に服することなく、この法律及び他の法律の定めるところにより行われるべきものであり(第16条) 教育行政は、民主的な運営を旨として行われなければならない(第18条)

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