2006年7月2日(日)「しんぶん赤旗」
ドイツ発 ゴール
敗戦で試される2つの姿
敗戦は、ときに選手の真の姿を映し出すことがある。
ウクライナ・シェフチェンコは美しかった。
彼は、自国のサポーターにあいさつをすませると、勝利を喜ぶイタリア選手と言葉を交わした。インザーギ、ピルロ、デルピエロ、カンナバーロ…。彼らと握手し、勝利をたたえる。イタリアの選手たちも喜びを抑え、彼を気遣うような表情を見せていた。
それだけではない。その後、シェフチェンコはイタリアサポーターが陣取るスタンドに体を向けて、「おめでとう」と、頭の上で拍手を送った。
スタンドからは「ありがとう」と、長い拍手が返ってきた。
イタリアのセリエAでプレーしてきた彼だからこその交流かもしれない。しかし、落胆する気持ちとたたかいながら、それを胸にしまい、相手をたたえる行動をとった姿は尊い。
対照的に未熟さが見えたのは、もう一つの準々決勝で敗れたアルゼンチンの一部の選手だった。PK戦で屈した後、なんと相手選手に殴りかかるような行動をとった。ドイツ選手の挑発的な態度があったといわれているが、この行動でピッチは騒然となり、ののしり合う姿もみられた。
敗戦は、悔しさを受け止める心の強さ、つねに相手を尊重する謙虚な気持ちが試される。そしてそれは、スポーツするものにとって、なくてはならない。(ハンブルク=和泉民郎)