2006年6月15日(木)「しんぶん赤旗」
厚労省が急ぐ 労働法制改悪
「週40時間」制を骨抜き
「解雇の金銭解決」盛り込む
厚生労働省は労働法制の大改悪案のとりまとめを急ピッチですすめています。雇用のルールを定める労働契約法の制定と労働時間法制見直しの素案を十三日の労働政策審議会分科会に提示。来年度の法案提出に向けて七月中に中間とりまとめをおこなう方向です。
素案は、労働基準法にもとづく週四十時間の規制を外し、無制限に働かせる「自律的労働」制度を打ち出しました。日本経団連が求めているもので「使用者から具体的な労働時間の配分の指示がない」などが条件です。
一方、長時間労働是正を求める世論を反映して、現在最低25%の残業代の割増率を、月三十時間を超える場合は50%にするよう求めています。
不当解雇でも金を払えば職場復帰させなくてもよい「解雇の金銭解決」を盛り込みました。
企業の就業規則で労働条件を切り下げる場合、過半数組合の合意や労使委員会の決議があれば個別労働者も同意したとみなします。個人の権利を侵害し、少数組合の団体交渉権を奪う内容です。
パートなど有期労働者の契約更新を繰り返し、実質無期限に使われている問題も、「三回程度」までは認める方針です。
同日の分科会では、労働者代表が「労使の意見が違うのにまとめるのか」と強く反発。使用者代表は「労使自治で決めるべきだ」といっそうの規制緩和を求めました。
厚労省素案の主なポイント
【労働時間】
・自律的労働時間制度の創設
労働時間や残業代の規定を適用しない
・残業の割増率引き上げ、休日追加
割増率=月30時間を超えると50%
休 日=40時間超で1日、75時間超で2日
【解雇の金銭解決】
不当解雇でも、金銭を払えば職場復帰は不要
【就業規則と労働契約、労働条件の変更】
会社が定める就業規則を労働条件とみなす
過半数組合の合意があれば就業規則で変更できる
労働者が異議を唱えても雇用継続すれば変更可能
同一企業内と同視できる出向は、個別の承諾不要
【パートなど有期契約】
1年か3回超の契約更新で希望すれば正社員に
財界要求で規制外し
素案は労働者の実態に背を向け、労働基準法と労働組合を無力化させかねない危険なものです。
「自律的労働」と称する労働時間規制の適用除外は最たるものです。日本経団連は年収四百万円以上を除外するよう求めており、多くの労働者を際限のない長時間労働とメンタルヘルス、過労死に駆り立てるものです。
企業の就業規則で労働条件を決められることも労働組合を排除し、企業に都合のいい契約が押し付けられかねません。
この背景には「労使自治に委ねて規制を外せ」という財界の要求があります。罰則付き強行法規である労働法の規制を外すことは、労働者の安全・安心を守るべき国の責任を放棄するものです。
小泉「構造改革」路線のもとで、労働条件引き下げや解雇、非正規労働者の増大や長時間労働のまん延が社会問題となっています。今でも不十分な規制を強化することこそ求められています。(深山直人)