2006年6月18日(日)「しんぶん赤旗」

06年政治考

民主党「対立軸」どこに?


 「自民党との対立軸」を打ち出した小沢一郎代表が民主党を率いて二カ月半。十六日に事実上閉幕した通常国会では政府・与党が提出した教育基本法改悪法案や改憲手続き法案などに「対案」を次々示してきました。「対立軸」はみえてきたのでしょうか。

教育基本法改悪案

右派「政府案より良い」

 「将来政権を担当しようとする意欲ある野党なら、対決すべき法案ではない」。小泉純一郎首相は十六日の自民党代議士会で、秋の臨時国会へ継続審議にした一連の悪法について、民主党と大差がないことをしきりに強調しました。

 二月の「偽メール問題」で「結党以来の最大の危機」(民主党中堅議員)に直面した民主党。四月の小沢執行部の発足を機に「自民党にはビジョンがない」(小沢氏)といって「対決」姿勢を強調しはじめました。

 ところが、民主党が「対案」として国会に提出した「日本国教育基本法案」は、「愛国心」の強制という点でも、教育への国家的介入を無制限にする点でも、政府案とうり二つです。前文に「日本を愛する心」の言葉を盛り込み、国家権力による教育の不当な支配を禁じた現行基本法一〇条を完全に削除する点では、政府案より“右寄り”との評もあるほどです。右翼改憲団体の日本会議は「民主党案は与党案よりも良いものになっている」と手放しで評価しました。

 国会論戦ではどうか。自民、民主両党とも教育への国家的介入を認める立場から質問。自民党が「教育勅語を参考にして、新しい道徳律を創設していただきたい」(大前繁雄衆院議員、五月二十六日)と主張すれば、民主党も「教育勅語の中身で何が悪かったのか検証されていないところに日本の国の混乱がある」(大畠章宏衆院議員、六月二日)と発言し、教育勅語の「現代語訳」を読み上げました。戦前の教育勅語を礼賛する点でも同一歩調です。

改憲手続き法案

「違いはほとんどない」

 同じく継続審議となった与党と民主党の改憲手続き法案はどうか。

 改憲手続き法案は「もう一つ先のステップに踏み出す大きなエネルギーになる」(自民党の保岡興治・衆院憲法調査特別委筆頭理事)というように、改憲への条件整備をすすめることで、憲法改悪の動きを促進させようとするのが狙いです。

 与党も民主党も「改憲の論議とは別」などといいながら、両案には国会法を改定し、「憲法審査会」を常設し、改憲原案の審議ができる体制を整える条文も盛り込まれています。「与党案と民主党案の違いはほとんど分からない。落ち着き所はみえている」(自民党・甘利明政調会長代理)のです。

 同じ方向になるのは、自公民三党で法文化作業をすすめてきたことに起因します。

 昨年二月、改憲手続き法について民主党の枝野幸男党憲法調査会長は「共通の基盤を持てる政党間で協議、議論の上で早期に制定をすることが望ましい」と発言。これをうけて自民党の中山太郎・現衆院憲法調査特別委員長は「憲政史上に残る歴史的な発言」と賞賛して自公民で共同提案を摸索してきました。

 中山氏は五月二日、国会内で記者会見し「(三党の)共同提案が最も望ましい」と期待していました。しかし、小沢代表が「共同提案にあまり賛成じゃない」(五月九日)とのべたため、一転して別々に提出することになりました。表では「対決」、裏では共同の目標でつながっていることになります。

 民主党の鳩山由紀夫幹事長は、昨年同党がまとめた「憲法提言」を踏まえ、「安保や憲法九条に関して、条文にまとめていく作業を、少なくとも来年には行うことが必要だ」(「東京」四月二十二日付)としています。

日銀総裁の進退

「辞任要求に及び腰」

 インサイダー取引の容疑で逮捕された村上世彰容疑者が代表だった「村上ファンド」に日銀の福井俊彦総裁が一千万円を資金拠出していた問題は、国民の大きな怒りをよんでいます。

 日本共産党、民主党、社民党は十四日の国対委員長会談で、この問題を追及していくことを確認しました。しかし民主党は一時、鳩山幹事長が「どう考えても道義的におかしい」(十四日)といいつつも、辞任要求まで踏み込みませんでした。当初「辞任すべきだ」といっていた渡部恒三国対委員長も「国民の立場で究明すべきだ」(同日)とのべるにとどまり、“及び腰”とみられました。マスメディアが「民主、辞任要求に及び腰 メール問題後遺症?」(「朝日」十五日付)と指摘したほどです。

 民主党には、村上容疑者とつながりの深い議員もいます。同党の小沢鋭仁、笹木竜三両衆院議員は村上容疑者から献金を受け取っています。東大時代の同級生である松井孝治参院議員は村上容疑者に「松井孝治を励ます会」の発起人を務めてもらっていました。

 ある民主党関係者は「民主党には理念がなく、哲学がなく、政権交代だけを唯一の目標としているという本質がある。自民党より一歩前をいく、自民党より早く言う、自民党がいえないことを言うということで、理念というより、自民党を軸に自民に差をつける考えだ」と語ります。


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