2006年6月17日(土)「しんぶん赤旗」
日本共産党国会議員団総会での
志位委員長のあいさつ(大要)
第百六十四国会の事実上の閉幕となった十六日に開かれた日本共産党国会議員団総会での志位和夫委員長のあいさつ(大要)は次のとおりです。
五カ月間の国会でのたたかい、ほんとうにご苦労さまでした。閉会にあたってごあいさつを申し上げます。
この国会を振り返って、私は、二つの点をとくに強調したいと思います。
悪政の根源つき、打開の展望しめした党の論戦
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第一は、この国会で、日本共産党は「たしかな野党」としての役割を存分に発揮してたたかいぬいた。その役割が光った国会となったということです。
この国会では、自民党政治のゆきづまりが、暮らしでも、平和でも、民主主義の問題でも、あらゆる分野で深刻に噴き出しました。そのなかで、わが党は、どの問題でも、悪政の根源、悪政の本質を突く論戦を展開しました。
格差社会の広がりが、一大社会問題になりました。この問題は、わが党の党大会が提起した問題でしたが、この国会ではどの党も問題にせざるをえなくなりました。ただ、この問題の本質を、深く突く論戦をおこなったのは、わが党でありました。この問題の根源が人間らしい労働の破壊にあること、それをつくりだしてきた「新自由主義」の「規制緩和万能論」に格差拡大の原因があることを、正面から突いた論戦をおこなったのは日本共産党でした。
「米軍再編」問題が重大な国政の問題となっています。政府は、これが「負担軽減」につながるかのようなごまかしの議論をおこなっています。しかし、この問題の本質が、「負担軽減」どころか、日米軍事同盟を地球的規模に拡大する、そのために在日米軍基地の殴りこみ機能を飛躍的に強化するとともに、日米の軍事一体化の仕組みをつくることにあることを突く論戦を展開したのも、日本共産党でした。わが党の論戦は、沖縄、岩国、座間など、全国のたたかいの発展に貢献するものとなりました。(拍手)
後半国会では、医療大改悪の問題が大きな争点となりました。わが党はこの改悪法がお年寄りへの無慈悲な負担増と犠牲を強いるとともに、自らの負担の軽減を図ろうとする日本の財界と、日本の医療を新たな食い物にしようと狙っている米国の医療保険会社、医療大企業の野望が、その根源にあることを告発しました。この問題の大本を突いた論戦を展開したのも日本共産党でした。
教育基本法改定の問題が、日本の進路にかかわる国民的大問題として浮上してきました。政府の改定案が、憲法が保障する思想・良心・内心の自由、教育の自由を蹂躙(じゅうりん)するものであるとともに、この動きの狙いが「二つの国策」――「海外で戦争をする国」「弱肉強食の経済社会」づくりに従う人間の育成にあることを、ずばり明らかにしたことも、わが党ならではの論戦でした。
どの問題でも、事柄の現象面のさまざまな問題だけでなく、悪政の根源を突き、本質を突く論戦を展開した。根源を突くということは、同時に、国民が悪政の苦しみから脱出する抜本的打開の展望を示すことにもなりました。日本共産党がこういう論戦を展開できる根本に、新しい綱領の力、大会決定の力があることに、おおいに確信をもって、つぎのたたかいにのぞみたいと思います。(拍手)
悪政競い合い、国民の利益より「政権交代」を上におく
私は、日本共産党のこうした奮闘は、民主党がこの国会で果たした役割と対比すると、その値打ちがいっそうきわだってくると考えます。
民主党は、表面では自民党と「対決」する姿をしめすこともありましたが、実態では対決する政治的足場をもてないでいます。ですから悪政の根源や本質を突く追及ができません。この党のこうした立場が、どのような事態をまねいたか。私は、二つのことが象徴的だったと思います。
一つは、「偽メール問題」です。これは、前執行部の政治的未熟さだけが原因ではありません。この党が自民党と対決する政治的足場を持たない。このことから不確かな情報に飛びつく。これが問題を引きおこした原因となりました。「偽メール」によって国会を混乱させたことが、当時、いわゆる「四点セット」で逆風にさらされていた自民党をどれだけ助けることになったかは、はかりしれないものがあります。
もう一つは、この党がさまざまな問題で、自民党と本質的に違いのない中身の「対案」なるものを提出していることの危険性についてです。とくに、教育基本法改定問題、改憲手続き法の問題で、その有害性は深刻な形で現れています。
教育基本法改定の問題では、民主党の「対案」なるものは、「愛国心」の強制という点でも、教育への国家的介入を無制限にするという点でも、自民党とうりふたつのものであります。特別委員会での議論を聞いていても、自民と民主の双方から、「教育勅語」をほめそやす討論がおこなわれるなど、あたかも戦前の帝国議会にタイムスリップしたかのようなありさまが繰り返されました。
自民党政治と同じ土俵で悪政を競い合う、国民の利益よりも「政権交代」を上におく、国民を犠牲にして「政権交代」なるものをめざす――ここに「二大政党づくり」の動きの本質があることが、この国会を通じても明りょうになりました。
こういう動きとの対比でも、日本共産党が、自民党政治を根本から変える日本改革の羅針盤を持った「たしかな野党」として奮闘していることの意義は、きわめて大きい。この党を大きく伸ばすことが、国民にとっていかに大切かが、この国会を通じても鮮やかに浮き彫りになりました。(拍手)
