2006年7月1日(土)「しんぶん赤旗」
軍事法廷設置は違法
グアンタナモ収容者への対応
米最高裁
【ワシントン=山崎伸治】米最高裁は二十九日、キューバの米軍グアンタナモ基地に収容している「敵の戦闘員」(テロ容疑者)を裁くために米政府が特別軍事法廷を設置することは、米国内法と捕虜の待遇に関するジュネーブ条約に反するとの判決を下しました。
ブッシュ政権は、テロ容疑者を本国に送還せず、通常の司法手続きを経ないで、軍事法廷で直接、裁こうとしています。今回の判決は同政権にとって大きな痛手。メディアはこぞって「ブッシュ政権にとって完全で全面的な敗北」(ニューヨーク・タイムズ紙)と報じています。
この裁判は、国際テロ組織アルカイダ関係者としてグアンタナモ収容所に拘束されていたイエメン人のサリム・アフメド・ハムダン被告の軍事法廷での審理が有効か、無効かを問うものでした。八人の判事のうち五人が、議会は政府に軍事法廷を設置する権限を与えていないとの判断を示しました。
グアンタナモ収容所には現在、約四百五十人の「敵の戦闘員」が罪名も明らかにされないまま拘束されています。米軍の非人道的な扱いに対して国際的な批判が高まっていました。
判決は、ホワイトハウスで日米首脳会談が行われているさなかに出されました。会談終了後の記者会見では、米側記者団の質問は判決に集中。ブッシュ大統領は「判決を深刻に受け止めている」と述べたものの、「グアンタナモ収容所を閉鎖するのか」との問いには「判決を十分に見ていない」と語るにとどまり、動揺を隠し切れませんでした。
テロ容疑者の権利擁護を主張している「憲法的権利センター」のマイケル・ラトナー会長は、「最高裁は米国の裁判所を回避しようというブッシュ大統領のたくらみを断固拒絶した」と歓迎を表明。ジュネーブ条約を「対テロ戦争」にも適用したことを評価しました。