2006年7月4日(火)「しんぶん赤旗」
西日本本社前で抗議行動
義母の介助いるのにNTTが遠隔地配転
「NTTは人権侵害をやめて、安全・安心の情報通信を守れ」―。どんよりとした曇り空を突き破るような唱和が響きました。NTT労働者でつくる通信産業労働組合(全労連加盟)は三日、大阪市中央区のNTT西日本本社前で、NTTがすすめる新たな企業再編とリストラは許さないと座り込みや集会と総行動を終日くり広げました。(名越正治)
NTTは、二〇〇二年五月に十一万人にも及ぶ大量の人減らしを強行しました。電話の設置や修理・保守といった本来の仕事を地域子会社へ丸投げし、五十歳以上の労働者を退職させて賃金三割カットで再雇用を押しつけました。その一方で、退職・再雇用を拒否してNTTに残った労働者には、介護や養育など家族的責任を負っていても、問答無用とばかりに遠隔地へ配転してきました。
今回、「新たな業務運営体制の見直し」と称して通信業務のすべてを地域子会社に全面委託し、「完全子会社化」する計画です。災害が起きたときへの対応もNTTとして責任を果たさなくなるなど、通信の公共性を放棄しようとしています。
30人に新命令
これに伴って、NTT西日本は六月下旬、三十人の労働者に新たな遠隔地配転と長時間通勤を命令してきたのです。今回の行動はこれに抗議し、ストライキを実施したもの。西日本各地から組合員と支援の労働者ら五百人がかけつけました。
愛知県美浜町に住む駒井清美さん(53)は、名古屋支店から京都府長岡京市のマーケティング京都センターに移るよう命じられました。以前は通えましたが、今度は単身赴任です。要介護の実母が今年二月に亡くなり、四カ月後の発令でした。
「主婦であり、母親である女性を単身赴任させるとは思いもよりませんでした」。駒井さんへの発令に、職場では「本当にそこまでやるのか」と怒りが広がりました。
これまでも、知多半島の自宅から毎日、七百円の特急料金の自腹を切って、支店へ通勤していました。同居しているパーキンソン病とリューマチを患った義母の介助と、高校三年の長女の養育と病気治療のためでした。
駒井さんは、高校卒業後、電話交換手としてNTTの前身の電電公社に入りました。たび重なる「合理化」で本来の職を奪われ、テレホンカード販売や、各戸を訪問してセールスをする部署に配属されます。
駒井さんの夫(56)も、NTT労働者で通信網のインストラクター(指導員)でした。「五十歳定年・再雇用」に応募したものの、自分の能力がまったく生かせない職種に配属され、職場を去りました。
「夫のように悔しい思いをして辞めていった人がどれだけいたことでしょうか。もうけのためならルールも無視し、法律違反もへっちゃらというNTTの身勝手が許されるわけはありません」
駒井さんは二日夕、当座の着替えや日用品を詰め込んだ十キロ近い大型バッグとカバン二個を手に大阪へ来ました。単身赴任先は、会社借り上げのマンション住まいです。
「ふるえる手の義母が『洗濯は私がやる』といい、夫も慣れない包丁を持って炊事をするといってくれている。家族の支えとたたかう仲間に囲まれて、どんなことがあってもへこたれんぞという心境です」と駒井さん。
世界でも異常
「単身赴任をやれというのは、妻か私かどちらかが辞めろという脅迫です」。同じく長岡京に転勤命令された岡本順一郎さん(55)も三十三年間、電話交換機の保守・点検に従事していました。〇二年に名古屋支店営業職に配転され、十二指腸かいようにかかり、今も体の具合はすぐれません。
静岡県浜松市の自宅には、夜勤もある看護師の妻と専門学校に通う長男と高校三年の二男、中学一年の長女がいます。
「私の場合、不当配転で裁判で争っている最中です。なのに、それを上回る不利益を与えるNTTのやり方は何としても納得できません。世界有数の通信大企業のNTTが世界でも異常な働かせ方をするとは、到底通用するものでありません」
総行動には、全労連の国分武副議長や大阪労連の植田保二議長、日本共産党の宮本たけし前参院議員をはじめ、「官から民」への攻撃をはね返そうと国公労働者や自治体労働者らが続々と支援にかけつけました。
通信労組の岩崎俊委員長は「小泉『構造改革』路線のもとで、『公共の福祉に資する』とNTTの使命を明確にしたNTT法自体も無視するものです。『利用頻度が低い』といって、病院や企業の公衆電話を次々取り上げていますが、もうけ第一を突っ走るNTTを世論で包囲し、国民の情報通信を守っていきたい」と話しています。