2006年6月28日(水)「しんぶん赤旗」

主張

歳出歳入方針

改革とは無縁の責任転嫁


 小泉内閣と与党の自民・公明両党が、歳出・歳入一体「改革」の方針を決めました。

 それによると、二〇一一年度に国と地方の基礎的財政収支を黒字にするため、歳出削減と歳入増加を合わせて今後五年間に十六・五兆円の収支改善が必要だと想定しています。そのうち、十一・四兆―十四・三兆円を歳出削減でまかない、残りの二兆―五兆円は増税で対応します。

 歳出削減の標的は国民のくらしのための予算であり、増税では低所得層ほど負担が重い消費税の税率引き上げを狙っています。

橋本失政の悪夢再現

 基礎的財政収支とは、借金による収入や借金の元利払いを除いて、その年の税収などの歳入と政策経費である一般歳出の収支のことです。

 机の上で収支の数字を合わせたとしても、景気に大打撃を与えるなら税収が落ち込みます。くらしの悪化は社会保障の予算を増やす原因となってはね返ってきます。

 一九九七年、当時の橋本内閣は消費税増税や特別減税廃止、医療改悪で九兆円の国民負担増を強行しました。その結果、家計を痛めつけて大不況を招き、財政を好転させるどころか大幅に赤字を増やしました。

 小泉内閣と与党は橋本内閣と同じ失敗を繰り返そうとしています。

 今後五年間の歳出削減の中で、政府・与党が最も具体的に方針を立てているのは社会保障です。失業給付、生活保護、介護、医療のあらゆる分野で国と地方の予算を一・六兆円減らすことを明記しています。公費負担が給付費の三分の一程度であることから推測すると、くらしへの影響は五兆円規模に上ります。

 公務員人件費は二・六兆円減らすとしています。公共サービスの切り捨てに直結し、民間給与にも切り下げ圧力となります。

 公共事業は「これまでの改革努力」の継続でごまかす一方、文教予算には「これまで以上の削減努力」を求めています。軍事費は現状維持で、三兆円とされる米軍再編経費が不足すれば「必要な措置を講ずる」と、特別扱いです。

 橋本失政のときと同じように、最後は消費税頼みです。二十七日の自民党税制調査会では、消費税の増税幅は2、3%では済まないという意見が出ています。

 くらしと日本経済をどん底に突き落とし、財政さえ悪化させて元も子もなくす過ちを繰り返させてはなりません。

 九兆円負担増の前年、九六年の国と地方の長期債務の残高は四百四十九兆円でした。これに対して今年度末には、長期債務残高は七百七十五兆円に膨らむ見込みです。1%の金利上昇による利払い増加の影響が、四・五兆円から約八兆円に拡大しています。財政への信頼が破壊されて金利が上昇すれば、その影響は橋本失政の比ではなくなり、数字合わせは根底から覆ります。

くらし支える予算に

 日本を借金まみれにした責任は、大型公共事業と軍事費の無駄遣いを重ね、大企業・大資産家に減税を大盤振る舞いしてきた歴代自民党政府にあります。小泉内閣は「構造改革」不況と大企業減税、マネーゲーム減税で新たな借金を百七十兆円も増やした借金大王です。

 政府・与党の失政のツケを国民に回すやり方には道理も展望もありません。財界・大企業の既得権益に抜本的なメスを入れ、GDP(国内総生産)の六割を占める国民生活を支える方向に、歳出・歳入を切り替えていく以外に道はありません。


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