2006年6月9日(金)「しんぶん赤旗」

主張

NHK「改革」

放送の公共性は守られるのか


 政府の規制改革・民間開放推進会議、竹中平蔵総務相の「通信・放送の在り方に関する懇談会」、自民党の通信・放送産業高度化小委員会がそれぞれすすめてきた、NHK「改革」の議論が大詰めです。意見の開きもあり、政府・与党で調整のうえ、七月に決定される「経済財政運営の基本方針(骨太の方針)」に盛り込まれる予定です。問題は、政府・与党の密室作業でつくられた「改革」案で、放送にとってもっとも大切な公共性が守られるのかです。

密室での作業重ねて

 電波という限られた資源を利用する放送事業は、放送法などで規制され、公共目的に役立つことが求められています。とくにNHKは公共放送として受信料で支えられ、企業の広告費でまかなう商業放送とくらべても、「多様で質のよい番組を供給」することが求められています。

 そのNHKで一昨年来、職員の不正経理問題や番組内容に自民党の政治家が圧力をかけ改ざんしたなどの問題が相次ぎ、受信料の支払いをストップする視聴者が急増しました。NHK改革に求められるのは、何よりこうした国民・視聴者の不信や批判にこたえることです。

 ところが政府や与党がさまざまな場を設けてすすめてきたNHK「改革」の議論は、どれをとっても、国民・視聴者の声に耳を傾け、放送の公共性の問題に正面から向き合うものではありません。議論の経過もマスメディアを通じて断片的に伝えられるだけで、議事録も公表されない、まったく密室の作業です。

 「改革」案の内容も、視聴者の批判にこたえるものではありません。とくにそれぞれが打ち出している受信料制度の見直しは、視聴者の批判を逆手に公共放送としてのNHKのあり方を根本から崩すものです。

 財界代表の宮内義彦オリックス会長が代表をつとめ、小泉内閣の「規制緩和」路線を先導してきた規制改革推進会議がまとめたのは、NHKテレビを報道などの「基幹的サービス」と娯楽番組などの「それ以外のサービス」に再編し、娯楽番組は新たに有料放送にするというものです。民間に新たなもうけ口を提供し、視聴者は受信料以外に料金を負担しなければ、これまでと同じ放送でさえ楽しめないことになります。

 竹中総務相の私的懇談会や自民党の小委員会がまとめた「改革」案は、チャンネル数の削減などとともに、受信料の支払い義務化や不払いへの罰則の導入を盛り込んでいます。まるで「受信税」を新設するような受信料の支払い義務化は、国民の負担にとって大問題であるだけでなく、NHKを政府いいなりの「国営放送」化する危険と背中合わせです。

 政府と与党が財界の意をうけてすすめているNHK「改革」は、結局のところ、公共放送であるNHKを解体・縮小していく狙いを色濃く示すものです。国民の共有財産であるNHKを、国民の声も聞かず解体する―これこそ放送の公共性を踏みにじるものです。

まず視聴者の声を聞け

 放送の公共性とは何よりも、放送が一部の大企業の利益や時の政府・与党のためではなく、国民の利益に役立つことです。改革をいうならまず視聴者の声に耳を傾け、信頼を取り戻し、公共放送としての役割を発展させる道をすすむことです。

 受信料を義務付けるより、視聴者が支払いたくなるように、番組への政治の介入をやめさせ、公正で質の高い放送を実現し、社会に役立たせることこそ、改革になります。


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