2006年6月18日(日)「しんぶん赤旗」
主張
上海協力機構会議
平和なユーラシアへの一歩に
上海協力機構(SCO=中ロと中央アジア四カ国)首脳会議が「五周年宣言」を採択し、新たな地域協力の強化へ一歩を踏み出しました。六カ国が、自主的な協力関係を平和的な枠組みのなかで進めることは、ユーラシア大陸の広い地域だけでなく、世界の平和と安定に資するものです。
協力、共同発展の原則
SCOは結成から五年の、国際的には比較的新しい地域機構です。この間に、中国とロシアは、旧ソ連時代に武力衝突にまで至った国境紛争を話し合いで解決し、国境を画定しました。中央アジアの四カ国(カザフスタン、キルギス、タジキスタン、ウズベキスタン)は旧ソ連の崩壊(一九九一年)にともなう独立時の混乱を経て経済、社会発展をはかる状況にあります。
個々の加盟国が置かれている立場や政策には当然違いもあります。そのことを前提にしたSCOの基本原則は、「相互信頼、互恵、平等、協調、多様な文明の尊重と共同発展の探求」です。これを「上海精神」と名づけ、「もっとも重要な行動規範」としています。
首脳会議が確認した発足以来の優先課題は、「テロ、分離主義、過激主義」をおさえアフガニスタンなどからの麻薬の流入をくいとめることです。比重を高めてきたのは、貿易、投資から、エネルギー、交通、情報・通信、農業などにいたる分野で協力を広げる課題です。
重要なのは、不安定な国際関係のなかで、こうした協力関係を律する基準です。この点で、今回の首脳会議宣言が「政治社会体制などの違いを内政干渉の口実としてはならない」「社会発展のモデルは輸出できない」と主張し、みずから「同盟をむすばず」「国際関係の民主化を体現し」「二重基準をとらない」としていることは、注目に値します。名指しはしなくとも、アメリカが世界各地で軍事干渉し平和の国際秩序を破壊していることへの厳しい批判であり、自分たちはそういう行動を拒絶し平和的な新しい国際関係のために行動するという宣言だからです。
前回首脳会議(昨年七月)は事実上、中央アジア諸国からの米軍撤退を求める宣言を採択しました。これを受けウズベキスタンは昨年秋、駐留米軍を撤退させました。一方、アフガニスタン戦争で米軍が進駐したもうひとつの国、キルギスは対米交渉の末、駐留継続を認めています。タジキスタンでは麻薬流入阻止のため、国境警備兵が米軍の訓練を受けています。
SCO各国がテロ対策でも米軍との関係でもそれぞれの事情を抱えながらも、とりきめた行動準則にもとづいて協力関係を広げるなかで、自国民のみならず世界の平和を願う人々に応えることが、求められています。
アジアから新しい流れ
アジアでは、東南アジア諸国連合(ASEAN)などの地域協力機構が平和の国際秩序をめざし、活動を活発にしています。国連憲章にもとづき、紛争の平和解決、主権平等、互恵の新しい国際秩序をめざすことが共通項です。
SCOは、オブザーバー国をあわせると世界人口の四割以上を擁します。今回、オブザーバーとして参加したイランはエネルギー協力を提起し、中ロ首脳とは自国の核問題も話し合いました。
東アジアの平和の地域協力とつながり、「対決型」でない「新しい国際関係」をめざす動きに、日本外交も真剣な対処を求められています。