2006年6月23日(金)「しんぶん赤旗」
主張
福井日銀総裁
金融のかじ取り続けられない
日銀の福井俊彦総裁が、「村上ファンド」への投資で得た利益の概要を公表し、二十二日、衆院の財務金融委員会で質問に答えました。
概要によると、一九九九年に投資した一千万円は、昨年末までに二・五倍化しています。総裁が大企業五社の株式を保有し続けていたことも明らかになりました。規制緩和を推進してきたオリックスの宮内義彦会長の関与疑惑も深まっています。
国民に対する背信行為
福井総裁が村上ファンドで得た利益は二〇〇三年の総裁就任後に急膨張しました。この三年間の投資利回りは年率32・5%に達しています。
〇三年当時、預金金利は大手銀行の三年定期でも0・07%です。福井総裁は、その四百六十倍の高利で、もうけていたことになります。
福井総裁が享受した利率は、元の資産を二倍に増やすのに三年しか要しません。一方、庶民の預金利率では、一千年以上かかります。
日銀総裁は、国民の「虎の子」の預貯金の利息をほとんどゼロに抑え付け、長年にわたって国民に痛みを強いてきた金融政策の最高責任者です。その日銀総裁が、みずからは倫理も法律も踏みにじる「錬金術師」に投資し、総裁就任後も巨利を上げていたことは、国民に対して言い訳のきかない背信行為です。
「勇気ある青年を激励するため」。福井総裁は村上ファンドに投資した理由を、こう説明しています。
しかし、村上前代表がインサイダー取引で逮捕された事件は、村上ファンドが突然変異したから起きたのではなく、法の抜け穴を突く村上流マネーゲームの必然の帰結です。
村上ファンドは当初から、金にあかせて大量の株を買い、その圧力で企業に高額配当を迫る、高値で株を買い取らせるというハゲタカの本性をあらわにしていました。
これが「勇気ある」行為と言うなら、それこそ日銀総裁の資格はありません。見抜けなかったと言うなら、一国の金融政策のトップに立つ資質がないことの証明です。
福井総裁を任命し、擁護し続ける小泉首相の責任は重大です。
小泉内閣と与党は日銀の「内規」見直しで幕を引こうとしています。総裁本人が国民の信頼を裏切ったまま、わずかなペナルティーでごまかして総裁の席に居座り続けることを許すなら、どんな「内規」も空洞化せざるを得ません。
福井総裁は国会答弁で、今回の問題によって「金融政策に影響を受けるようなことがあってはならない」とのべました。こんな当然の姿勢を強調しなければならないことそのものが異常です。
何より、福井総裁は株価が下落する可能性がある「量的緩和政策」解除直前の二月、村上ファンドに投資の解約を申し入れています。究極のインサイダー取引であり、金融政策への信任どころではありません。
辞任するしかない
「量的緩和」の解除に続いて、国民と市場関係者、世界の金融当局と金融市場が注目する「ゼロ金利政策」の解除が日程に上りつつあります。福井総裁に「恩」を着せた小泉内閣と自民党は、日銀にゼロ金利の維持を求めています。
今回のスキャンダルは、日銀の金融政策決定会合が開かれる前日に発覚し、日銀はゼロ金利の解除を見送りました。今後、日銀がどのような決定をしようと、総裁のスキャンダルとの相関が疑われます。
このままでは日銀の公正と中立を取り戻すことはできません。福井総裁の辞任を求めます。