2006年6月13日(火)「しんぶん赤旗」

医療保険ない 米国青年急増

民間財団が研究 5年間で250万人も


 日本のような公的国民皆保険制度がなく民間の保険が中心の米国で、十九歳から二十九歳の若年成人層の間に医療保険無保険者が急増しています。米国の健康と社会問題に取り組んでいる民間研究財団「コモンウェルス・ファンド」が五月末に発表した研究「通過儀礼?―若年成人はなぜ無保険に」で明らかになりました。(菅原厚)


 この研究によると、米国の二十代の無保険者は、二〇〇〇年から〇四年までの五年間に二百五十万人増え、千三百七十万人となりました。

 米国では、企業が保険料を援助している会社に就職している人や低所得者、児童以外は、すべて個人が民間の保険会社に加入しなければなりません。

 十九歳になった時か高校卒業時は、米国の若者の健康保険にとって重大な転換点です。

 民間の企業保険に加入している親の扶養家族であっても、十八歳ないし十九歳になって進学していない場合、通常その保険給付対象から外れてしまいます。

 低所得者向け公的医療保険制度の「メディケイド」や、公的な州児童健康保険プログラム(SCHIP)を受けていても、十九歳で保険対象外になってしまいます。

 メディケイドを成人が受けようとしても資格取得条件が厳しく、たとえ十九歳以前にメディケイドの資格を有していたとしても、十九歳の誕生日以前に改めて適性審査を受けなければなりません。

 このような保険制度の仕組みによって、十九歳を境に無保険者率は飛躍的に増えます。十八歳以下の無保険者率が12%であるのに、十九歳から二十九歳の無保険者率は31%にもなります。高校卒業後、進学しないか、医療補助のない会社で仕事に就く低所得の若年成人層にとって、深刻な問題です。

 全日制の学生の無保険者率が20%なのに対し、非正規雇用で学生でない十九歳から二十三歳の40%が無保険者になっています。

 大学教育を受けていない若年労働者は、低賃金で中小企業や非正規雇用か臨時雇いの、企業保険がほとんど望めない仕事が多く、十九歳から二十九歳の時給十ドル未満の全労働者の43%が無保険になっています。

 この研究報告では、こうした若者の無保険者増大に対する対策として▽メディケイドやSCHIPの対象者を十八歳をすぎても拡大する▽民間の企業保険は学生であるか否かを問わず十八歳以上の扶養家族への保険の適用を拡大する―などを提案しています。

グラフ

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