2006年6月23日(金)「しんぶん赤旗」

“住民税8倍 なぜだ”

役所に相談・抗議殺到


 「どうしてこんなに住民税が上がったんだ」「これまでゼロだったのに、なぜ税金がかかってくるのか」―。一日以降、住民税の増税について、各地の市町村民税課に問い合わせが殺到しています。(山田英明)


小泉増税 高齢者を襲う

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(写真)住民税の納税通知書

 千葉県松戸市役所は一日に市県民税納税通知書を各戸に郵送しました。翌日の二日から、市役所に問い合わせの電話が相次ぎ、「受話器を置いたらすぐ(電話のベルが)鳴るような状況だった」と市民税課職員。市民税課の窓口も一時は、問い合わせの市民でいっぱいになりました。

 二日に通知を発送した東京都府中市。翌週五日からの一週間、「窓口や電話による相談件数は、例年の倍以上」(市民税課)という状況でした。

 「ここまで税額が増えるとは予想できない」という切実な相談。同課職員は「私たちが説明をしても、『感情的に納得できない』と話される方もいらっしゃった」と語りました。

 最も相談が多かった日(十四日)には八百件を超える電話相談と三百件の窓口相談が寄せられた千葉県船橋市。いくらか落ち着いたものの、十九日、二十日も一日百五十件を超える電話相談が依然寄せられています。

 「どうして増えたのか」「計算が間違っているのではないのか」という問い合わせのほか、「とんでもない」という怒りの声もありました。同市民税課職員は「これまでの税額の七倍、八倍など極端に増えた税額を見て驚いている方が多い」と語りました。

 なぜ、こんなことになったのでしょうか。

 小泉内閣は増税策として、二〇〇四年度に公的年金等控除の縮小と老年者控除の廃止を決定。〇五年度には高齢者の住民税の非課税限度額を廃止し、定率減税半減を盛り込みました。

 これらによる住民税増税が、今年六月徴収分から一気に高齢者に襲いかかっています。

表


家計簿は告発する

住民税 3年前6400円→81500円

高齢者 その上医療費・介護…まだ搾るのか

 「三年前に比べると住民税額は約十三倍だよ。いいかげんにしてほしい。あまりにもひどいから、どうして上がったんだって役所に聞きにいってきた」。松戸市内に住む高橋伸也さん(68)=仮名=はこう憤りました。

 高橋さんの住民税額は今年度は年八万一千五百円になりました。昨年度の年四万一千二百円に比べると約二倍。公的年金等控除の縮小と老年者控除の廃止、定率減税半減の影響です。

 長女の扶養控除や配偶者特別控除(〇五年六月に廃止)があった〇三年度の住民税六千四百円に比べると、今年度の住民税は約十三倍もの税額になります。

所得税額もはね上がる

 高橋さんを襲う負担増は住民税の増税だけではありません。所得税額は、〇三年はゼロ円でした。それが公的年金等控除の縮小や老年者控除廃止、定率減税半減の影響などで、〇六年は年約十五万二千円にはね上がる見込みです。

 厚生年金や企業年金など、年収四百二十万円が高橋さんの収入のすべてです。「あまりにもひどい。受け取る年金の額は物価スライドで減るのに、取られるものだけ増えるなんて。頭の中が怒りでいっぱいで、これからのことなんてまだ考えられない」

グラフ

支給される年金は減額

 「ただでさえ病院代の負担が重くなっているのに、どうすればいいんだ」。東京都府中市に住む山崎正二郎さん(82)=仮名=は不安を語ります。

 「今年初めて住民税がかかってきた」と語る正二郎さん。昨年度までゼロだった住民税額は今年、年四千四百円に。公的年金等控除の縮小や老年者控除の廃止、定率減税半減に加え、六十五歳以上の高齢者に認められていた非課税限度額が廃止された影響です。

 支給される年金は物価スライドの影響で今年度は0・3%減額されました。手取り月十八万九千三百四十円の年金と、妻トメさん(78)=仮名=の年金月約八万円と合わせた月約二十七万円の生活です。

 三年前には脳こうそくを患い、昨年には精神疾患を患った正二郎さん。足腰の弱ったトメさんとの二人分の医療費は一月「一万円を軽く超える金額です」。

 〇四年までゼロだった所得税は、〇五年には年約二万四千円に。今年一月からは所得税の定率減税の半減で年約二万六千円になりました。その上の住民税増税です。

 「切りつめるところはもう切りつめてきました」とトメさん。住民税が新たに課税されるようになったことで、今後、介護保険の段階が上がり、〇八年度には介護保険料が夫婦あわせて年約五万一千円も増加する見込みです。

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患者負担がさらに増す

 さらに自民、公明両党の強行によって十四日には、医療改悪法が成立しました。これによって小泉内閣は、〇八年四月には、七十から七十四歳の患者負担を現行一割から二割に引き上げるなど、いっそうの負担増を高齢者に押し付けようとしています。

 「小泉さんは、われわれから搾り取るだけ搾り取って、さらに搾り取ろうというのか」。正二郎さんは声を荒らげました。


 老年者控除 税額を算出する際、六十五歳以上で、年間の合計所得金額が一千万円以下の高齢者について、住民税で四十八万円を課税対象となる所得額から差し引くことができました。〇四年度税制「改正」で廃止されました。

 公的年金等控除 税額を算出する際、公的年金等の年間受取額から最低年百四十万円(六十五歳以上の人の場合)を差し引くことができました。〇四年度税制「改正」で、六十五歳以上の高齢者のための上乗せ措置が廃止され、最低保障額も百二十万円に縮小されました。

 高齢者の住民税非課税限度額の廃止 これまで、六十五歳以上の高齢者の場合、前年の所得金額(年金収入から公的年金等控除を引いた額)が、百二十五万円以下であれば非課税でした。〇五年度税制「改正」によって、この非課税限度額を百二十五万円から若年者と同様の九十二万円(夫婦世帯の均等割。単身世帯は均等割、所得割ともに三十五万円、いずれも生活保護一級地の場合)まで引き下げました。この増税で、〇六年度分から三年間にわたり段階的に増税になります。

 定率減税 所得税(国税)と個人住民税(地方税)の税額の一定割合を差し引く減税。〇五年度税制「改正」によって、〇六年度から軽減額が、所得税額の10%(最大十二万五千円)、個人住民税額の7・5%(同二万円)に半減されました。


共産党 負担増路線中止求める

 年金給付減、所得税・住民税増税、介護保険料引き上げ…。日本共産党は、高齢者を次々襲う負担増路線にたいし、一貫してその中止を求めてきました。

 定率減税半減、住民税の非課税限度額廃止などを盛り込んだ二〇〇五年度予算案の国会審議。日本共産党の志位和夫委員長は「家計の所得が減っている時期に、増税路線に踏み出したことが、戦後一度でもあったのか」と小泉首相に迫りました。

 志位氏は、低所得の高齢者にたいする住民税の非課税限度額廃止に伴う国民健康保険料や介護保険料の引き上げにも言及。「負担増が雪だるま式にふくらんでいく」と強調し、「きっぱり見直して、中止すべきだ」と小泉首相に求めました。


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