2006年6月11日(日)「しんぶん赤旗」
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WORLD CUP 2006「しんぶん赤旗」W杯現地取材チーム(和泉民郎、勝又秀人、中村美弥子)がお伝えします。 |
鼓動 ドイツ発
確かな目 上川主審が大役
二度目のW杯主審に選ばれた日本の上川(かみかわ)徹(とおる)さん(43)が九日の開幕日に登場しました。ポーランド―エクアドル戦のフィールドに立ち、的確で迅速な判定で大役を終えました。
試合は序盤から激しい接触プレーが相次ぎました。それでも荒れた展開にならなかったのは、上川さんの確かな目があったからでしょう。
前半、エクアドルの選手が左腕を使って、競り合う相手を突っぱねました。上川さんの位置からは死角気味の動きでしたが、すぐに笛を吹いて注意。その後も、後ろからの危険なファウルを犯した選手にイエローカードを出すなど、きぜんとした態度を示しました。
後半には、ポーランドのゴール近くで接触プレー。エクアドルの選手が倒れ込み、PKか、という場面がありました。しかし、上川さんは反則ではないと判断。ポーランドの守備の選手が手や腕で相手を妨害せず、巧みな体の寄せで守備をしたと見極めたのでした。
「審判は首相よりも重大な判断を下す」。有能な国際審判を輩出しているオランダに、こんな言葉があります。たった90分の間に、これほど多くの決断を要する職業はないという意味からです。
上川さんは計三枚のイエローカードを出しましたが、興奮する選手たちを笑顔でなだめ、冷静に試合を制御しました。スタンドは八割ほどが隣国ポーランドからのファンで、不利な判定には口笛を鳴らして抗議しましたが、彼の判定がぶれることはありませんでした。
この日のさっそうとした裁きぶりが評価されれば、決勝トーナメントで主審を務めるという目標も果たせるかもしれません。(フランクフルト=勝又秀人)