2006年6月8日(木)「しんぶん赤旗」
ジャワ島地震
テント生活いつまで
余震の恐怖でイライラ
届かない政府支援物資
ジャワ島地震発生から十日以上たっても、政府による支援物資が被災者にうまく届いていません。六日、被災地バントゥル県ジャプリット村を訪ねると、防水シートを張っただけのテントが道路沿いに多く設営されています。交通事故の危険を承知で、救援車両の目に付きやすい場所を選んでいるのです。(ジョクジャカルタ=豊田栄光 写真も)
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テント近くの木陰で涼んでいたのはジョムリョさん(85)です。地震前は、三人のお年寄り仲間でグループホームをつくり生活していました。地震後は三人でテントで暮らしています。
テントは、屋根に防水シートを使っているだけ。床は段ボールとござです。「昼間は暑い。夜は寒い、毛布一枚では体にこたえる。雨が降れば地面は水びたし。テントには、いられない」とジョムリョさん。
食料は民間ボランティアが配布する弁当でしのいできました。コメと卵と野菜だけです。その弁当も四日でストップ、いまは村の住民がつくってくれた食事を分けてもらっています。
同居人のウジョウィノさん(75)は、かぜをひき、発熱、下痢で苦しんでいます。激しい動悸(どうき)に襲われることもしばしばです。
「お医者さんがこれまで三回来てくれ、薬ももらった。巡回診療がなくなったら、生きていけるだろうか」と不安を募らせています。
夫、子ども二人とテントで暮らすハルティニさん(40)は、下の八歳の息子ジャヌアル君のことが心配でなりません。
「テントは狭いし、余震の恐怖で息子はイライラすることが多くなっています。きのうの夜も大きな揺れがありましたが、すぐ泣き叫び私の腕にしがみついてきました」
夫は建材用の石屋で働いていますが、地震後は仕事はなくなり、現金収入が途絶えています。あと二カ月しないと、自分の田んぼの稲は収穫できません。
「多分、あと半年はテント暮らしが続くと思います。家の再建のめどはたっていません。とにかく現金がないので、今後の生活費が心配です」と言います。
インドネシア社会省は今回の地震で六十万人以上が家を失ったと推定しています。避難所や仮設住宅の設置ではなく、テントの配布を重点的に実施する方針です。また、住宅再建費用として一世帯あたり最高三千万ルピア(約五十万円)の支援を表明しています。
軍・警察の援助に弱点
国立ガジャマダ大学クンチョロ教授(社会福祉・社会心理学)の話
政府による支援物資の配布がうまくいっていないのには、大きく二つの理由があると考えています。第一は防災計画を作成しておらず、支援態勢をすぐに整えることができないのです。
第二は、軍や警察は村役場を使って支援物資を配布する方が、平等に物資が行き渡ると考えていることです。
だから、物資が届かないので直接もらいにきた被災者に、「身分証明書を見せろ」などと愚かなことを言ってしまう。がれきの下から探し出せというのと同じです。
その点、民間ボランティアは効率的な配布にたけています。彼らの協力を得ることを本格的に考えるべきです。