2006年6月14日(水)「しんぶん赤旗」
世界の軍事費128兆円
米国が48%と突出
ストックホルム国際平和研発表
【ロンドン=岡崎衆史】スウェーデンのストックホルム国際平和研究所(SIPRI)は十二日、世界の安全保障情勢を分析した二〇〇六年版年鑑を発表し、〇五年の世界の軍事費が一九九六年からの十年間で34%上昇し、一兆一千百八十億ドル(約百二十七兆七千億円)に達したことを明らかにしました。世界中で人口一人当たり二万円を支出していることになります。
軍事費支出の上位五カ国のうち、米国が突出して多く、総軍事費の48%を支出。これに、英国、フランス、日本、中国の順で続き、それぞれ総軍事費の4―5%を占めています。
〇五年の世界の軍事費は〇四年比でも実質3・4%増で、増加分の約八割は米国の軍事費増によるものだといいます。米国の軍事費の急増は多くが、イラクやアフガニスタンでの軍事行動によってもたらされ、ハリケーン「カトリーナ」や「リタ」被害の際の兵士による救援活動がこれに拍車をかけました。
また、世界の武器輸出総額は、明確な額が判明している〇四年で推定四百四十億―五百三十億ドル(約五兆三百億―六兆六百億円)。武器輸出の上位五カ国は、ロシア、米国、フランス、ドイツ、英国。五カ国の総額は〇五年の世界の武器輸出の八割超を占めています。
輸入拡大では中国が、○一―○五年の五年間で通常兵器輸入額の合計が百三十三億四千三百万ドル(約一兆五千二百億円)で、世界最大。次いでインドが同じく九十三億五千五百万ドル(約一兆七百億円)となっています。
武器産業の売り上げ高も一九九〇年代後半以来上昇。上位百社は〇四年を通じて15%売り上げを伸ばし、総売り上げは総額二千六百八十億ドル(約三十兆六千億円)となりました。
年鑑は、ブッシュ米政権の外交戦略の現状について、軍事力を単独で用いる傾向は変わっていないとしながらも、イラクの混乱によって、先制攻撃を時々ほのめかす以上のことはできない状況にあるとして、「自制的な単独行動主義」と特徴付けました。
米国のアジア政策の重点については、インドと日本を強化し、高まる中国の地域的影響力を相殺することだと指摘しました。
年鑑は核兵器について、米国、ロシア、フランス、英国、中国の五カ国が推定で三万二千三百発保有し、英国を除く四カ国は近代化に向けた計画を進めているとしています。また、インド、パキスタン、イスラエルの三カ国についても、核兵器数を増やし、長距離弾道ミサイルなどの運搬手段の開発も進めているとみられるとしています。