2006年6月26日(月)「しんぶん赤旗」

首脳会議で浮かびあがった

米・EU間の深い溝

グアンタナモ収容所

CIAの隠密活動


 二十―二十二日に訪欧したブッシュ米大統領に対する欧州の反応は、「熱烈」には程遠い「冷めた」歓迎ぶりでした。現在の欧米間には、イラク戦争をめぐって対立した時ほどの緊張した関係は存在しませんが、国際法や人権の問題で依然として深い溝があることを見せつけました。(パリ=浅田信幸)


 二十一日にウィーンで開かれた米・欧州連合(EU)首脳会議は、イラン核問題やエネルギー安全保障で米欧の結束した対応姿勢を打ち出しました。しかし目新しい内容はなく、キューバにあるグアンタナモ米軍基地収容所問題でブッシュ大統領が釈明に追われたことが注目されました。

 首脳会議は年一度の定例会合ですが、ブッシュ大統領にとって今年はいかにも間が悪い時期の開催となりました。

 昨年末から米中央情報局(CIA)の欧州での隠密活動(テロ容疑者の不法拉致・移送・勾留)が暴露され、EUの欧州議会などが調査追及中です。以前から人道上の問題があるとされたグアンタナモ収容所では訪欧の十日前に三人の被収容者が自殺。EUが公然と閉鎖を求める姿勢を明らかにした直後でした。

 追い討ちをかけるように十九日、独仏英ら欧州五カ国の国民の間で、ブッシュ大統領が「悪の枢軸」と決めつけたイランではなく米国の方が「世界の安全にとって脅威」だとみる人が最も多い(36%)という世論調査結果が、英紙フィナンシャル・タイムズに公表されました。

 ブッシュ氏は首脳会議後の共同記者会見で、「イランよりわれわれの方が危険だと考えるのはばかげている」と憤慨しました。

 米国の対外活動に懸念を感じているのは一般国民だけではありません。大統領の訪欧開始のその日、パリ編集英字紙インターナショナル・ヘラルド・トリビューンは、EUのバローゾ欧州委員長がテロとのたたかいで市民的な自由が狭められる恐れに触れ、「われわれは魂を失う危険を冒している」と述べたと紹介しました。これは、国際法無視の米国を批判した発言だと受けとめられました。

 欧州ではよく知られた親米派であり、二〇〇三年にはポルトガル首相としてイラク戦争を支持したバローゾ氏。その人が現在は欧州委員長として、まさに首脳会議に臨もうとする時点で述べた米国批判は、欧米間の隔たりの深さを印象づけました。

 首脳会議の宣言は、テロとのたたかいを「人権法、難民法、国際人道法を含む国際的義務に則って」遂行する必要性がうたわれ、米国が欧州の主張に歩み寄った形となりました。問われているのは言葉ではなく、実際の行動です。


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