2006年6月13日(火)「しんぶん赤旗」

「君が代」斉唱

ここまでやるか

声の大きさで学校を評価

福岡・久留米 2年前、市教委が調査

教育基本法改悪されたら…


 教育基本法改悪案の国会審議を通じて「内心の自由の侵害」が焦点の一つとなるなか、二年前、福岡県久留米市教育委員会が行った「君が代」声量調査が、改めて問題となっています。抗議をして中止させた市民たちから「教育基本法が改悪されたら、久留米市のように子どもの内心に入り込むような調査や評価が行われるようになるのではないか」との声があがっています。(藤川良太)


 久留米市教育委員会は二〇〇四年春、市内に四十ある小中学校の卒業式と入学式で、「君が代」を歌った子どもたちの声の大きさを「大」「中」「小」の三段階に分けて調べました。式に参加した各学校長らに電話で聞き取りしました。三段階の大きさの基準は示さず「(校長らが)主観」で判断したといいます。

「小」の学校に“口頭で指導”

 同年五月、市議会に報告した市教委の資料によると、調査の結果、卒業式では「大」が十八校、「中」十六校、「小」六校。入学式では「大」が十六校、「中」十九校、「小」五校でした。

 当時、調査を受けた校長らは「大きいわけでも小さいわけでもなかったから『中』とした」「口をあけていたから『中』と答えた」と話します。

 市教委は「小」と答えた学校に「口頭で指導した」といいます。

 ある校長は「ここまでやるのかと思った」と率直な感想をのべました。「小」は好ましくないという市教委の意図が感じられたともいいます。

強制に抗議中止させる

 この調査に、市内の小中学校に子どもが通う親らでつくる「久留米市子どもと教育のために手をつなぐ会」は、市教委に「教育の場である学校で憲法に保障されている『内心の自由』を踏みにじるような調査がなぜ行われたのか」と公開質問状を提出。「どんな実態調査も事実上、『君が代』斉唱を強制させることになる」と抗議しました。

 こうした動きの中で市教委は、声量調査の根拠が不明確であり、調査は子どもたちの内心に無関係ではないとし、「好ましくない」(当時の教育長)との認識を示しました。同年六月、市教委は同調査を中止することを明らかにしました。

 また市教委は、声量調査を行う前の二月、卒業式の「君が代」斉唱指導の計画と実施状況を報告するよう求め、市内の小中学校に通知。「君が代」斉唱指導の日時、学年、場所、指導教諭、指導内容、何時間目かなど細かく報告させていました。報告書には式での「日の丸」の掲揚位置や本数なども書き込むようになっていました。

 卒業式直前の三月三日には、市長や議長の祝辞は式で必ず読むよう求めたり、来賓の席順を指定するなどの事務連絡もしていました。

 市教委はこうした一連の動きのきっかけを「『国旗の掲揚、国歌の斉唱』などを求めた請願が市議会に出されたこと」と説明します。請願書とは、保守系議員が紹介議員として名を連ねて議会に提出された「久留米市の教育正常化を求める請願書」(〇三年十二月)。要望項目の第一に、子どもたちが「国を愛する心」を持てる環境づくりのために「国旗の掲揚、国歌の斉唱」を求めています。

 この請願を受け、市教委は、文科省の学習指導要領にもとづき、実態を把握するために声量調査を行ったといいます。その学習指導要領には、「国を愛する心情を育てるようにする」ことや入学式や卒業式などで国旗掲揚、国歌斉唱を「指導するもの」と明記されています。

 小学五年の息子と中学二年の娘を育てる「手をつなぐ会」の高橋明子会長は「直接は知らない市長の祝辞よりも、一年生のときの担任の先生からの祝辞の方が子どもにとってはうれしいはず。子どもにとって一番良い式にするため先生たちはよく話し合って決めてほしい。それが本当の卒業式や入学式では」と語ります。現在審議中の教育基本法の改悪案について、「法律で書いてあるんだから『君が代』を強制的に歌わせて何が悪いとなりかねない。声量調査も正当化されるかもしれない」と危機感を募らせ、廃案を強く求めています。


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