2006年6月20日(火)「しんぶん赤旗」

主張

公務員宿舎売却

増税と権利ねらいがぎらつく


 財務省の私的研究会「国家公務員宿舎の移転・跡地利用に関する有識者会議」が、東京二十三区内の公務員宿舎を三割減らし、売却処分をすすめるという提言をまとめました。

 「政府資産の圧縮」を合言葉に財界、政府、自民党が一体になってすすめる財政「再建」策の一環です。しかしその実態は、消費税大増税など国民大増税への布石であり、国有財産の切り売りで利益を得る大企業を呼びこむ新たな利権と癒着です。

「借金なくなる」のうそ

 提言は二十三区内の公務員宿舎の売却益を三千七百四十億円と見込みます。今年度末で長期国債残高が五百兆円を超える国の借金からみれば、「焼け石に水とおっしゃられれば確かにそうかもしれません」(谷垣禎一財務相、四月十二日の衆院財金委での答弁)というものです。

 財政「再建」論と結びついて国有財産処分問題が浮上したきっかけは昨年十二月に閣議決定した「行政改革の重要方針」が「国有財産の高度利用・民間活用、売却促進を強力に推進する」とうたったことでした。

 経済同友会は国の資産を百七十五兆円圧縮できるという緊急提言をまとめ、自民党の財政改革研究会(会長・中川秀直政調会長)は百十二兆円の資産圧縮が可能と主張しました。財務省は売却が可能な国有財産は十一・五兆円と試算しています。

 あまりにあやふやな話に自民党内からさえ、「国有財産を売れば借金がなくなるかのような言い方をしているが、われわれはだまされない」(津島雄二・自民党津島派会長)という声があがります。

 国有財産売却が財政「再建」と関係ない話であることは、政府も自民党も百も承知です。谷垣財務相は「財政再建に資するという観点からいえば、必ずしも資するものではない」(三月二十四日の会見)と明言しています。

 それでも自民党は、「国有財産を売りさばき、売却益で財政赤字を減らす。その結果、近い将来予想される消費税税率の引き上げ幅を抑制し、引き上げ時期も先送りできる」(中川氏)と宣伝し続けています。結局、「国はここまで身を切る努力をした」とアピールすることで、消費税大増税を国民にのませようという意図はあけすけです。

 都心の公務員宿舎の家賃をめぐり「特権」批判もさかんに流されました。しかし、それは社会通念にてらして適切に対処すべき問題です。有識者会議も宿舎の必要性は否定できなかったように「なんでも廃止してしまえ」という暴論は通用しません。

癒着の小泉流「緩和」

 しかも、有識者会議のメンバー七人のうち三人が不動産業界関係者。座長は都心に多数のビルをもつ「森ビル」関連の森ビル・アカデミーヒルズ会長で、三井不動産、三菱地所の役員も加わり、民間による跡地の事業化推進へ議論をひっぱりました。国民の財産を切り売りする計画に、最も大きな利益を得る業界関係者が入り込み、その計画を作成し、自分が利用する―こんなやり方が新しい利権と癒着を生みます。

 国有財産はこれまで公用、公共用の用途を優先する原則で管理・処分されてきました。さきの国会では、この原則をくつがえし、国有財産を大企業の食い物にするための国有財産法等の改悪も、日本共産党の反対を押し切り強行されました。

 国有財産は一度手放せばとりかえしがつきません。国民をだまし、大企業に奉仕する小泉流「規制緩和」は、国家百年の計を誤るものです。


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