力強く広がる各分野の国民運動と共同し、支えられた国会闘争
第二は、この国会は、国民のたたかいが、あらゆる分野で、かつてなく広く深くわきおこっているもとでの国会となったと思います。わが党はそのたたかいと共同し、それに支えられての国会闘争を展開しました。
国会にたいする国民的な行動が、どれだけの規模でおこなわれたのかを調べてみました。わが党の議員が参加した集会でのあいさつ、座り込み激励、演説会・シンポジウム参加などで、どれだけわが党国会議員が派遣されたか。その回数を数えてみました。
四年間の比較ですが、二〇〇三年の通常国会は三百八十七回。二〇〇四年の通常国会は三百八十八回。二〇〇五年の通常国会は三百六十回。今年の通常国会は四百六十一回。だいたい三百回台で推移していたのが、一気に三割ぐらい派遣回数が増えました。
今度の国会が、いかに国民的運動が深くわきおこるもとでの国会だったか、それに私たちがしっかり連帯しながらたたかったかということが、この数字にもしっかり示されていると思います。
各分野の国民運動の現状をみると、そこには歴史的といっていいほどの力強い広がりが、どの分野でも見られます。
憲法改悪反対のたたかいでは、「九条の会」の発展が目覚ましい。発足二年で、草の根の組織が五千を超えた。この一年間で三倍になったとのことです。先日の全国交流集会の大成功にしめされているように、この運動が非常に力強い発展をしめしていることは、日本の大きな希望であります。
教育基本法改悪反対の国民的なたたかいが、この間、急速に広がり、労働組合の立場の違いをこえた共同も全国各地で広がっていることは非常に大切であります。さまざまな集会に、全教に加盟する労働組合と、日教組に加盟する労働組合とが、肩を並べて参加する動きが、各地で広がっていることは、注目すべき動きであります。このたたかいを国民的規模で発展させるために、ひきつづき力をつくしたいと思います。
「米軍再編」に反対するたたかいでは、自治体ぐるみのたたかいが、一部に曲折はありますが、全体として力強く前進しているということが、何よりも大事なところであります。岩国での市民投票と市長選の二度にわたる勝利、沖縄市での革新市長の奪還、キャンプ座間強化に反対する地元自治体の不屈のたたかいなど、全国各地で、保守の方々も含めた共同の輪が力強く広がっていることは非常に重要であります。くわえて三兆円の負担問題は、この問題をすべての国民にとって切実な問題にしています。日本列島で、「米軍再編」にたいする怒りと矛盾が噴き出しています。
医療改悪問題では、法案は強行されたわけですが、二千万人もの署名に示された国民の怒りは決して消えるものではありません。むしろ、その具体化の過程で、怒りはいっそう強まらざるをえないでしょう。たたかいはこれからが重要になってきます。わが党は、負担増の撤回とともに、高齢者への差別医療の導入、療養病床の削減、混合診療の本格導入などその具体化を許さないたたかいに、これからが正念場だという構えでおおいにとりくんでいきたいと思います。
国民のたたかいの重要な成果に確信をもって
終盤国会で、われわれは「四大悪法をすべて廃案に」ということを掲げてたたかいました。五月二十七日の国民大集会には、それを掲げて五万人が集いました。そのなかで医療改悪法は強行されたわけですが、教育基本法改悪法案、改憲手続き法案、共謀罪法案、この三つの悪法は、成立を許さず、秋の臨時国会へ持ち越しになりました。
小泉首相が「会期延長をせず」との判断をしたことには、党略的な思惑もあるでしょうけれども、各分野の国民の運動、たたかいの発展のなかで、延長をしても容易にはめどがたたないところまで与党を追いこんだことも、また事実だと思います。
四つの悪法のうち、三つの悪法を今国会で阻止したことは、国民のたたかいの重要な成果といっていいのではないかと思います。(拍手)
国民的運動の前進、党を強く大きくするとりくみの発展を
この国会は閉会となりますが、来年の二つの全国選挙の前進、秋の臨時国会にむけたたたかいが重要になってきます。
秋の臨時国会では三つの悪法に加え、防衛庁を「省」に格上げし、自衛隊の基本任務に海外派兵を盛り込む悪法も、重要な争点になってきます。
「米軍再編」にかかわる立法措置も、これから争点になってくるでしょう。また、いわゆる十七兆円の歳出入のギャップを、社会保障の切り捨てと消費税の値上げで埋めようというくわだてとのたたかいも、重要な局面に入ってくるでしょう。
憲法に深くかかわり、日本の国のあり方に深くかかわるたたかいが、つぎの国会では争われることになります。つぎの臨時国会にむけて、平和をまもり、教育をまもり、暮らしをまもる国民的運動を大きく広げ、国民的世論で悪政を包囲する状況をつくりだすことが、強く求められています。
国会議員団が、国会閉会中に、二つのたたかいをお互いに力をあわせて進めることを、訴えたい。
一つは、あらゆる国民運動を力強く前進させるためにその先頭にたって奮闘をするということであります。
いま一つは、全党がとりくんでいる党を強く大きくするとりくみでも、わが国会議員団が先頭に立とうということであります。
この二つのとりくみをしっかり前進させながら、秋の臨時国会では悪法をそろって廃案に追い込み、そして来年のいっせい地方選、参院選での前進の波をつくりだそうではありませんか。以上をもって、閉会にあたってのあいさつといたします。(拍手)