2006年6月25日(日)「しんぶん赤旗」
主張
北朝鮮ミサイル
アジアに不安定もたらす「瀬戸際戦術」
北朝鮮が弾道ミサイル「テポドン2号」の発射準備をしているという動きは、北東アジアの平和と安定を脅かしかねないとして、国際社会は憂慮を深めています。北朝鮮は、世界の平和にとっても、自国の安全にとっても、害を及ぼすだけのミサイル発射準備をやめるべきです。
道理のない「自主権」の主張
ミサイルやロケットの発射は「それぞれの国の自主権に関する問題」(北朝鮮外務省幹部)だと、北朝鮮は主張します。しかし、他国の領海・領空を越えて公海上に達するミサイルやロケットの発射は、一般の航空機や船舶の航行に危険を及ぼすものであり、関係する機関や国々に事前に通告することが国際的なルールとなっています。今回、北朝鮮は、こうした事前通告をおこなっていません。
そもそも北朝鮮は、「米朝共同コミュニケ」(二〇〇〇年)や「日朝平壌宣言」(二〇〇二年)でそれぞれ、みずからアメリカおよび日本との間でミサイルの発射凍結を約束したのです。それを「自主権」の名で覆すことには、なおさら道理がありません。
北朝鮮は、国連代表部の談話や発表文を通じて、米国がミサイルの試験発射を懸念するのならば、交渉を通じて問題を解決しようと、米朝二カ国の対話を求めています。これに対して米国は、ミサイルを突きつけられての対話の要求を拒否しています。
北朝鮮が、どういう理由や背景で米国との直接対話を求めているとしても、ミサイルの発射準備をすすめながらそれをおこなうことは、武力による威嚇というぎりぎりの手段で自国の要求を通そうとする「瀬戸際戦術」そのものです。これは軍事的衝突も招きかねないきわめて危険な行為であり、われわれは、こうした行為を直ちにやめることを厳しく求めるものです。
6カ国協議への北朝鮮の復帰こそ
ミサイルや核、朝鮮半島の安全保障問題などについては、韓国、北朝鮮と日米中ロによる六カ国協議で話し合おうというのが北朝鮮を含めた協議参加国の合意であり、北朝鮮はミサイル発射準備ではなく、六カ国協議に復帰することこそが求められています。
北朝鮮の「瀬戸際戦術」が、この地域の軍事的対抗措置の悪循環をもたらし、北東アジア諸国の安全を脅かすものとなることも、憂慮されることです。
北朝鮮は今後、どちらの方向に進むのか。アジアの平和と安定に敵対する道か、あるいは六カ国協議に復帰して地域の平和と各国との協調・繁栄をめざす道か、どちらが北朝鮮にとって真に有益な道であるかは明らかです。