2006年6月29日(木)「しんぶん赤旗」
米のイラク撤兵
米紙報道
「9月開始」めぐり論議
中間選にらみ政府と野党
十一月の中間選挙(下院全議席・上院三分の一議席改選)を前に、イラク撤兵問題が米国でも大きな議論になっています。最新の世論調査では、イラク撤退計画を議会が採択すべきだとする国民は57%に達し、野党と政府の間でも撤兵計画をめぐる論争が起こっています。
【ワシントン=山崎伸治】米軍が九月にイラク撤退を開始するとの米紙報道をめぐって、議会の野党・民主党と米政府との議論が展開されています。イラクからの米軍撤退のタイミングが十一月の中間選挙の行方に影響しかねないと、政府も議会も神経をとがらせています。
発端は二十五日付ニューヨーク・タイムズの記事。イラク駐留米軍のケーシー司令官が「二〇〇七年末までに米軍の駐留を大幅に削減し、手始めに今年九月に削減を行う」との計画を秘密裏に策定していると報じました。
「大統領の承認を求める正式な計画は提示していない」としているものの、この報道に民主党議員がすぐさま反応しました。上院は先週末、イラクからの米軍撤退に関して、民主党議員が提案した二つの法案を共和党の反対多数で否決しましたが、同紙の報じた軍の「秘密計画」の撤退日程が法案の一つと似たような内容だったからです。
民主党のバーバラ・ボクサー上院議員は二十五日放映のテレビ討論番組でそのことを指摘。「(撤退)日程に反対し、日程を決めるべきでないと言っているのは、上下両院の共和党だけだ」と批判しました。
法案の一つの提案者でもあるカール・レビン上院議員(民主党)は別のテレビ討論番組で、「(イラク撤退を)政治的に決めるべきではないが、この政権ではそうなりそうだ」と指摘。「十一月の選挙の前に削減し、何か前進や勝利があったかのように主張するつもりだ」と批判しました。
こうした反発に対し、ブッシュ大統領は二十六日の会見で、二十四日に司令官に会ったことは認めましたが、「現地の兵力についての決断は、ケーシー司令官がイラク政府とともに、現地の状況を基に行う」と従来通りの見解を表明しました。
しかしホワイトハウスのスノー報道官は二十六日の定例会見で、「司令官はたくさんのことを提案しており、実際には複数の選択肢を示している」と述べ、報道された計画も「選択肢」の一つであったことをほのめかしています。
57%が撤退決議支持 世論調査
【ワシントン=山崎伸治】先週末にかけて行われた米メディアの世論調査で、イラクからの米軍の撤退に期限を設けることを求める声が強まっていることがわかりました。
米紙USAトゥデーとギャラップ社の世論調査では、議会が米軍のイラク撤退計画を示した決議を採択すべきだと考えている人が、57%にのぼりました。
撤退の時期については41%が「必要な時間をかけて」、33%が「一年以内に」、17%が「速やかに」となっています。
ブッシュ大統領に「イラクの状況に対処する明確な計画がある」と考えている人は31%で、同調査としては最低となりました。
米紙ワシントン・ポストとABCニュースの世論調査では、51%がイラク撤退に期限を設けることに反対したものの、賛成は47%で、昨年十二月から8ポイント上昇しています。共和党支持者の間で賛成は28%にとどまっていますが、これも昨年十二月からは10ポイントも増えており、与党支持者にも撤退時期の明確化を求める声が広がっていることを示しています。
またブッシュ大統領の支持率はそれぞれの調査で37%、38%となっており、いずれも最低となった五月を上回ったものの、依然40%を下回ったままです。