2006年6月12日(月)「しんぶん赤旗」
主張
ヒルズ資本主義
あまりに粗野なマネーゲーム
「六本木ヒルズ資本主義」。村上ファンドやライブドア、米国系証券会社のリーマンブラザーズやゴールドマン・サックスがオフィスを構える六本木ヒルズ。株式市場で短期的な利益を最大化しようとする企業群の共通項をとらえて、命名されたと言われています。
「金で買えないものはない」と豪語したライブドアの堀江貴文前社長に続き、「会社は株主のもの」と荒稼ぎを正当化した村上ファンドの村上世彰・前代表も逮捕されました。
旧世紀的な弱肉強食
村上容疑者はニッポン放送株のインサイダー取引事件で逮捕される直前の記者会見でのべていました。ライブドア側からニッポン放送の経営権を取りたいという話をたまたま「聞いちゃった」。金もうけは悪いことなのか―。
てんとして恥じない様子です。しだいに明らかになってきた事件の概要によると、経過はまったく違います。村上容疑者はライブドアを動かして大量の株を買い入れさせ、違法な取引と脱法行為を繰り返して高値で売り抜けました。
まっとうに働いて得たお金なら、誰も非難しません。
表では「株主価値、企業価値を高めるため」と言いながら、裏では、内部情報を知らない株主や投資家を手玉に取ってふところを肥やしていた欺まんが問われています。
阪神電鉄株の買収では、株価つり上げのためにはプロ野球球団さえ利用し、会社から金を引き出すためには経営乗っ取りの脅しまで使うあくどさが怒りを買っています。
ヒルズ資本主義の最大の特徴は稼ぐが勝ち、金を持っている者が決定権を持ち、利益を独占するのは当然だというむき出しの弱肉強食です。
ヒルズのIT(情報技術)企業の一般社員は過酷な長時間労働にさらされながら、年収は経営者の百分の一にすぎないと言われています。インターネットやブロードバンドなどITを駆使し、真新しく見えたとしても、やっていることは粗野な旧世紀的マネーゲームと搾取です。
ヒルズ資本主義を育て、選挙で堀江被告を担いだように政治的にも最大限に利用したのは小泉内閣です。
一九九〇年代後半からの金融規制の緩和(金融ビッグバン)に加え、小泉内閣が提唱した「貯蓄から投資へ」の「構造改革」が、株式市場の投機熱を一気に高めました。
株式分割や株式交換の自由化など「錬金術」を可能にする規制緩和とともに、特筆しなければならないのは、株式や投資ファンドにかかわる減税の大盤振る舞いです。
小泉内閣は二〇〇三年度の税制改定で、もともと低い株式売買益・配当にかかる税率20%をわずか10%に引き下げました(〇八年三月まで)。個人にかかる勤労所得税・住民税の最低税率の合計15%よりも低くなっています。
第二、第三の村上代表
村上ファンドが投資家に配分する目のくらむような利益も、個人は税率20%、法人は「益金不算入」で優遇されています。額に汗して働く人をばかにするような税制です。
政府は成立した「金融商品取引法」で規制と罰則が強化されたと言いますが、規制は欧州諸国と比べて格段に弱く、罰則はアメリカに比べて極めて緩い実態は変わりません。
このままでは、第二、第三の堀江社長、村上代表の登場を止めることはできません。「貯蓄から投資へ」と投機をあおる経済政策を根本から転換する必要があります。