2006年6月16日(金)「しんぶん赤旗」
夜勤断ると退職強要
日赤の看護師
出産・育児 免除の法律あるのに
泣く泣くパート職員に
日本赤十字社(本社・東京都港区)の病院で、育児などのため夜勤ができない看護師に退職を強要する労働基準法違反の実態があるとして、労働組合や職員が安心して子どもを生み、働き続けられる職場にするよう求めています。(川田博子)
「出産後、育休(育児休暇)を一年とります。復帰後は、実家は遠いし、夫の帰りが遅いので、夜勤ができなくなります。法律(育児・介護休業法)で決められている深夜勤の免除をしてもらえますか」
夫の給料では
病棟で三交代勤務をしていた佐藤智子さん(仮名、三十三歳)は、産前休暇に入る一週間ほど前に看護部長に告げました。
返ってきた答えは、「そんな人は、うちの病院に何十人もいるのよ。配慮なんてできないわ。夜勤ができないなら、退職してもらわなければ。どうしても勤めたいなら、正規職員じゃなくなるけど」というものでした。
「妊娠したら辞めさせられる…非公然と耳にしてはいましたが、事実だったのかと驚きました」と佐藤さん。しかし、夫の給料だけでやっていくには厳しく、他の職場を探すこともままならず、泣く泣く非正規職員になることを承諾しました。
産前休暇に入る前に、佐藤さんは退職し、パート職員として契約(一年ごとに更新)を結びました。
一年間の育休を取って復帰。日勤のみとなったため、二十六万三千八百円だった基本給は、一日・一万二百円に。土日の休診日以外に祝日が多い月だと勤務日数が少なくなり、わずかな手当を加えても手取りが十七万から十九万円にしかなりません。非正規職員にも、健康保険や年金などがあったのは救いでした。
今年五月、佐藤さんは患者からの信頼の高さと看護師としての十三年の経験を買われ、再び、正規職員となりました。しかし、佐藤さんの不安は消えません。
「子どもは大きくなりました。でもまた次の子どもを出産するときには、また退職し、非正規職員となるのでしょうか」
労基法に違反
日本赤十字社は、「社としては、育児・介護休業法に基づく夜勤免除や休暇を認め、取らせなさいと指導している。今回のような例は掌握しておらず、驚いている。施設長などの会議で、再度、丁寧に指導していきたい」といいます。
「希望する勤務ができないことを理由に労働者を解雇することは、労基法にも現行の男女雇用機会均等法にも違反しています」。こう語るのは、全日本赤十字労働組合連合会(全日赤)執行委員長の太田千枝子さん。「本人の希望で、夜勤のない外来に回ってもらったり、病棟勤務で深夜勤を免除している病院はたくさんあります。夜勤ができなければ半人前で即、退職というのは許されません」と強調します。
「五月下旬に開いた女性学習交流集会では、佐藤さんと同様の実態がいくつか語られました。女性も男性も働き続けられる職場づくりへ、さらに活動をすすめていきます」